
新演出によって新鮮なエネルギーを持った作品になった
1975年にオフ・ブロードウェイでの上演を皮切りに、何度も人々を魅了し続けてきた傑作ミュージカル「コーラスライン」。2021年より新演出と振付で上演されてきた“最強版”が2025年9月より日本特別公演をおこなうことになった。スターを夢見る若者たちのオーディションを描いた本作だが、新演出では、声だけで姿を現さなかった演出家のザックが、舞台上に登場。ダンサー達と関わっていくことが大きな特徴となる。ザックを演じるのは、世界的に活躍するダンサーのアダム・クーパーだ。
「オファーを貰った時は、とてもワクワクしました。映画も小さい頃に観ていましたし、12年前にロンドンでリバイバル上演された時にも観ています。とてもアイコニックな作品で、そこに新たなアプローチをするということで、どんな作品になるのか本当に楽しみでした。演出家のザックが舞台上に上がってくるのはとてもいいなと思いますし、それぞれのダンサーのキャラクターにザックがグッと入り込んでいて、すごくエキサイティング。新演出によって新鮮なエネルギーを持った作品になりました。振付もとても胸が躍るような作品になっています。きっとオリジナルをご覧になっていた方はとても驚かれるでしょうね」
ザックは自身のキャリアとも重なり、経験を活かすことができると語っていたアダム。新演出だからこそできる人物像を組み上げていく。
「オリジナルでのザックはとても厳しい人物として描かれています。それは、描かれた70年代において演出家とはそういう存在でしたし、オーディションもそういう場であったということなんですね。もちろん、新演出でも70年代がベースとなっているので、そういう厳しさは描かれなければなりません。自分自身の経験として、かつて自分も演出家に言われたことや、厳しくされたことを思い起こして演じているところもあります。そこから、新たな挑戦としてもう少し温かみのある描き方もしています。ザック自身も、物語の中の楽曲や役者たちから影響を受けているんです。そこは、新演出として違っているところではないかと感じています」
コーラスラインの物語のように、実際に審査する立場としてオーディションをすることもあるアダム。彼が人を選ぶ際の視点を、こう語る。
「素晴らしいダンサーはたくさんいますが、私が見る時は、その人自身が面白く、興味を惹かれるかどうか。私がよく伝えているのは、オーディションをする側の人に質問すること。良識のある質問は、自分を伝える手段にもなるし、言われるまま動くだけでなく、考えているんだということも伝えられますから」
今回の来日公演では、東京のほか大阪や仙台といった地方公演も予定されている。
「私は日本が大好きなので、みなさんにお会いできることも、行ったことのない場所での公演も、本当に楽しみ。初めて日本に来たのは30年以上前で、これまでにたくさんの機会で日本公演を経験してきましたが、どの作品でもたくさん愛されていると感じられました。今回の作品は、すごくエネルギーに溢れていて、感情的にも非常に揺さぶられると思います。素晴らしいダンスと音楽があって、とても素敵な作品になっていますので、たくさんの皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!」
インタビュー&文/宮崎新之
Photo/平岩享
※構成/月刊ローチケ編集部 6月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】
アダム・クーパー
■アダム・クーパー
イギリス出身のバレエダンサー。ダンサーとしてはもちろん、演出、振付、俳優としても活躍する。