MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project- 第2弾 ミュージカル『どろんぱ』 supported by にしたんクリニック│小池徹平×屋比久知奈×末満健一 鼎談

写真左から)末満健一、小池徹平、屋比久知奈

ワタナベエンターテインメントが、劇作家・末満健一とタッグを組んで、日本発のオリジナルミュージカルを作る、MOJOプロジェクト第2弾ミュージカル『どろんぱ』が上演される。題材は「妖怪」とのこと。今、なぜ妖怪のミュージカルを作るのか、それはどんなミュージカルになるのか、作品の主軸を担う、小池徹平と屋比久知奈、作・演出の末満健一に話を聞いた。

日本固有の題材の和製ミュージカルがあってもいいんじゃないか

ーー最初に、末満さんに、創作のお話を伺わせてください。MOJOプロジェクト第2弾『どろんぱ』は妖怪のミュージカルということで、第1弾の『イザボー』(2024年)とは全く違う世界線で、ちょっとびっくりいたしました

末満 僕もびっくりしました。

全員 (笑)!

ーーなぜここに至ったのかみたいなところを、教えていただけますでしょうか

小池・屋比久 ぜひ聞きたいです。

末満 ミュージカルというと西洋物が人気じゃないですか。第1弾は実在したフランス王妃イザボーを題材にしたんですが、“MOJOプロジェクト”と名前をつけて、このプロジェクトが日本の演劇界にもうちょっと認知してもらえるまでは、お客さんがイメージしやすい西洋物を何本かやってから、和物に行こうかなと最初は思っていたんです。イザボーの次は、ナポレオン・ボナパルトを英雄に担ぎ上げて裏切るという、裏切りの天才と言われたタレーランを第2弾に考えていたんですよ。

でも、プロデューサー陣と話し合ったり、ブロードウェイに社長と一緒に行って、向こうで活躍している日本人プロデューサーとの意見交換をしたりしながら、もう第2弾で和物に行っちゃっていいんじゃないかという判断があったんですよね。じゃあ、やってみるかと。日本で上演しているのに、外国人の名前の人たちでやっていて、それはそれで面白くて素晴らしいですが、日本固有の題材の和製ミュージカルがあってもいいんじゃないかと。『どろんぱ』を企画したのと同じくして、山崎育三郎さんも落語を題材にしたミュージカルをされていて、みんな同じことを考えているのかなと。

ーー日本ならではの良さや文化をミュージカルにする

末満 そうですね。日本題材のミュージカルがないわけじゃないんですが、その中で代表的なものをと言っても、なかなかパッと浮かばない。西洋のミュージカルならいくらでもあげられますけども。和製オリジナルミュージカルといえば「これ」という作品はなかなかない。あるとしても原作がある作品になりますよね。原作があると、やり方があるんですよね。

ーーゼロからの物語というと、なかなか思い当たらないですね

末満 原作や元ネタのない完全なオリジナルミュージカルは、アドバンテージがない状態で作るというのは、いろいろな難しさがあるんですが、頑張って面白くしていきたいなと思っています。

ーーその経緯の中で、妖怪の物語というのは、どうやってたどり着かれたのでしょうか?

末満 例えば、和物のアイデアの中で、日野富子のミュージカルを作ろうかなと思ったんですけど、知らないですよね?

屋比久 知らないです……

小池 どういう方なんですか?

末満 日野富子というのは、戦国時代を生み出した元凶と言われる人物です。

屋比久 戦国時代を始めたということですか?

末満 日野富子ひとりで始めたわけではないけれど、その人がその時代にいろいろやった結果、日本のあちこちで戦が起こるようになって、戦国時代になったんです。

小池・屋比久 そうなんですか!

末満 イザボーが悪女の話だったので、日本版の悪女伝で、話としては面白そうだけど、誰も知らないなと。

屋比久 でも、聞けばすごく面白そう。

末満 妖怪のミュージカルだったら、説明しやすいですよね。

小池 キャッチーですよね。

屋比久 なじみがありますね。

末満 和製ミュージカルというのだけが決まっていて、題材をどうしようかと。実は昔からアイデアだけはあって、調べたら17年前くらいに、自分のユニットのチラシに、今後やるかもしれない上演予定というのがあって、そこに「どろんぱ」と載っていました。

小池・屋比久 ええ!すごい!

