1990年公開、世界中を感動の渦に巻き込んだ大ヒット映画『ゴースト/ニューヨークの幻』を基に誕生したミュージカル『ゴースト』が、2018年、2021年に続き、5年ぶりの3度目の上演を果たす。映画版に勝るとも劣らない感動の名作として、ウエスト・エンド、ブロードウェイから世界中を席巻し、日本では日本オリジナル演出版で上演されてきた。主演のサム役は、3度目となる浦井健治。サムの恋人モリー役は、星風まどかと竹内夢のダブルキャスト。稽古を前にした今の思いを語り合ってもらった。
星風:明るい太陽のような存在のお二人
ーーすでに打ち解けているようですが、お互いの印象はいかがですか?
浦井:会う回数ではなく、濃度というか、お二人の気の合い方ですよね。お互いにリスペクトし合っていて、本当に素敵なお二人だなと感じております。
星風:私は結構人見知りなんですが、緊張を解いてくださるお二人で、明るい太陽のような存在でいてくださるので、私も自然と緊張がほぐれていくというか。お二人の人間性がそういう空気感を作ってくださっているんだなと、助けていただいています。私も見習って、明るく元気にやっていきたいです。
竹内:私はグランドミュージカルに初めて出演するのですが、ずっと作品を拝見してきた方々だったので、トニー賞の番組のリハーサルの時に初めて浦井さんとお会いして、まどかさんとはビジュアル撮影の時にチラッとお会いできたんですが、マイクを通していないお二方の歌を聞いたのが、お稽古が初めてだったので、「芸能人だ!」っていう感じで、もう眩しくて直視できなかったです。
浦井・星風:イヤイヤイヤ!
竹内:それがファーストインプレッションです。フランクにお話ししてくださったのが本当に嬉しくて、それが人気の秘訣なんだろうなと、勝手に考察してしまいました。ファンです。
浦井・星風:(笑)。
ーー『第79回トニー賞受賞式』でWOWOWスタジオのパフォーマンスゲストとしてご出演されましたが、ミュージカルの最高峰、そして今の最先端を目の当たりにしていかがでしたか?
浦井:熱気というか、どの作品も見入ってしまいましたし、そのパフォーマンスにも人生が乗っているようでした。やはりトニー賞は特別だと思いますし、それをWOWOWさんがリアルタイムで届けて、いろんな垣根を越えて応援しているんだなと感じました。そして、(井上)芳雄さん、京本(大我)くん、(宮澤)エマさんが、確実に数秒も狂わずに着地させる。
竹内:すごかったです。とんでもない方々だなと思いながら、本当に素敵な時間だと思って見ていました。
星風:本当に。
ーーパフォーマンスだけでなく、コメント出演もされていましたが、いかがでしたか?
竹内:楽しかったです……
星風:夢ちゃん楽しそうだった!
竹内:めちゃめちゃ楽しかったです。ちゃんとマイクをつけて、本番のような形式で歌うのは初めてでしたし、この後、まどかさんと一緒に歌うことはないですから。本番にはないパフォーマンスの形式でしたので、本当にいい思い出になりました。井上芳雄さんとお写真を撮らせていただいたり。
浦井:嬉しそうだったね〜!!!
竹内:すごく嬉しかったです! 浦井さんが「写真撮ったら」って言ってくださったから。ありがとうございました!
星風:夢のような時間だったね。
竹内:すごかったです。まどかさん、どうぞ!
