ミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』製作発表レポート

『レ・ミゼラブル』の著者、ヴィクトル・ユゴーが手掛けた原作の元、2018年に世界初演の幕を開けた大作ミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』が、2019年早くも日本初演を迎える。1月都内にて、本作の製作発表記者会見が実施された。この日登壇したのは、幼少時代に見世物として口を裂かれ、醜悪な笑みを張り付けられた主人公・グウィンプレンを演じる浦井健治、グウィンプレンと信頼し合い、愛し合う関係となる盲目の少女・デアをWキャストで演じる夢咲ねね・衛藤美彩(乃木坂46)、醜くも魅力的なグウィンプレンの姿に心惹かれ、彼を手に入れようと誘惑する貴族・ジョシアナ公爵を演じる朝夏まなと、そして『キューティ・ブロンド』、『オン・ユア・フィート!』など数々のミュージカルを手掛け、本作では翻訳・訳詞・演出を担当する上田一豪の5名。

キャスト4名はキャラクターの姿に扮し、報道陣・そして抽選で選ばれたオーディエンス約200名の前に登場した。口元の特殊メイクを施した浦井が「特別感があり、テンションが上がる“テンアゲ”の感じでございます」とご満悦の様子の中、会見はスタート。

 

会見冒頭、登壇者5名それぞれからの挨拶が行われた。以下、挨拶順に紹介する。

【翻訳・訳詞・演出:上田一豪】
素晴らしいキャストの皆さんと一緒に、日本初演となる『笑う男』という作品を素敵な状態でお客様に届けらたらと思っております。【グウィンプレン役:浦井健治】
「(原作小説:「The Man Who Laughs」にある)金持ちの楽園は貧乏人の地獄によって造られる」という言葉の通り、(貧乏な役の)僕は裸足でございます(笑)。偽物の中から、真実の愛や人生の温かさ、大切なものを皆様にお届けできたらと思います。【デア役:夢咲ねね】
タイトルが『笑う男』ということで、最初は「コメディなのかな?ホラーなのかな?」と全く想像がつきませんでした(笑)。でも色々調べていくと、悲しく切ない中にも壮大さを感じるワイルドホーンの音楽にすごく引き込まれましたし、ストーリーも素敵だなと思いました。作品の中でデアとして一筋の光になれるように、(上田)一豪さんに導かれながら、キャストの皆さんと一緒に頑張っていきたいと思います。【デア役:衛藤美彩】
グループ(乃木坂46)を飛び出し、今回グランドミュージカルに初めて挑戦させて頂きます。本日のような製作発表も初めてなのでとても緊張していますが、“初めてだらけ”というこの環境もとても嬉しく思います。素晴らしい大先輩の皆様方と一緒に本番まで稽古して、私なりのデアを演じられるよう、そして本作の世界観を届けられるよう頑張ります。【ジョシアナ公爵役:朝夏まなと】
本日素晴らしいお衣装を着させて頂いき、ジョシアナ公爵のイメージが少しずつ湧いてきました。この作品は(貧富の)対比が明確に描かれているので、貴族側の象徴として、物語の中で色っぽく存在できるように務めてまいります。私にとっても挑戦の役ですが、一豪さんに導かれつつ、初めましての浦井さんはじめ素晴らしいキャストの皆さんと一緒に、本作の音楽と世界観を届けられるように頑張ります。

質疑応答では、現在の心境や共演者の印象など、5名がそれぞれの想いを語った。以下、コメントを抜粋して紹介する。


――扮装姿の女性陣3名をご覧になった現在の心境はいかがですか?

浦井「衣装やウィッグからも、キャラクターの対比が明確に表現されていますよね。お三方とも本当に個性が豊かで、歌声も素敵な方々なので、本作で共演できるのが楽しみです。Wキャストの夢咲さん・衛藤さんの個性も全く違うので、自分もその違いにしっかり合わせて演じたいと思います。

また僕の子供時代を演じてくれる子役がトリプルキャストなので、3人をよく観察し、三様のグウィンプレンを創っていけたらと思っております」

一同「おお~!さすが!」――演出家から見た、キャストの皆さんそれぞれの印象はいかがですか?