小池 かなり温めましたね。

ーー妖怪って、日本人はいつかどこかで出会っていますよね

屋比久 ちょっとワクワクします。

末満 今、朝ドラは日本の妖怪伝承を海外に紹介した小泉八雲が題材の『ばけばけ』ですし、鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』もそうですよね。まさか令和に『鬼太郎』がヒットするなんてとか、妖怪の波が来てるのかなと。いいタイミングであってほしいなと、願うばかりです。

妖怪は、人間と共に、見えないけれど一緒に暮らしている感じ

ーーその妖怪のミュージカルのお話を受けたおふたりは、どんなことを考えましたか?

小池 オリジナルミュージカルだというのは、すごくワクワクするなと思いました。末満さんがおっしゃったように、確かに和物のミュージカル自体には、あまりなじみがない部分があったのですが、期待感を持って楽しみにしていました。妖怪というテーマがあって、キャッチーなワードが多くて、不思議な気持ちにはなったんですが、いざ本読みをさせていただいて実質的なスタートを切った今、こんな雰囲気なんだと知れて、楽しみ感がより増したかなという気はしています。

屋比久 私は、小学校の時に妖怪に結構興味を持っていて、妖怪大全集みたいなものを読んだりしていたので、妖怪が題材になっているオリジナルミュージカル作品だというところで、ワクワクしていました。妖怪の役かなと思ったら、ひとりだけ人間の役だったのはちょっと寂しかったですが、でもその世界に入れるのは、純粋に楽しみというか。昔からそういう本を読みながら、妖怪がいるのかなと考えたり、座敷童子がいると思って、ひとりで遊んでみたこともあったり。そういう自分からすると、シンプルにこういう作品に携われることが嬉しいですし、楽しみだなというのが一番の気持ちです。

ーー屋比久さんが妖怪大全集を読んでいたとおっしゃいましたが、小池さんと末満さんは、妖怪にまつわる思い出は何かありますか?

末満 僕は生まれも育ちも大阪なんですが、両親が鹿児島の指宿出身で、子供の頃に田舎に帰ると、すぐ目の前が山みたいなところで、本当にド田舎だったんです。建物もすごく古くて、お風呂は五右衛門風呂で。

小池・屋比久:わぁ!

末満 今住んでいる家の、普通にシャワーがついている風呂場から妖怪は生まれなさそうですが、今にして思えば、あの五右衛門風呂の、薪で炊く、半分外みたいな、ああいうところからは妖怪生まれそうだなとか。街灯がない、月明かりと星の光しかなくて、星が途切れているところは山なんだなとか、闇を強く意識してしまったり。そういう、深い暗闇から妖怪が生まれてきたのかな、というのは思いますね。

ーーそういう環境では想像が膨らみますよね

小池 そんなに多くはないですが、うちも田舎育ちだったので、子供の頃に外で遊んで家に帰ってきたら、切り傷みたいなのがあって「切った覚えもないのにな」と言っていたら、母親が「カマイタチじゃない?」とか。「カマイタチ? 何それ?」から始まって、忘れ物をしたら「何とかが持っていったんだよ」みたいな。どちらかというと、幽霊とは違って、人間の生活に近いようなイメージがすごくあります。人間と共に、見えないけれど一緒に暮らしている感じで、幽霊はめっちゃ怖いみたいな。自分の中で、幼な心に線引きがあったな、という思い出がすごく残っていて。

大人になると、そんな風に言わなくなるじゃないですか。いつも朝早くベランダで子供と体操をやっているんですが、「体操するよ」とか言っていたら、次男が「今、座敷童子通ったよ」と言って、「本当にいた?どんな感じだった?」みたいな。「いるわけないよ」と言うわけでもないし、可愛いし、本当に見たかもしれないですから。そういうのとかを聞くと、この作品にも「令和の時代でも」というセリフもありましたが、今の子供にも、妖怪がすんなり受け入れられているのはすごいなと思いますね。