星風:いただきます(笑)。私はニューヨークに少し前に行かせていただいていて、トニー賞授賞式が行われていたラジオシティの前を、毎日10往復位していたんです。その空気感や熱気を画面を通して感じて、いろいろ学ばせていただきました。記念すべき瞬間に、ゲストとして、皆様とパフォーマンスもするという、こんなにありがたい経験はないなと思いました。『ゴースト』でもしっかり頑張らなければと思わせていただいた時間でした。
浦井:生放送で、しかもトニー賞でのパフォーマンスを見てから、その最後の最後、授賞式が終わった後に、井上芳雄さんたちを目の前にして、「さあ歌ってください!」という状況なので緊張もしますよね。
星風:皆さんが横で見ていらして。
浦井:でも、そのぐらい素敵な贅沢な時間だったなと改めて思いました。
竹内:「夢」と言ってきたことが言霊になる
ーーお二人は初参加ということで、この作品に出演が決まった時の率直なお気持ちから聞かせていただけますか。
竹内:「夢叶うぞー」って。十何年もグランドミュージカルに出たいと言い続けていました。でも、NHKのレギュラーのお仕事がある以上、スケジュールが難しいと長年過ごしてきた中で、やっと掴めたチャンスでした。決まった時は、さいたまスーパーアリーナ(GMOアリーナさいたま)でのコンサートのゲネプロの直前で、とりあえず広い楽屋の廊下を走って、「やったー!」って喜びました。
浦井・星風:(笑)
竹内:まだ誰にも言えない時だったんです。「夢」と言ってきたことが言霊になるんだなと実感できた瞬間で、すごく嬉しかったです。
星風:私もすごく嬉しかったです。もともと映画は拝見していて、二度主演された浦井さんとは初めましてですが、このような形でご一緒させていただけるのも光栄です。原作がある作品に挑戦するのは、気持ちも違いますし、原作映画を愛してくださっている方の思いも背負わなければいけない気持ちもあったので、嬉しさと身の引き締まる思いというか。初演と再演で、宝塚の先輩の咲妃(みゆ)さんがやっていらっしゃったこともあって、いろんな意味でしっかり努めようと覚悟を決めたのを覚えています。
浦井:大切な人との絆や愛を体現すると心が豊かに
ーーそして3度目の浦井さんですが、初演はコロナ前で、再演はコロナ禍まっただ中でした。それを経て今回というのは何か思いがありますか?
浦井:今回は、僕と森公美子さんは3回目だけど、かなりキャストが変わっているので、演出家のダレンと一緒に、新しくみんなで作っていくんだろうなとも思っています。モリクミ(森公美子)さんとよく話しているのが、この作品はどうしたって人生に関わってくるというか。人間誰しもが向き合うことになる死というものや、大切な人との絆や愛が描かれているので、それを体現すると心が豊かになって、すごく素直になる感覚があって。例えばですけど、あるシーンでモリクミさんが必ず泣いてしまうんですね。ある種ファンタジーの世界なのですが、それでも日常の尊さに触れるというか。
日常というのは、1分1秒の流れの中で、一瞬にしてなくなってしまうものもあるかもしれない。でも、それを信じること、信じるべきことは、人生において何よりも大切だということを、学ばせてくれるような名作だと感じます。このメンバーでやれるのは本当に幸せに思いますし、お二人の「夢が叶う」「先輩との絆」など、様々なものも背負って、お二人は板の上に立つんだなと思うと、その瞬間に立ち会えるのは光栄だなと思っています。
ーー今の浦井さんの言葉を聞いて、お二人はどんなふうに受け取りましたか?
星風:やっぱり歌一つとっても、私たちはついこの間譜面をいただいたのですが、必死でした。浦井さんはすでにサムの人生を生きていらっしゃるから、食らいつくのは大変だと思いますが、早くそこに行きたいですね。今お話を伺って、より強く思いました。
竹内:浦井さんについて行けば大丈夫だろうなと。浦井さんと舞台上で意思疎通をしながら歩いていったら、きっと引っ張っていってくださるだろうし、脚本や演出も自分を引っ張っていってくれる。覚えることを覚えて、己を磨き上げた上で、あとは魂を置いていく作業だなと。(浦井に)よろしくお願いします!
