『デスノート THE MUSICAL』製作発表レポート

「週刊少年ジャンプ」に連載され、映画やドラマ、アニメなど幅広いメディア展開を遂げてきた人気漫画「DEATH NOTE」。2015年に日本で初めてミュージカル化されると瞬く間に観客を魅了し、2017年、2020年に再演。韓国では韓国キャストによる上演、ロンドンでもコンサートバージョンが上演され、大ヒットを記録した。そして2025年10月に待望の10周年記念公演が幕をあける。公演に先立ち10月9日(水)には『デスノート THE MUSICAL』製作発表が行われ、加藤清史郎、渡邉蒼、三浦宏規、鞘師里保、リコ(HUNNY BEE)、濱田めぐみ、浦井健治、今井清隆が登壇した。

10年の集大成となるとなる本作。夜神月役は加藤と渡邉のダブルキャストで演じられる。加藤は「加藤清史郎の夜神月をこれから世界に発信させていただけることをとても嬉しく、光栄に思っております」と挨拶。そして、「出演が決まったときは、嬉しいよりも先に驚きや実感の湧かなさがありました。『デスノート』という作品は僕が小学校の頃から映画化されていて、作品の話をしていなくても日常会話で“デスノート”のジョークが飛び交うよう中で育ってきましたし、2015年の初演も一観客として観ていた物ですから、自分の気持ちを整理するのに時間がかかりました。ですが、その後にそうした作品に携われることを嬉しく思いましたし、栗山さん、そしてフランク・ワイルドホーンさんが携わっている作品に参加させていただけることに喜びを感じ始め、今、稽古をしながらそれをヒシヒシと感じています」と出演が決まった時を振り返った。

一方、渡邉は「この作品はたくさんの魅力があります。頭脳戦が繰り広げられていくストーリーも、栗山さんの演出も、ミュージカルの枠を超えるような楽曲も、一度でも触れたら、必ず心を鷲掴みにできる作品だと思っています。そこに参加させていただけることを本当に嬉しく思います」と思いを語った。

実は、数年前から実の父親から「お前はライトをやるべきだと思う」と言われていたという渡邉。「その時は、さすがに作品が大き過ぎるので『地道に頑張るね』とだけ伝えていたのですが、今回、お話をいただいて本当にびっくりしましたし、(出演することが)怖かったです。ですが、父は本当に喜んでくれましたし、『絶対に大丈夫だ』といってくれたので、僕のライトを待ってくれている人のために全力を尽くそうと思います」と意気込んだ。

また、L役の三浦は「初演のときから大好きな作品でLという役をいつかやりたいと思っていました。こうして10周年という記念すべき公演に出演できることを本当に嬉しく思いますし、夢が叶ったなと思います」とコメント。L役を演じるにあたって「いかに猫背にできるか」が課題だといい、「(初演でLを演じた小池)徹平さんの映像を観て、すごいなと思いながら真似をしていましたが、いざ、実際に自分が演じるとなると本当に大変で。僕ももっと鍛えてしっかりと声を出せるようにしていきたいと思います」と話す。歌稽古はしゃがんだ格好で行っているそうで、「失礼なやつだと思われないか不安でしたが、練習中、ずっとこの姿勢で歌っていました」と実際にその姿をしてみせ、会場を沸かせた。

弥 海砂役の鞘師は「私自身も10年前までアイドルをやっていましたが、ツインテールでステージに立ったことがないタイプのアイドルだったので、私に務めるのだろうかというドキドキがあります。ただ、大好きな作品だったので、お話をいただいたからには頑張って挑戦しようという気持ちになりました。自分のSNSで出演を発表したとき、外国人のお友達からもたくさんメッセージが来ました。『頑張ってね』という応援をたくさんいただき、より作品の大きさ、偉大さを感じています」と思いを話した。

夜神粧裕役のリコは、「粧裕ちゃんは微笑みを与えてくれるような存在だと思うので、そうした人物を私が演じるという緊張と責任をすごく感じていますが、先輩方とご一緒して稽古をしていくと、ものすごい世界に飛び込んだのだという実感がどんどん湧いてきて、さらに楽しみな気持ちも出てきています」と笑顔を見せた。

死神レムを演じる濱田は、2015年の初演、2017年の再演に同役で出演して以来、8年ぶりに“復活”する。濱田は「この『デスノート』に関わっていない期間はいろいろなことがあって、お客さまにとっても私にとっても8年間はすごく長い時間でした。ですが、いざこうして関わってみるとあっという間の時間でもありました。この若くて才能あふれるフレッシュな方々と素晴らしい『デスノート』を作り上げていきたいと思いますので、どうぞ皆さま楽しみに待っていてください」と呼びかける。

この作品の魅力を聞かれると、濱田は「これまで私が出演してきた作品と違う感覚があります。グランドミュージカルや大きなミュージカルには、例えば、愛や母性といった普遍的なテーマがあるじゃないですか。でも、この作品はそうしたものよりも、今の時代に突きつけられる何かをある意味赤裸々に、鋭角的に尖ったままメッセージを届ける舞台。テーマがすごく難しくて、それは観てくださる方それぞれに受け取るものが違う。不思議な吸い込まれるような感覚があって、目が離せないというのはこういうことなのかなと思います」と分析した。

初演で夜神月を演じた浦井は今回はリューク役での出演。「初演で(リュークを演じていた吉田)鋼太郎さんから『いつかお前、リュークやれよ』と言っていただいたので、夢が叶いました。しっかりと自分なりのリュークを栗山さんと作れたらと思います」と思いを寄せた。そして、本作の魅力について「夜神月とLの心理戦、頭脳戦は間違いなくありますが、心理描写もきちんと描かれていて、内面をえぐるような物語というのが魅力的だと思います。群像劇として栗山さんは捉えていると思うので、それぞれの正義を掲げていることがこの時代にはいかに大切なのかが如実に伝わってきます。個人的には家族愛を原作も含めて描いていると思うので、家族愛も素敵だなと思います」と言及した。

2020年公演に続き、夜神総一郎を演じる今井は「ライトのイメージが強い浦井くんがリュークをやる時代になったんだなと思うと、自分が総一郎をまだ演じていていいのかなという葛藤はありましたが、前回、コロナ禍で公演が途中で中止になってしまい、やり残した感が非常にたくさんあり、新たに挑戦できることはありがたく思います。より夜神総一郎らしくなったなと言っていただけるように、役作りを一生懸命していきたいと思っております」と意気込んだ。

なお、この日の会見では、2025年版のキャストによる歌唱披露も行われた。まずは、八神月役をダブルキャストで演じる加藤と渡邉による『デスノート』。夜神月(ライト)がデスノートの力を使って新世界の神になることを誓う楽曲だ。この日は、加藤と渡邉によるスペシャルバージョンで披露された。

続いて、L役の三浦によって『ゲームの始まり』が歌い上げられた。ライトとLの“心理戦”の幕開けに歌われる楽曲で、三浦は厳しい表情のままライトを探るように目を細めて楽曲の世界を作り上げる。

最後に死神レム役の濱田と死神リューク役の浦井による『愚かな人間』が披露され、会場を大いに盛り上げた。この楽曲は、リュークとレムが「人間という存在」について語り合う、哲学的なナンバーだ。浦井と濱田は美しい歌声で見事なハーモニーを奏でた。

取材・文・撮影/嶋田真己