ミュージカル『レッドブック~私は私を語るひと~』取材会・ゲネプロレポート

撮影/嶋田真己

2018年に韓国で初演され、女性への偏見やセクシャルハラスメントへの問題提起が大きな共感を呼び、大ヒットを記録したミュージカル『レッドブック~私は私を語るひと~』。咲妃みゆと小関裕太を迎えた日本版初演が、5月16日(土)に開幕した。開幕を前に、取材会と公開ゲネプロが行われ、咲妃と小関のほか、花乃まりあ、エハラマサヒロ、中桐聖弥、加藤大悟、田代万里生、そして演出の小林香が登壇した。

本作は、19世紀のロンドンを舞台に、小説を書くことで自分自身を表現するアンナが、社会の偏見などと闘いながら「私」として生きる道を見つけ出す物語。“官能的な小説を書くことで社会と闘う”主人公のアンナを咲妃、真面目一筋で「紳士」であることしか知らない新米弁護士のブラウンを小関が演じる。

取材会では、最初に咲妃が「約2カ月半のお稽古を経て、こうして揃って無事に初日間近までたどり着けたことを幸せに思っています。演出の小林さんを筆頭にスタッフの皆さん、キャストの皆さん、ミュージシャンの皆さまと全員で力を合わせて作り上げてまいりました。このパワーをお客さまに受け止めていただくべく、力を注ぎたいと思います」と挨拶。

続いて、小関は「実は昨年、韓国でこの作品が再演していたので拝見しました。歌の力とお芝居、そしてそれを楽しみに観に来ている韓国のお客さまの相乗効果を目の当たりにして、圧倒されました。その記憶を胸に今回の稽古を行って、ここまでくることができました。この作品と向き合う中で、たくさんの学びとエネルギーと笑顔をもらうことができると思います。メッセージ性が強い作品ですが、最後はお客さまがハッピーになっていただける作品じゃないかと思っています」と本作の魅力を語った。

花乃が演じるドロシーは、花乃にとって「新境地」という役柄。花乃は、ドロシー役について、「演出の小林さんから、『自分の持っている引き出しの中のものを使って演じても、新境地にはならない。中身から新しいものを生み出さなければ新境地とはいえないのではないか』というお話をいただいて、新しい自分を引き出すために、とても時間を丁寧に使っていただいて、今日ここまでお稽古してまいりました」と話し、「皆さまに楽しかったなと思っていただける作品になっていたら嬉しいです」と思いを寄せた。

ローレライ役の田代は「役柄の設定が『変に優雅で気品のある女装男性』ということで、どんな役柄を生み出すことができるのかなと思いましたが、いっぱい悩んで、演出の小林さんのもと、そして共演者の皆さんのお力をお借りして、これだというものを今日のゲネプロ、そして明日の初日に向けてお届けしたいと思います。韓国が生み出したミュージカルにはこれまでも出演したことはあるのですが、韓国人クリエイターだけで作られた作品という意味では初めてなので、その点もとても楽しみにしております。小林さんが演出にこだわったシーンがたくさんありますので、お客さまがご覧になり、どんな気持ちで劇場を後にされるのか、とても楽しみにしております」と期待を口にした。

ジョンソン役のエハラは「今回のキャストさんは、皆さん、歌唱力もすごいし、場の空気を作れる方ばかりです。今回のジョンソンという役はこれまで自分がやってきたどのコントよりもクセが強いキャラクターなんですよ。ぜひとも千鳥さんに観に来てもらいたいですね」と冗談交じりに語った。

そして、ジャック役の中桐は「1カ月半、しっかりとこの作品に向き合って、ようやくお客さまにお届けできるとワクワクしています。お稽古を通して、素敵なキャストさんに囲まれているんだなと改めて実感しました。幕が開くのが楽しみです」、アンディ役の加藤は「本日はお越しいただき誠にありがとうございます。稽古を通して培ってきたものをしっかりと初日にぶつけてまいりたいと思います」とそれぞれコメントを寄せた。

また、演出の小林は「ミュージカルですが、これ以上ないというくらいお芝居の稽古をしてまいりました。皆さん、本当にお芝居に真摯に向き合って作り上げてきたプロセスがあり、それが確実に実っているなと舞台稽古を終えて実感しております。もちろん、歌もダンスも楽しみにしていただきたいのですが、出演者全21名で緻密なドラマ作りをやれたのではないかと思っておりますので、ぜひそれを観ていただいて、感動していただきたいという気持ちでいっぱいです」と自信をのぞかせた。