上田「朝夏さんは生まれ持ったオーラがある方なので、“全てを手に入れた女”という役どころのジョシアナ公爵にはぴったりかなと。きっと魅力的に演じて下さると期待しております。夢咲さん・衛藤さんはそれぞれ個性が違いますが、“目が見えないが故に純粋に世界を見つめることができる”というデアのピュアな部分はお二人とも共通して持っていると思います。そこがキャラクターとマッチしていくのが楽しみですね。浦井さんは、私が演出助手として駆け出しの頃から同じ現場でお仕事させて頂くことが多かったんです。だからこうした(演出家とキャストという)形でご一緒できるのは本当に感慨深いというか。自分が十数年とやってきたことがようやく実ってきて、浦井さんはじめとする素晴らしい方々とご一緒できるということが嬉しいですね」


――盲目の16歳の少女・デアを演じることに対しての想い、Wキャストでお互いに「こんなところを頼りにしたい」という部分はありますか?

夢咲「デアは盲目の少女ですが、きっと自分だけに見える世界を持っていて、そこにグウィンプレンがたくさんの色を加えてくれるのだと思います。目が見えない彼女が見ている素晴らしい世界、逆に言うと、目が見える方には見えない世界。そういった部分をお客様にも共感して頂けるように演じていきたいと思います。
衛藤ちゃんは、かわいいが詰まっているんです!行動一つ一つが本当にかわいいので、それを稽古場でみっちりとノーツ(メモ)したいと思います(笑)」衛藤「グループ内では年齢的にも上から二番目なのですが、今回はカンパニー内で一番年下ということで、ちょっと年下感を味わえたらなと思います(笑)。ねねさんとはポスターのビジュアル撮影で初めてお会いしたのですが、その時被っていた私服の帽子が全くのお揃いだったんです!思わず運命を感じました(笑)。
デアを演じることになり、彼女が匂いや空気感などをどのように感じるのかを想像してみました。まだ捉えるのが難しい部分もありますが、彼女が感じている世界が伝えられるよう、稽古場で表現を磨いていけたらと思います」――フランク・ワイルドホーンの音楽の印象は?

上田「フランクさんの音楽は、キャラクターの内面がすごくエネルギッシュにのっかる作品が多いと思います。そのエネルギッシュな部分が作品の温度をある意味熱くするのですが、それとは反対に、本作ではアイロニックに世界を眺めるような冷たさを表現する楽曲もあります。音楽のジャンルも様々で、振れ幅が大きい。『笑う男』は“葛藤”が多い内容でもあるので、それを象徴するような音楽の振れ幅も本作の魅力だと思います」

浦井「実は本作への出演が決まる前、フランクさんの弾くピアノの前に座って“これをやってみないか”と、『笑う男』の楽曲を聴かせて頂いたんです。その時、“こんな素敵な楽曲があるんだな”と僕大感動して。そして今歌ってみると、“こんなに体力使う楽曲があるんだな”と(笑)。歌うのに体力は使いますが、どれも役作りのパワーになってくれるような名曲だと思います」


――元宝塚トップスターの朝夏さんですが、今回は真逆の、グウィンプレンを誘惑する女性です。

朝夏「ジョシアナ公爵は、何でも持っているのにどこか幸福感を得られず、グウィンプレンを手に入れた先に本当の幸せがあるんじゃないかと考えるのだと思います。少し複雑な心理の女性ですよね。物語では彼女がグウィンプレンを誘惑するところがメインに描かれますが、そこに至るまでの彼女のことは私が一番理解して、役を創っていきたいと思います」会見では、劇中楽曲の歌唱披露も行われた。この日披露されたのは、「木に宿る天使」(歌:浦井健治・夢咲ねね・衛藤美彩)、「この気持ちは何?」(歌:朝夏まなと)、そして「笑う男」(歌:浦井健治)の3曲。本公演の音楽監督・小澤時史によるピアノ伴奏と共に、キャストの伸びやかな歌声が会場に響き渡った。ミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』は、4/9(火)より東京・日生劇場にて上演された後、5月には愛知・富山・大阪・福岡にて巡演される。取材・文・撮影/ローソンチケット