2024年と2025年に韓国の演劇・ミュージカルの中心地、大学路(テハンノ)を熱狂と涙で埋め尽くした話題作、“永遠のグラムロック・ミュージカル”『ETERNITY』の日本初演がいよいよ上演される。1960年代の伝説的なグラムロックスター「ブルードット」と現代でグラムロッカーを夢見る孤独なシンガー「カイパー」。そして交わるはずがない二つの世界をつなぐ神秘的な存在「マーマー」。たった一枚のレコードが、時を超えて二人を繋ぐ――。ブルードットをダブルキャストで演じる、小池徹平に話を聞いた。
リーダー(河原)と再び一緒に作る新しい作品が楽しみ
ーー今回のミュージカルのテーマになっているグラムロックですが、これまで聴いたりされていましたか。
昔からよく聴いていていました。今作の演出の河原(雅彦)さんと以前ご一緒した『ロッキー・ホラー・ショー』の時期も、河原さんがめちゃくちゃグラムロックを聴いていたので、さらに影響されて楽屋などでずっと聴いていました。普通のロックの激しさよりも、体の中が熱くなってくるようなイメージというか。ロックは幅も広く、BGMにもぴったりで、本番前などに気持ちをたぎらす音にもちょうどいいなという感じがします。
ーー河原さんと作品についてお話しした時はどんな印象でしたか。
今年の1月の頭に、韓国で再演が上演されていたので、河原さんと一緒に拝見させていただいたんですが、ミュージカルとはいえ、どちらかというとライブのような作品でもあったので、新たなチャレンジになりそうだなと。今回リーダー(河原)が声をかけてくださったので、もちろんどういう作品でも一緒にやりたい思いがありました。
ーー韓国でご覧になった作品の印象はいかがですか。
海外での観劇は初めてでしたが、言葉がわからなくても面白いですし、現地のレポートを兼ねて行ったので、役者さんにお会いする機会があったのですが、近い年代の役者さんも多くて、この歳でも全然大丈夫なんだなと自信になりました。リハーサルからものすごいパワフルで、熱量が大事なんだなと。その日のライブ感というか、その日のお客さんのノリも大事にしていて、ステージも最高でした。それを体験できたことが、自分にとっては収穫でした。
ーー韓国では、河原さんと一緒に見てどんなことを話したりされましたか。
まだ台本もなかった状態でしたから、どんな感じの作品なのかも分からなかったんです。『ロッキー・ホラー・ショー』ぶりの再会で、ロッキーは結構おふざけというか、むちゃくちゃなミュージカル作品なので(笑)、冗談半分で「またむちゃくちゃやるんですか?」と聞いたら、「いや今回は」と。ご一緒していた時の、いつもと違うリーダーというか、もちろんちゃんとした作品も作っていらっしゃいますが、僕は初めてなので、一緒にできるのがすごく楽しみだなと、韓国でご一緒して改めて思いました。
日本オリジナルバージョンとしてやれるのも楽しみですし、リーダーの好きなグラムロックという音楽が入っていますから。ライブ感が強いところも非常に新たなチャレンジだなと。一緒に作る音楽劇が、リーダーの感覚が反映されるような、日本のオリジナルバージョンになるんだろうなと。リーダーと作る新しい作品が楽しみですね。
かなり新しいジャンルで、作品を観に来てくださっているお客さんが、ブルードットのお客さんにもなったりして、客席も一体感ある演出にしちゃうところもあると思います。お客さんが慣れてきたら、日本版のノリみたいなのが生まれてくるのかなと。そういう部分でも、リーダーがどういう風に演出するのか、すごく楽しみです。
ーー新しいジャンルのミュージカルが生まれることに関して、どんな思いがありますか。
めちゃくちゃ楽しいです。いろんな作品をやらさせていただいていますが、オリジナル作品や、オリジナルキャストとして、務めさせていただくことが多いので、やっぱり大変なんですよ。今ミュージカルのチケットがすごく高いですし、得体の知れないものにお金を出すことに対してのハードルが上がってきているので、どうやって満足していただくか、そのプレッシャーがより一層、ここ数年で上がってきています。今回も、ダブルキャストではありますが、与えられている役割に対してストイックに挑んでいきたいです。パフォーマンスにおいても、芝居部分においても、求められたことには、それ以上のことに応えられる努力をしていこうと思っています。
テンション上がって撮影した派手なビジュアル
ーー印象的なビジュアルになりましたね。
派手ですよね。かっこいい。
ーーアーティスト5人という感じですね。
5人組グループみたいなね。ちょっと小野田君だけ方向性が違いますが(笑)、それがいいなと思ってるんですよ。みんなのタイプが全然違うから。全部の組み合わせが気になってきますよね。僕は初めての共演者の方が多いですが、僕と小西遼生さんは全然違うブルー・ドットが出来上がるんじゃないかと思いますし、カイパーのお二人も全然タイプが違います。
ーーブルードットはカイパーと歌う曲も多いので、組み合わせによって、ハモる音も違うでしょうね。
