ミュージカル『レッドブック~私は私を語るひと~』製作発表レポート

韓国で異例のヒットを記録した創作ミュージカル『女神様が見ている』を生んだ黄金コンビ、ハン・ジョンソク(脚本)とイ・ソニョン(作曲)が、4年の歳月をかけて制作したオリジナルミュージカル『レッドブック』。2018年の韓国初演は大ヒットを記録し、イェグリーンミュージカルアワード脚本賞や韓国ミュージカルアワード作品賞など数多くの賞を受賞。高い評価を得た作品がついに日本に上陸する。
日本版初演の演出を手がけるのは、『王様と私』『モダン・ミリー』などの演出で高い評価を受けている小林香。キャストは咲妃みゆ、小関裕太、花乃まりあ、エハラマサヒロ、中桐聖弥、加藤大悟、田代万里生と、実力と個性を兼ね備えたキャストが集結。稽古が始まるタイミングで、製作発表会見と歌唱披露が行われた。

まずは法廷に立ったブラウンがアンナの言葉を思い出しながら歌う「愛は天気のように リプライズ」と、アンナの心情を歌う「私は私を語る人」が披露された。すでにPVも公開されている2曲だが、小関のチャーミングな表情や咲妃の凛々しい佇まい、美しい歌声に改めて心を掴まれる。
続いて、アンナが書いた官能小説『レッドブック』を売り捌くローレライ(田代万里生)とドロシー(花乃まりあ)、刺激的な小説に熱狂する市民が歌う「あらま!そんな!すごい!」が初披露された。黒いドレスに身を包んだ田代は、優雅な物腰と深みのある歌声で聴くものを惹きつけていく。途中から花乃が加わると華やかさとパワフルさが増し、高揚感に満ちたナンバーとなっていた。

製作発表会見で本作を通して伝えたいメッセージを訊ねられた咲妃は「コメディ要素もたくさんある楽しい作品ですが、根底には他者の尊厳を尊重すること、他者への理解を深めた先に見えてくるものが描かれています。登場人物たちがそれぞれの人生の中で葛藤し、乗り越えるべき壁に対峙する物語だと思いました」と語る。
台本を読んでキュンとした瞬間について、小関は「ブラウンは本当に生真面目で、紳士であることを自分に課しているような人物。アンナは自由奔放で自分をしっかり持っている女性なので、とにかくペースを崩されています。紳士として頑張るけど空回りするのを繰り返している役なので、全体的にチャーミングだと感じました」と笑顔で話す。
女性文学会「ローレライの丘」会長で、離れて暮らす実の息子を思いながらアンナの恋を応援するドロシー役の花乃と咲妃は宝塚歌劇団時代の同期。花乃は「10代の頃からの友達ですが、こんな形で共演させていただけるとは思っていなかったのですごく嬉しいです。二人で言葉を交わすシーンが多いのも楽しみですし、楽しいシーンもほろっとくるシーンもあるので、二人の関係性をいい形でご覧いただけたら」と意気込んだ。

エハラが演じるジョンソンについて、「ロンドンで最も影響力のある音楽評論家で、偽善者ぶって卑劣な人物」と紹介されると、キャスト陣から笑い声が起きる。男性が見ても楽しめる作品かどうかという質問に、エハラは「老若男女誰が見ても楽しい髪型にしてきました」と答えて笑わせ、「僕が演じるのは本作で一番悪い人間です。最初にお話をいただいたとき、お客様から嫌われてしまうかもしれないけど、エハラさんは違う表現ができると思うと言っていただきました。ただ悪い奴じゃなく、チャーミングな一面や人間らしさも楽しめるように作っていきたいと思います」と意欲を語った。