舞台では初共演となる咲妃と小関。今回のお稽古を通して、「どんなパートナーになったか?」という質問が挙がると、咲妃は「私は少々年上ということもあって、最初は頑張って引っ張っていくんだっていう気持ちがありましたが、(小関に)助けていただくことばかりでした。裕太くんと一緒にお芝居を作り上げていく過程が密で、あっという間に過ぎ去ってしまったという若干の寂しさも感じますが、ここからお客さまにお届けすることで、どんな化学反応を生み出せるのか楽しみです。私は本当に素晴らしい相手役さんに恵まれたものだと心から思っています」と笑顔を見せる。

小関は、「もちろん美しい方ですが、ドシッとした背中を見せてくださる方で、1秒も無駄にせず突き進んでいく姿勢が素晴らしい俳優さん」と咲妃を評し、「(咲妃は)この役柄のように僕の背中を押してくれる心強い存在です。明日からまた違う景色が見られるのではないかと楽しみです」と話し、絆の強さを感じさせた。

さらに、咲妃と花乃は、宝塚歌劇団時代の同期であり、ミュージカルでは本作が初共演となる。花乃は、咲妃との共演について「同期でありながら、自分自身がいい緊張感を持てる尊敬する女性です。今回、がっつりお芝居をしてみて、よりその気持ちが増しました。本当に素晴らしい役者さんだなと思いますし、お芝居をしているとき以外のカンパニーの中でのありかたも素敵だなと思います。ご一緒できてとても嬉しかったですし、初日からの毎日も楽しみです」と目を輝かせていた。

ゲネプロレポート

物語は、保守的なヴィクトリア朝時代に生きる主人公のアンナ(咲妃みゆ)が、真面目で“紳士”な新米弁護士のブラウン(小関裕太)と出会うところから始まる。アンナは、淑女として振る舞うよりも「私」として生きたいと考える、少し変わった女性だ。そんなアンナが、ローレライ(田代万里生)たちとの出会いをきっかけに、官能的な小説を書くことで自分を表現し始める。型破りで刺激的な内容は、瞬く間に評判を呼び、多くの読者を熱狂させていく。一方で、「女性のあるべき姿に反している」「社会に悪影響だ」と非難され、ついには裁判にかけられてしまう…。

性差別や社会の偏見、「自分らしく生きること」など数々のメッセージが込められた物語だが、全編にポップな歌とダンスとたっぷりの笑いが散りばめられた、華やかなエンターテインメント作品に仕上がっていた。

何といってもアンナを始めとした登場人物たちの存在感が光る。咲妃が演じるアンナは天真爛漫で、まっすぐな等身大の女性。一方で、意志をはっきりと伝える、芯の強さも合わせ持つ。可憐で大胆なアンナの楽しそうな笑顔はこの作品を象徴しているように思えた。

ブラウンは、当時の時代背景や、“紳士”という立場上、女性を軽視しているかのような発言も見られるが、小関の柔らかなオーラゆえ、棘や嫌みは感じられない。初めての恋に戸惑う様子はかわいらしくもあり、人間味にあふれたキャラクターとして立ち上がっていた。

花乃が取材会で「新境地」と話していたドロシーは、登場シーンから観客の視線をさらう。アンナに輪をかけた“変わった女性”を見せつけ、会場からは大きな笑いが沸き上がった。花乃のコメディアンヌぶりにもぜひ注目してもらいたい。

田代のローレライも個性的で、とにかく美しい。哀しい過去も描かれているため、人物像により深みがあり、ロンドンに生きる一人の人間としてしっかりと形づくられていた。

登場シーンはそれほど多くないものの、エハラが演じるジョンソンも強いクセのあるキャラクターで、登場シーンごとに鮮烈な印象を残していた。中桐演じるジャックと加藤演じるアンディも個性的で、作品の良いスパイスとなっている。小関演じるブラウンも含めた3人で歌い踊るシーンも見どころの一つだ。

女性が「自分らしさ」を追求して生きることが、大変な苦労だった時代を、笑顔を忘れず、まっすぐに生きたアンナ。そんなアンナの姿からは、きっとポジティブなパワーをもらえることだろう。ぜひ劇場で、明るく元気でハッピーな物語を体感してほしい。

舞台写真

インタビュー・文・撮影/嶋田真己