1/1(火)大阪公演開幕!ミュージカル『マリー・アントワネット』ソニン インタビュー

『エリザベート』『モーツァルト!』など数々の傑作ミュージカルを生み出したミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイ最高傑作との呼び声も高い『マリー・アントワネット』。王妃マリー・アントワネットと、庶民の娘マルグリット・アルノー、同じイニシャルをもつ二人の“MA”の運命がフランス革命の嵐の中で交錯する――
マルグリット・アルノーを演じるソニンが、大阪公演を目前に取材会を行った。


――作品の中で唯一架空の人物であるマルグリットをどういう役だと感じていますか?

ソニン「すごく難しい役です。マリー・アントワネットが登場する作品は様々ありますが、本作はその中で1番マリー・アントワネットに感情移入出来ると思っています。マリー・アントワネットは事実無根の噂により地位が危うくなったり、フランス革命に巻き込まれ命を落としてしまうなど、1番の犠牲者だという描き方をされていて、民衆側から見ると、美化されているところもあると思いますが、マリー・アントワネットを人間として、女性として、母親として、今までの作品とは違う色々な面から新鮮に描かれた作品です。また民衆の狂気や恐怖政治など社会の恐ろしさが強く表現されていますが、その中で、マルグリットは民衆の一員として、最後まで物語をお届けする役割も担っており、どちらかというとマリーに同情していかないといけない役だと思っています」――ソニンさんは、マルグリットに共感できますか?

ソニン「共感はないです。福岡・東京の公演では、1幕終了直後は誰にも感情移入出来ないという感想をよく聞きました。マリー・アントワネットはハチャメチャで自由奔放だし、一方、嘘の噂に左右されてマリーを悪人扱いする民衆も民衆だし、一体何なんだといった感想で。お客様は役に感情移入して観る方も多いと思いますが、この作品は感情移入だけでないという点で、チャレンジングな作品だと思います。2幕ではその疑問が全て回収され、納得や共感が生まれてくると思います」

――マルグリットは、どんなメッセージを伝える役だと思いますか。

ソニン「すごく色んなメッセージが潜んでいて、見る人によって響くポイントが異なると思うので、役にも、作品にもハマる隙がたくさんある作品です。絵画を見たときに、色んな想像が出来るような、そういう想像が広がるポイントがこの作品にはあって、メッセージも色々あります。
その中でも、現代にも通じる「自分の、真実の目で見る力」。色んな情報が行きかう世の中で、あなたは何を信じて、どういう物差しで物事を見極めるのかという問いが提示されています。マルグリットは、そのメッセージを伝える役目を担っていると思います」――東京・福岡を経て、お客様の感想はいかがでしょうか

ソニン「見に来て下さったお客様の感想が本当に様々で、色んな見方が出来る作品です。ミュージカルなので、エンターテイメントとして楽しむお客様もいらっしゃいますし、濃厚で強いメッセージを受け取り、沼にはまるように深く入り込んでいくお客様もいらっしゃいます。特に、女性2人の物語なので、女性は感じることが多くあるようで、女性と男性では反応はまるで違います。女性は、パンパンに目をはらせて、「ミュージカルでこんなに泣いたの初めて」、と仰る方もいらっしゃいました。
終演後も、まだ物語の中にいるようで、私の顔を見て再び泣くという(笑)。女性にはより強く響く作品かもしれないですね。マリーとマルグリットが互いに目を背けられない状況にあることが分かるから、すごく揺さぶられるのだと思います」

――マルグリットを演じるために、体力面・精神面で気を付けていたことはありますか。

ソニン「どの作品でも共通しているのですが、公演中は睡眠や栄養だったり、喉のチェックなどに気を付けています。今回のマルグリットは出番が多く、ずっと歌っていてパワフルなので、喉のケアは今まで以上に気を付けています。
でも、今までと違ってメンテナンスしているのは、「こころ」ですね。ロングラン公演なので、後半になってくると、終演後も精神的に復活していないことに気が付いて。自然があるところやパワースポットに行ってチャージしています。太陽光を浴びたり、塩風呂に入ったり、アロマが好きなので、セージを焚いたり色々しています。どこまで効果があったのかは分からないですが。
マリー・アントワネットはフェルセン伯爵や家族の愛に満ち溢れているけれど、マルグリットは孤独で幸せな瞬間が全くない。口角をあげても憎しみの表情で、ハッピーな笑顔はない。役とはいえ、長い間負のエネルギーを抱えていると「病は気から」というように、色んなものが「普段と違う」と感じてくるんですよね。そのためなるべく普段は笑ってリラックスするようにしています」――そういう経験は初めてですか?

ソニン「今まで暗い役も多かったのですが、ここまで幸せな瞬間が1mmもないのは初めて。私自身は常に人を許すということをモットーとしているので、憎む、という普段にないことをするとしんどく感じます。
でも、すごくすごくいい役なので、役者としては充実しています」

取材・文・撮影/ローソンチケット