2025年11月16日(日)より全国各地で上演を予定しているミュージカル『クリスマス・キャロル』~Nation Tour 2025~の稽古の様子がメディア向けに公開された。
本作は、チャールズ・ディケンズによる小説を基に西田直木が演出、脚本、音楽を手がけてミュージカル化。金にがめつい嫌われ者の主人公・スクルージがクリスマスイブの夜に現れた亡き共同経営者マーレイから「欲が深い人間は死後の世界で悲惨な運命をたどる」と聞かされ、改心のために時間旅行へと向かう物語。公開稽古では3つの場面が公開された。
過去のクリスマスの精霊に誘われて、スクルージ(吉田栄作)は自らの青年時代へとやってくる。それは若きスクルージ(柿内アリマ)が愛した女性・イザベラ(土屋アンナ)に、まさにプロポーズする瞬間。若い2人の情熱的な愛情を目の当たりにし、かつての自分も愛に満ちた時間を持っていたと、スクルージは噛みしめるようにたたずんでいた。土屋アンナは、このシーンで温かくやわらかな歌声を響かせ、自身の音楽活動で見せてきた歌唱とはまた違う新たな一面を披露した。

続いての場面は、時間旅行を終えたスクルージとマーレイ(吉田要士)が、互いの友情を確かめ合うように歌唱する場面。2人の力強い歌声が重なり、厚みのあるハーモニーを響かせた。吉田栄作は、忘れていた愛や友情を思い出し、心が洗われていくさまをイキイキとした表情と歌声で見せ、吉田要士は確かな歌唱力と誘うような声色でシーンを牽引していた。


そして最後は、全キャストが登場するカーテンコール。心がウキウキするようなクリスマスナンバーに合わせて、キャストが華やかなダンスを繰り広げ、目くるめく展開していくクリスマスの賑やかさを存分に体現していた。たくさんのキャストがズラリと並び、華麗に歌い踊るさまは圧巻だ。





公開稽古の後には、吉田栄作、土屋アンナ、吉田要士の3名が取材会に登壇。意気込みや手応えなどを語った。
今回、スクルージ役は2度目となる吉田栄作は「前回は2022年で、コロナ禍での全国ツアー。近い将来、もう一度この作品をやらせていただけたら、と思っていたので実現できて嬉しい」と喜びを見せる。3人の女性を演じ分けることになった土屋アンナは「すごく難しいです。特に、おっとりした品のある役はどう演じたらいいのか…。でもすべてを捨てて、頑張ります」と意欲をみせた。吉田要士は「毎日、幸せな気持ちで稽古場に通っています。最高に幸せな気持ちになれる作品なので、ぜひ劇場にお越しください」とアピールした。
また、それぞれのクリスマスの思い出に話がおよぶと、吉田栄作は「3~4歳くらいかな、家族でささやかなクリスマスを過ごしていたら、サンタクロースが来たんです。プレゼントをたくさん出してくれて、そこからひとつ選んで…それは忘れられないですね」と、子どもの頃の思い出を披露。
土屋アンナは「クリスマスは人もたくさん呼んで家族で過ごすので、母親がターキーを焼いて、料理をたくさん作ってくれました。今は、私が料理を作ってます」と、いつも賑やかに過ごしていると明かした。また「小さい頃、サンタさん用に牛乳とクッキーを置いておくんです。すると、朝にはクッキーが食べられていて、牛乳は半分に。”全部飲んでよ~!”って思ってました」と、懐かしそうに話していた。
そして、吉田要士が「3歳の頃の12月に引っ越しをしたんですが、ドアを開けたらお菓子の詰まったサンタの靴が置いてあって、ものすごく嬉しかった! よくありますよね、大きいのとか、小さいのとか…」と興奮気味に思い出を話すと「めちゃくちゃテンション上がってる(笑)」と土屋アンナがツッコみ、笑いを誘っていた。
今年のクリスマスの過ごし方について聞かれると、土屋アンナが「クリスマスの精霊役の真樹めぐみさんの誕生日が12月24日なので、みんなでご飯に行けると良いな」と話すと、「いいね!…じゃあ25日は二日酔いだ(笑)」と吉田栄作が答え、後方にいた他のキャスト陣も同意の声を挙げた。そして吉田要士が「25日は、二日酔いで一人さみしく過ごそうかな…」と話すと、吉田栄作は「土屋家に行ったら?」と提案。土屋アンナは「私も25日は(パーティー用の)ご飯を作りますよ! いいよ、おいでよ!」と気前よく答えており、その軽快なやりとりからもカンパニーの温かな雰囲気が伝わってくるようだった。
各人のコメントは以下の通り。
コメント
吉田栄作
前回は2022年でコロナ禍。近い将来、もう一度この作品をやらせていただけたら、と思っていたので本当に嬉しく思っています。再演の難しさは、新鮮さを保つことだと思いますが、稽古場でどんどん進化していると思っています。この作品は、難しいことを考えずに大人から子どもまで楽しめます。大切な人と見ていただいて、クリスマスの思い出にしていただけたら。
土屋アンナ
イザベラ、イライザ、イボンヌの三役を演じます。ミュージカル出演自体、まだ2回目。前回がすごく楽しかったので、ぜひ今回もやらせていただきたいと思いました。新人ですが、楽しんでいただけるように一生懸命頑張ります。皆さんご存じの通り、自分の激しい人柄とは違う、おっとりとした女性はとくに難しくて。でも、向いていないとは思わず、自分の中に存在する”何か”で表現したいです。墓堀ばあさんは…イメージ通りです!(笑)。すべてを捨てて、ばあさんをやっています! …ショーガールも似合ってますか? ありがとうございます。
吉田要士
また再演という形でマーレイを演じさせてもらえて、毎日幸せな気持ちです。栄作さんからのエネルギーは僕にとっては新鮮に受け取らざるを得ないものですし、アンナさんとは別の作品で共演しているのもあって、本当に楽しい現場です。楽しすぎて、帰るのが惜しくて、いつまでも残っちゃうタイプです。歌唱指導も担当しているのですが、栄作さんは1日目から完璧。もう何も言うことがないくらいで、欲を出していろいろやっていただいています。アンナさんは、クラシック寄りの今までとは違う歌唱法をやっていただいていますが、もう見事にやってくださっていて。毎日、感動して泣いちゃってます。
取材・文/宮崎新之