ーー浦井さんは、再び演出のダレンさんと作るご経験も、豊かな時間かと思うんですが。
浦井:プレイヤーから出たエネルギーも取り入れてみようかと、寛大さがある人だから、こちらから投げれば投げるほど吸収してくれる。やはり日本人はどこか遠慮しがちになってしまうところがあると思うのですが、笑顔で「出していいんだよ」って。本当に素敵な、信頼できる人です。
竹内:心が軽くなる瞬間も描かれているバランスがいい作品
ーー初出演のお二人は『ゴースト』という作品の印象をお聞かせください。映画でも、舞台版のご覧になっていたらその印象でもいかがでしょうか。
竹内:心が本当に温かくなる作品だなと思うのと同時に、映画よりもミュージカル版の方が意外とコメディになっていて、だからずっと悲しいわけではないんですよね。それがすごく魅力的だなと思います。モリーはずっと悲しくて、裏切られ、最愛の人は亡くしますが、お客さんの心が軽くなる瞬間がしっかりと描かれています。すごくバランスがいい作品だなという印象です。
星風:映画は何度見ても泣いてしまいます。舞台版もちゃんとそこに着地するんですが、サムとオダ・メイの掛け合いとか冒険の旅が……
浦井:冒険の旅(笑)。
星風:お客さんの目線でも、演じている私たちも、もしかしたらちょっと大変かもしれないなって。
竹内:本当に、笑いをこらえるのが大変だなと思っています。
浦井:モリーには見えてないからね。
星風:笑わないようにするのが戦いだなって。観ている方としては、夢ちゃんと浦井さんがおっしゃったように、きっといい塩梅の素敵な作品だと思います。メッセージ性があって、やっぱり人と人との絆は永遠だと思いますし、本当に素敵だなと思うので、そういう大切なストーリーがあってという、そのバランスがすごく魅力的だなと思いました。
ーー浦井さんは初回から演じてきて、作品についてどう感じていますか?
浦井:3.11(東日本大震災)の後に、無人の電話ボックスが置かれていて、亡くなった方に対してそこで電話できる場所があったんです。この作品が語っていることって、その思いにすごく近いねってモリクミさんたちとも話していたんですけど、必ずその愛もメッセージも残るし、きっと心の中では対話もできる。それが勇気となり、未来が見れる手助けになっているかもしれない。きっと亡くなった方も思いは同じだと思うんです。それをみんなで念頭に置いて作品を作ってきました。
今回も、時は流れても、悲しみは世界中に今なおたくさんありますが、前を向いたり、周りの人を大切にして、更にはみんなで手を取り合っていれば、世界が平和になるきっかけが生まれたり、そういうことにつながるんだなと。エンターテイメントの可能性、演劇の本来の姿に直結していると思うので、それがミュージカル『ゴースト』の強みであり、それを背負わなければいけないのが、「WITH YOU」というソロ曲があるモリーなんです。
残されたサムを想いながら歌う姿には、心打たれますし、見ていてもつらい姿なんですけど、モリーの中ではこれも愛なんですよね。ここでモリーは勇気をもらっているのだと。まさにその姿から自分も勇気をもらえるなと思っています。
星風:モリーの強さの中にある弱さにも寄り添っていきたい
ーーお二人が初めてモリーに取り組まれる上で、大切にしたいこと、キーにして紐解いていきたいと思っていることなど、お聞かせください。
竹内: 「今は信じてみよう」ということが、モリーのキーになっていると思っています。もちろん芯の強い女性ではありますが、強いだけじゃなくて、信じてみるという愛の強さが大きいなと。それは私が今まで生きてきて、夢を叶えたいと思って信じてきたことと、シチュエーションは違えど、少なからず重なるところはあるので、その重なるところを十分に引き出した上で、芯と向き合って、自分や周りを愛していくモリーの姿を投影しながら作っていけたら、お客さんにも心の強さが伝わるんじゃないかなと思います。
星風:私も、簡単に表現すると、すごく強い女性だと思います。意思を貫く、やり遂げる、そういう力強さ、パワーを持っている、エンジンが大きい女性なんだなと。言葉にするとそうなんですが、その強さがどこから来るのかなと思った時に、私自身も自分のためじゃなく、家族など自分の命に変えても守りたいものになら燃えるというか、そこに生きる意味があるんです。自分一人で生きていかなければいけないとか、幸せや日常がいつなくなってしまう状況かわからない、モリーも考えてもみなかったことだと思いますが、急に亡くなって、今この世に存在していないサムを思って、存在はしていないけれど、そのために頑張れているんじゃないか、と。
だから、一人で立って自立しなきゃいけない意味も色々あると思うので、自分が持っているこの気持ちを、この役にも投影していけたら。強さの中にある人間性や、ちょっとした不安定さ、何かにすがりたい気持ちには、弱さもあったりすると思うんですよね。そこにもちゃんと寄り添っていけたら、よりモリーが魅力的になるのではないかと、やってみないとわかりませんが、今の時点ではそう感じています。
ーー浦井さんはサムと向き合うのは3度目ですが、今はどんな風に考えていますか?
