1/11(金)、東京・新国立劇場 中劇場にて音楽活劇『SHIRANAMI』が開幕。同日、初回公演に先立ちゲネプロと囲み取材が行われた。歌舞伎の名作「青砥稿花紅彩画」(通称:「白浪五人男」)の人物設定をモチーフに、ミュージカルでも音楽劇でも、またストレートプレイでもない新たなエンタテイメント“音楽活劇”として上演される本作。
早乙女太一演じる“弁天小僧菊之助”は、女性にも化ける美男、元宝塚トップの龍真咲は見目麗しい美少年“赤星十三郎”を演じ、これまで女形、男役として活躍してきた二人が共に男女両方を演じる。そして海外作品を多く演じてきた伊礼彼方は“南郷力丸”役を、2.5次元作品以外の舞台は初となるゴールデンボンバーの喜矢武豊は、神出鬼没な盗人“忠信利平”役を演じる。この4人を束ねる“日本駄衛門”役は、G2演出の舞台ではお馴染みの実力派俳優、松尾貴史だ。早乙女はこの布陣について「こんなに個性の違う人たちとやることもないので、楽しいです」とコメント。本作で和モノ作品初出演となる伊礼も「役者陣もいろいろなジャンルのプロが集まっている異種格闘技戦のような現場。この凸凹感を楽しんで頂きたい」と語るように、今回のメインキャストは、大衆演劇・ミュージカル・音楽など、バックヤードの異なるメンバーが集まっている。彼らが一つの物語を紡ぐ様は、それぞれの忠義に従ってきた「白浪五人男」が一つの目的のために力を合わせるという、ストーリー上の関係性にもリンクしてくる。
今までに類を見ない新しいエンタテイメント“音楽活劇”として誕生した本作では、G2のこだわりが詰まった斬新な演出も見どころだ。
大きなパネルが舞台上を縦横無尽に動き、一つ一つの場面を形成。パネルに映される映像と役者の演技の融合によって、舞台でしか成し得ない臨場感あるシーンを実現させた。劇中の音楽は、ジャズ調で統一されている。時代劇でありながら、「ラテンに影響されているジャズを取り入れることで、5人の盗賊たちがエネルギッシュに活躍する姿を表現したかった」と語るG2。本作の要ともなる音楽に、演出家本人も自信をのぞかせる。さらに“活劇”と題されるだけあり、大人数で展開される殺陣のシーンはかなりの迫力。幼いころから大衆演劇の世界で活躍してきた早乙女の細かい所作・華麗な立ち回りに喜矢武は「一つ一つの動作が全部勉強になります。服すら体の一部みたいに扱っていて、動きをより派手に見せる演出の技が彼にはある」と絶賛した。また劇中に妖艶な花魁姿を披露する早乙女について「吸い込まれそう。女性から見ても美しい!」と語ったのは、今回のメインキャストでは紅一点である龍だ。
そんな龍は、本物の男性に交じって男役を演じることに対しても「あまり性別は気にならない。今一瞬、毎日毎回を楽しんでやりたいなって、ただそれだけです」と力強くコメント。また「物語の裏側にある人情味や時代背景を大切に演じられたら」と、本作への意気込みも語った。このエンタテイメント大作に厚みをもたらすのは、ベテラン俳優の松尾。「これだけ真面目に取り組んだ舞台はないです。音楽活劇『SHIRANAMI』に出ることが子供の頃からの夢だったので…」と松尾がボケると、「いやいや、嘘にまみれてる(笑)」と共演者は総ツッコミを入れ、会場を笑いで包んだ。さぞチームワークはばっちりと思いきや、舞台裏では「基本的にはしゃべってない」と明かす伊礼に、「今は一応カメラが回ってるんで」と冗談を交えてコメントする喜矢武。G2は「猛獣を檻に5匹飼っているみたいな感覚。お互いに戦わせながら、そのうち仲良くなっていく様を皆様に何度も見て頂くのもいいんじゃないか」とうまくまとめた。最後に早乙女が「新年にふさわしく、賑やかに・エネルギッシュに、皆様に元気を持って帰ってもらえるように頑張っていますので、ぜひ観に来てください!」と締めくり、囲み取材は終了。サービス精神旺盛な登壇者の軽快なトークにより、終始笑いの絶えない取材となった。公演は東京・新国立劇場 中劇場にて、1/29(火)まで。
既存の言葉では形容しきれない全く新しいエンタテイメント“音楽活劇『SHIRANAMI』”を、ぜひ劇場で体感して頂きたい。
取材・文・撮影/ローソンチケット