ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』歌唱披露イベント&製作発表レポート

東宝版では17年ぶりの上演となるミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』。2026年3月、東京・シアタークリエでの開幕を前に、製作発表会見が開かれた。ミッキー役をWキャストで演じる小林亮太渡邉蒼、同じくWキャストでエディ役を演じる山田健登島太星、ミセス・ライオンズ役の瀬奈じゅん、ミセス・ジョンストン役の安蘭けい、そして演出を務める日澤雄介が登壇した。

本作は、リヴァプールを舞台に、生まれてすぐに生き別れた双子の兄弟ミッキーとエディの運命を描くウィリー・ラッセルによるミュージカル。貧しい家庭に育ったミッキーと、裕福な家庭で育てられたエディ。正反対の環境で育った2人が、やがて親友となり、抗えぬ格差と運命に翻弄されていく姿を描く。普遍的なテーマを持つ本作は、1983年の初演以降、世界各国で繰り返し上演されている。

会見では、着席後に一人ずつ挨拶。その後の質疑応答では、役の魅力や演出へのこだわりが次々と明かされた。公演は小林&山田ペア、渡邉&島ペアの2ペアによって上演されるが、この会見では両ペアが揃って劇中ナンバー「あいつに」を披露。日澤が「Wキャストではありますが、2本の作品を作るような感覚で挑んでいる」と語った本作の会見の模様をレポートする。

ミッキーという存在、エディという存在

まず語られたのは、ミッキー役の魅力について。小林は「人生に立ち向かい、逃げずに精一杯謳歌しようとしているところが、1人の人間としてすごく魅力的」と語る。ミッキーにとってエディという存在については「自分が笑えないところで笑ってくれて、言葉にしなくとも目と目で通じ合って、一緒に生きてくれる。やっぱりすごく救われるし、最高の友達なんじゃないかな」と、稽古での手応えを踏まえて表現した。

渡邉もミッキーにとってエディは「絶対に一緒にいるべき存在」だと言い、「2人は生き別れた双子で、血の繋がりでしかないけれど、それでも、ミッキーが持っていなかったものをエディが現れることで運んできてくれる」と続ける。

続いて、エディ役の2人に、お互いの演技を見てどう感じているか、という質問。山田は「たいちゃん(島)とは一緒にグループ活動をやっていた時期もあって。歌う姿は知っていたけれど、お芝居を見るの初めてでした。人柄がお芝居に出ていて、その独特な空気感がすごくいいなと思っています」と、目尻を下げた“健登スマイル”でコメント。

ニコニコと嬉しそうに聞いていた島は「これ言ってもいいのかな?」と前置きした上で、「健登ってめちゃくちゃ優しいんですよ。びっくりするほど裏表がなくて」と山田の人柄を讃える。すると、左右から「それは言ってもいいよ!」とツッコミが飛び交い、なんとも賑やかな雰囲気に。山田との共通点を問われると「やっぱり僕たち同じ人間なんだな」と答え、山田の「間違いない!」の相槌に、会場は笑いに包まれた。

意外にも本作が初共演となる安蘭と瀬奈。日澤は2人の母親のシーンを見どころの一つに挙げ、「母親2人が子供を渡す、受け取るという決断はとても大きい。その決断がなぜ起こるのか、そこに生まれる彼女たちの思いに注目していただきたい」と強調した。稽古場では楽しそうに会話しているという2人が、舞台上でどんな衝突をみせるのか期待したい。

再演を重ねる作品をどう描きたいか、問われた日澤は、「運命だけで片付けたくない」と、言葉に力を込める。「この作品に引き込まれる理由を考えると、各々の選択があるのかなと。登場人物1人1人の選択や決断と、そこに絡んでくる人間の欲、愛、憎しみといった感情を深く掘って演出できれば」。さらに「ミッキーとエディの子供から大人への成長を同じ役者が演じる」点を見どころに挙げ、「大人になって得たもの、なくしたものって何なのか。それを2人の選択や友情、愛情、憎しみ、悲しみをベースに描いていければ」と続けた。

「両ペアを楽しんでもらいたい」

会見の最後には、それぞれから意気込みとメッセージが語られた。

2003年上演版を観劇していたという安蘭は、当時「なんて悲惨な話なんだ」と感じたことを明かし、「この令和の時代に、皆様が何か素敵なものを持って帰っていただけるように本番に挑みたい」とコメント。

瀬奈は、自身が特別養子縁組で2人の子供を授かった経験に触れ、「この作品を受け取る人たちの感情もどんどん変化している。そのなかで、今、私たちがこの作品をやる意味がきっとある」と意気込む。

「本当に幸せです」と、本作に携わることへの思いを前のめりで語ったのは島。「心あたたまるところもあるけれど、ちょっと辛くなるとこもある。いっぱい魅力が詰まった素敵な作品なので、ぜひ両ペアご来場していただけると幸いです」と熱を込めた。

山田が「僕たちにしかできない表現で、誠実に、そして日澤さんの言葉を借りるなら“生々しく”届けていきたい」と、シンプルながらも力強くコメントすると、渡邉は「僕ら1人1人が持ってる人間のおかしさとか哀れさが、とても色濃く宿されている作品。リアルな人間的な物語を演じさせていただく自覚を持って、一生懸命やっていきたいと思います」と語る。

小林は「今回、『キッズゲーム』というナンバーがあるんですが、僕らがやってる演劇って、僕はどこまでも遊び場だと思っていて。僕らがいかに真剣に遊ぶかによって、日常を頑張っているお客様に、心のゆとりや遊び心を思い出していただける。最後には心にずしっと来る結末が待っているのは事実ですが、そこまでの僕らの道のりを豊かに見ていただける作品になっていると思います。シングルキャストも多くいますが、ぜひ“わたしま”(渡邉・島)ペアと、“こばやま”(小林・山田)ペアを、皆様に楽しんでいただければ嬉しいなと思います」。

日澤は「誰しもがかつて子供だったからこそ、必ずどこか必ず刺さるところがある」とした上で「“わたしま”、“こばやま”、どちらのペアを先に観てもいい。2本の作品を作っている感覚で演出してるので、ぜひとも両作品とも劇場で観ていただければと思います」と力強く締めくくった。

会見後は、4人による劇中ナンバー「あいつに」が披露された。ミッキーとエディが、互いに胸の中で「あいつに似ていたらよかったのに」と歌うナンバー。メロディラインは爽やかながらも、その裏にある羨望や、自分の至らなさにちょっぴりナーバスになる切なさが4人の歌声から伝わってくる。お兄さん組の小林&山田ペアの歌声はしっとりという言葉が似合う“静”の印象、一方の渡邊&星ペアはやんちゃな雰囲気が感じられる“動”のハーモニーといった対比が興味深い。わずか数分の歌唱のみでこれだけ印象が違うのだから、全編を通して観劇したときの違いはどれほどのものになるのか。開幕への期待がますます高まった。

格差、階級、運命——時代を超えて問われ続けるテーマと、普遍的な人間の感情が交差するミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』。“わたしま”と“こばやま”、2つのペアが描く物語を劇場で確かめてほしい。

取材・文・撮影/双海しお