ーー日本の日常の生活に馴染んでいるというか、普通にいて驚かない感じがありますよね

小池 子供は別に怖がっているわけでもないんですよね。

皆さんのビジュアルを目の前にして、早くやってみたい

ーーその妖怪たちが繰り広げるミュージカルということですが、豪華な皆さんが揃いましたね

末満 キャスティングはプロデューサーさんがやってくれたのですが、僕は、(吉野)圭吾さんだけ、以前ご一緒したことがあって、他の方は完全に初めてなんです。

ーーおふたりの印象などはいかがですか?

末満 まだ日が浅いので、何とお呼びしていいかも……徹平くん?

小池 下の名前嬉しいですね!

末満 ビジュアル撮影の時に初めてお会いしたんですが、すごくそのままの人だなって。

小池 よく言われます(笑)。

末満 多分、ご本人は、これから役作りなどでご苦労があるかもしれないですが、僕的には、撮影した姿を見た時に、これは大丈夫だと安心しました。

小池 大丈夫そうですか?ありがとうございます。

末満 屋比久さんは、洋物のミュージカルに出ている印象があって。あとはモアナの人だ!って(笑)。屋比久さんの役は物語の中で、ひとり立ち位置が違うんですよね。撮影で巫女の衣裳を着た時に、「この小池徹平とこの屋比久知奈が中心になるんだな」と思って純粋に楽しみになりました。

小池・屋比久 良かった!

末満 それは、今のところキャストみんなに思った。

小池 みんなピッタリでした?妖怪の集まりって感じですよね。

屋比久 面白い!

末満 土井ケイトさんと同じ事務所なので、たまに事務所の用事とかで、素のケイトさんと会うんですが、すごく気前のいい姉ちゃんなんですよ。

屋比久 間違いない(笑)。

末満 「土井ケイトがこんな神秘的な感じになれるんだ」って思ったり。あとは、生駒(里奈)さんは、又聞きですが、座敷童子役をやるのが夢だったって聞いて。

小池 そうらしいですね(笑)。

末満 そんなヤツおる?って思って(笑)。

全員 (笑)。

末満 でも夢がひとつ叶って良かったなって思いました。

ーー本当にこのビジュアルのインパクトがすごくて、PVも可愛いなと思いました。おふたりは撮影をしていかがでしたか?

小池 すごく楽しかったですね。撮影の時に、イメージや雰囲気みたいなお話で、「『ワンピース』のニカみたいな」っておっしゃってくださいましたよね?

末満 全てちゃんと元ネタがある妖怪で、烟々羅は鳥山石燕という妖怪画家が描いてる絵がもとになっているんですが、烟々羅は湯気にちょこって目がついているだけなんですよ。人が演じるにあたって、しかも主人公で、どうやってビジュアライズしようかとなった時に、『ワンピース』のニカを、手がかりとして伝えたんです。

小池 イメージが湧きやすかったというか、本気の仮装じゃないですが、こんな格好をすることは滅多にないので、しかもあるアニメを模してとかではなく、一から作って、それを身にまとって撮影するのが、めちゃくちゃ楽しかったですね。

屋比久 私は、初・巫女衣裳を着て、どう立っていいか、初めてだからわからなかったんですが、「実際に爽子も巫女衣裳を着たことがないだろうからそれでいいです」って言ってくださったから、良かったと思って。

末満 巫女の所作指導とか受けなくていいから(笑)。

屋比久 どうしたら……とか思っていたら、それでいいよって言ってくださって。

末満 (物語の中でも)着せられるだけだからね。

屋比久 私は人間としてですが、そういう意味でも新体験が出来そうだなと思っています。皆さんのこのビジュアルを目の前にして、早くやってみたいなって、すごくワクワクしました。絶対に目から入ってくる情報が大きいですから、めちゃくちゃ楽しみです。

末満 (東島)京くんとか、どうしたらいいんだろうって今思ってるんじゃないかな(笑)。いわゆるカッパの、皿と緑の全身タイツみたいな姿だとちょっとダサいよなと思ったんです。だから、自分の中で解釈を作ろうと思って。カッパって日本全国に伝承があるんですよ。もしかしたら妖怪の中で一番伝承が多いかもしれない。じゃあ、いろんなカッパたちの総長ってことにしようと。

屋比久 そういうことなんだ!