中桐演じるジャックと加藤演じるアンディは双子で、小関演じるブラウンと「紳士三銃士」を名乗っている。一緒に行動する場面も多い二人の印象について、中桐は「お二人ともテレビや舞台で幅広く活躍されているので、色々なことを吸収したいです。双子役の(加藤)大悟とは同い年で、会って2日ですごく仲良くなりました。舞台上でもプライベートでも、お二人といい関係を築きたいです」と笑顔を見せる。
普段ミュージカルを見ない方へのオススメポイントを聞かれた加藤は「終演後、とても優しく温かい気持ちで帰ることができると思います。コメディ要素もあって、色々な表現やシーンを楽しんでいただけるはず。僕としては、積極的にカンパニーの仲を深め、素敵な作品をお届けしたいですとモチベーションの高さを見せていた。

そして、田代が演じるのは、女性文学会「ローレライの丘」創設者で“変に優雅で気品のある女装男性”ローレライ。本作をどんな方に見ていただきたいかという質問に、「アンナとブラウンさんのシーンが本当に初々しいので、キュンキュンしたい方はぜひお越しください。あと、みなさん人生色々あると思います。咲妃さんが披露した『私は私を語る人』というに“私には私がいるのよ”という歌詞があるんですが、素晴らしいですよね。誰が書いたんでしょう?」と、上演台本・訳詞も手がける小林を見るが、小林は「……原作者?」と答えて笑いを誘う。
続けて田代は「背中を押してくれる人は自分の中にいるんだと本当にグッときました。自分の選択や自分らしさにちょっとでも迷いがあったり悩んでいたりする方は、この作品に背中を押してもらえると思いますし、他者への理解やリスペクトをたくさんもらえる作品です。ぜひいらしてください」と呼びかけていた。

また、本作を今見るべき理由について、小林は「今って、匿名性が高い言葉がすごい勢いで氾濫していると思うんですが、濁流の中で生き残るのは強い言葉になっている。弱い人の小さな声はかき消されてしまいますし、奥ゆかしい方は誰かを傷付けたくなくて口を閉ざしてしまうこともあります。誰が言ったか分からない強い言葉が増殖していく中で、主人公のアンナ・ノックさんは、自分自身のことを自分の言葉で語ることから、人生を自分のものにしていく。「ノック」って不思議なファミリーネームですが、台本を読み終えたとき、扉や壁を叩いて崩していく「ノック」なんだと感じました。自分の言葉で自分の人生を取り戻していく彼女は勇気がありますが、その勇気はきっと老若男女誰もが持っていると思います。自分にとっての“レッドブック”って一体なんなんだろう?と思いを馳せていただける作品を作れたらいいなと思っています」と語った。

役と自身の共通点について、咲妃は「意志が強いところ。それが自分を苦しめることもありますが、アンナは意志の強さを持ち続けたことで成長していく。彼女の姿勢から刺激を受け、学んでいるところです」と話し、小関は「自分を律しようと心がけているので、初対面の方からは隙がないと言っていただくことが多いんです。実際は隙だらけなのがバレた時に呆れられがちなので、そこが似ていると思います」と笑う。田代は「ローレライをキャスティングするときに、若き日の美輪明宏さんをイメージしていたと聞いて、なぜ田代万里生に辿り着いたのか不思議に思いました(笑)」と明かし、「他にも(坂東)玉三郎さんや(市川)染五郎さんのお名前を伺って、日本版のローレライ像を僕の中で作っているところです。ローレライもお三方も、何かに対して深くのめり込んで突き詰めていくところがある。僕も音楽に対してそういった思いがあるので、そこが共通点かと思います」と分析していた。

最後に、楽しみにしている方々に向けて咲妃は「このカンパニーで創作に励むのがより一層楽しみになりました。皆様に喜んでいただける作品をお届けできるよう、誠心誠意努めてまいりたいと思います」、小関は「既にたくさんのファンの方がいる『レッドブック』という作品がようやく日本にやってきます。皆様に心から楽しんでもらえるよう、そして心に残る作品になるよう作っていくので、ぜひ楽しみにしていてください」と呼びかけた。

ミュージカル『レッドブック』は、5月16日(土)~5月31日(日)まで東京・東京建物Brillia HALL、6月27日(土)~6月30日(火)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、7月4日(土)~7月5日(日)に愛知・御園座で上演される。

文・撮影/吉田沙奈