浦井:ライブであれという感じです。登場シーンが新居に入るところで、トニー賞の番組で歌わせていただいた、あの曲なんですね。サムとモリーが新居を構えるその家に、友人のカールも含めて三人で来て、それこそ「冒険のスタートだ!」みたいな場面から始まります。
その“スタート”感を感じられるのがこの作品の良さですし、毎回楽しんでやれたらいいなと思います。
浦井:二人のモリーを見ないのは本当に損!
ーー3度目の上演になりますが、今だからこそ見観て頂きたいお客様へ、お伝えしたいメッセージをお願いします。
浦井:この二人のモリーを見ないのは本当に損です!
星風・竹内:優しい……
浦井:カール役の鈴木拡樹君と太田基裕君が、きっといろんな色味を付け加えてくれるのと、ダブルキャストの組み合わせの妙もあり、化学反応もそれぞれで生まれると思いますので、何回もご覧いただくと、スルメのように美味しくなっていくと思います。そして、それに対応する浦井健治と森公美子さんも、おそらく面白くなっていくと思いますので、ぜひぜひ劇場に何度もお越しいただけたらと思います。そして、夏ですね。舞台上はすごく温かい作品ではあると思いますが、『ゴースト』ですから……そういう意味で涼みに来ていただきたいと思います(笑)。
全員:(笑)。
ーー初めてご出演のお二人は、その思いをぜひお届けください。
竹内:私は生演奏でミュージカルやるのも初めてです。しかも、出演者の皆様は私がずっと舞台で一方的に観させていただいて、「すごいな! こんな人になりたいな!」と思ってきてた方ばかりなので、その皆さんとご一緒できる私のテンションの上がり具合も観ていただきたいです。そして、同じ脚本ではあるけれど、毎公演なぞるつもりは皆さんないと思います。毎公演ちょっと違ったストーリーのニュアンスが生まれることが舞台の醍醐味だと思うので、ぜひそこも合わせて楽しみに観ていただきたいと思います。あとは、私のグランドミュージカルデビュー作はこの世で一つだけ、この作品だけですので……
浦井・星風:観る観る!
竹内:ぜひいらして、観て、私が今後どうやって生きていくのかも、ドキュメンタリーでどうぞ(笑)。観にいらしてください!
星風:初演再演をご覧になった方は、ストーリーを知ってるからこそ違う発見も絶対にありますし、そういった意味で違う見方もできるかと思います。お話が本当に素晴らしいので、絶対に楽しんでいただける自信があります。そして、夢ちゃんも言っていましたが、今のこの瞬間を切り取ったキャッチボールは、今この時にしか生まれない化学反応なので、ぜひいろんなパターンを観に来ていただけたら幸せです。ぜひお待ちしています。
取材・文:岩村美佳