小池 なるほど!

末満 ヤンキーみたいな、暴走族の総長みたいな。だから、特攻服を着せて、特攻服に甲羅がついていて……どういうカッパやねんっていうカッパなんですが、似合っていたので良かったです。でも、ご本人も今、どんなカッパやねんと思っているだろうなって(笑)。今回の座組みで、京くんが一番若手なのかな。ふたり(小池・屋比久)とも、生駒さんと京くんとは一緒のシーンが多いかも知れないですね。

小池・屋比久 確かに!楽しみですね!

娯楽活劇ミュージカル、ワクワク妖怪ランド!

ーー新作ですので、物語や音楽について、皆さんにここが見どころだよというポイントを、それぞれの伝えておきたいなと思う内容で、お聞かせください

屋比久 いろんなバリエーションの、いろんなテイストの音楽が入っていて、エンタメとしてすごく色があるから、そこが面白いなと思いました。その中にやっぱり「和」というか、日本の楽器だったり、旋律だったり、なじみがある音が聞こえてきたり。

私は、その地に根付いている音楽というか、民族感が好きなんですが、今回の日本という場所をテーマにした作品ならではの、音楽の面白さが確実にあるなと思いました。そういう意味でも、あまり私は経験したことがない、自分がやってきたミュージカルではないテイストの、新しい音楽というか、新しい形のミュージカル楽曲、新しい音楽になっているのかなと思います。ぜひそこにも注目していただきたいですし、楽しんでいただける、大きな一つになるんじゃないかなと思います。

小池 そうですね。もちろんオリジナルナンバーばかりですが、しっかりみんなが見せ場というか、ちゃんと歌として成立させなければいけない部分がすごく多いので、歌の中での会話や掛け合いみたいなものがあったり、歌で語られる部分が多いので、しっかりとミュージカルになっているなと思いました。

あとは、お芝居部分もそうですが、せっかくの和物ですし、妖怪たちが戦うという部分では、殺陣も多めの印象なので、歌に、芝居に、殺陣にという、かなり見ごたえのあるエンタメ劇になるイメージがしています。たっぷりと、お腹いっぱいなミュージカルになるんじゃないかなと思っています。

末満 何も斜に構えていない、真正面からの娯楽活劇ミュージカルになると思うので、テーマパークじゃないですが、この世界に遊びに来て頂けたらなと。ワクワク妖怪ランドですね。

屋比久 楽しそう。ワクワク妖怪ランドいいな!

小池 浅草感があるね、花やしきみたいな。

屋比久 確かに(笑)。

ーーチラシのあちこちにいるちっちゃい妖怪?も気になります

小池:可愛いと思った!

屋比久 私も思った!

小池 これグッズで売ったらいいよね。

屋比久 欲しい!めっちゃ可愛い!

小池 ガチャとかにしたら売れますよね。

屋比久 ガチャやりたい!

小池 キーホルダーつけてね。

屋比久 推しキャラを見つけていただいて。

小池 出るまでね!

屋比久 やっぱりワクワク妖怪ランドだから!

ーー末満さんは、物語について伝えておきたいことはありますか?

末満 妖怪モノというだけでは物語の芯にはならないので、妖怪という題材の中に、人間ドラマがあるというか。シンプルに言うと、口にするのは気恥ずかしいですけど、テーマは「愛」。妖怪モノでありながら、「愛」というテーマが軸になっているので、それがちゃんと伝わるように、おふたりとしっかりお芝居を作っていきたいなと思います。

小池・屋比久 よろしくお願いします!

取材・文・撮影/岩村美佳
ヘアメイク(小池徹平)/加藤ゆい(Hair&Make-up fringe)
ヘアメイク(屋比久知奈)/武部千里
スタイリング(小池徹平)/松下洋介
スタイリング(屋比久知奈)/尾後啓太