そうですね。全然違うと思います。ビジュアル撮影はかなり派手な感じでやらせていただきましたが、稽古を経て、衣装や髪型が変わる可能性ももちろんありますが、見た目がきらびやかで華やかなのが重要になってくる舞台だと思うので、かなり注目ポイントかなと思います。
ーーあの扮装をした感覚はいかがでしたか。
これまでいろんな衣装を着すぎて、感覚がちょっと狂って「今回これなんだ」みたいな(笑)。撮影前は、韓国版のような金髪のロン毛だと思っていたんですよ。でも、河原さんの具体的な希望で、韓国に寄せるわけでもなくて、自由なんだなと感じました。ミディアムぐらいの長さで、デビットボーイや、昔のTHE YELLOW MONKEYの吉井(和哉)さんみたいな感じに近かったから、その時点で、日本のオリジナル版を作ろうとしてるんだなと、ノリノリな感じで、ちょっとテンション上がったのを覚えていますね。
普段はアイメイクとかもあまりしないので、マニキュアもしたり、ロックアーティストやビジュアル系の「美」という感じのきらびやかな、妖艶な、ギラギラしたイメージで、かっこよくしていただいたので、すごく楽しい撮影でしたね。
ーービジュアル作りで入り込める感じがしましたか。
やっぱり、見た目はすごく大事ですから。バラを持って撮影したり、黒いガウンや羽根みたいなものを羽織ってみたり、いろんなバージョンを撮りましたね。
ーー本番中のメイクについては考えていますか。
自分でも考えようとも思ってますし、最初はおそらくメイクさんにやっていただくので、リーダーのプランにもよりますが、僕から希望は伝えようと思っています。というのも、韓国でお会いした役者さんから伺いましたが、オープニングは日替わりのメイクで、メイクさんと自分たちで案を出し合って、毎回変えるんだそうです。それをお客さんも楽しみにしていると。そういう遊びもあっていいんだなと知れて、非常に大きな収穫でした。メイクも自由でいいんだなと思うので、いろんなことをやってみようと思っています。
あとは、ステージ上で自分でメイクもするシーンもあるんですよ。あまりない機会ですが、ちゃんとやらなければいけないので、メイクの練習もしなければいけないですね。ブルードットが孤独を感じていて、未来の自分であるカイパーと繋がって、希望を取り戻し、また再生するという場面で、メイクも見せる演出があります。美しくブルードットになっていく様を、じわじわと伝えるのですが、不安もありますね。
強いロックスターであり、壊れやすくて繊細なブルードット
ーーブルードット役について、台本を読んだり、音楽を聴いた、今の印象はいかがですか。
難しい台本だなと思いました。時を越えて音楽に繋がってくるテーマにはファンタジー的な要素もありますし、宇宙へ音楽を残して届けたいというSFチックな要素も入っています。その中で、華やかなグラムロックの世界的スターである、ブルードットの派手なステージの裏に、過去の生い立ちも含めた彼の背負う強烈な孤独感があって、音楽や衣装で身は纏っているけれども、相反するものが強くある役だなと。ロックスターで強く見えるけれど、ものすごく壊れやすくて繊細な印象があります。
音楽が忘れ去られてしまう恐怖や孤独があって、音楽が残ることによって、自分が孤独から救われるような、誰かに忘れ去られたくないというメッセージが込められている。愛を求めているだろうし、どちらかというとロックスターであることよりも大事なのかな、とは思っていますね。
曲を作らなければいけない焦りやチャレンジ、どう終われるかとか、不安みたいなものは、少なからず共感する部分あります。ブルードットの「曲を生まなければいけない」という追い詰められる感じと、僕がアーティスト活動の中で感じた、「やりたいことをやっているけれど追われるようなもどかしい思い」は、近しいところを感じます。
ーーグラムロックというジャンルの曲の印象と、ブルードットが表現する音楽の印象は、何か通じるものがありますか。
どうなんでしょうね。やってみないとわからないですが、この作品に出てくる音楽自体が、そこまでグラムロックに縛られていない感じもして。ブルードットの宇宙に残す音楽へのチャレンジでも、いろんな音楽を試していて、縛られている感じがないかなと思います。
緻密に計算されたさすがのセンスの雪之丞マジック
ーー上演台本・演出は河原さん、訳詞は森雪之丞さんですが、稽古を前にして、楽しみにしていることや期待していること、感じている課題などについて、お聞かせください。
本当に新しいミュージカルになる予感がしています。リーダーが日本バージョンをどう演出されるかによりますが、シンプルなステージになるとは思いますし、舞台上の出演者も少なく、一人ひとりのポジションや、見え方というのは如実に出ますね。韓国バージョンと違って、日本バージョンではダンサーさんを入れようかなという話をされていたので、音楽だけでなく、目でもわかりやすさが飛び出てくるのかなというニュアンスは感じています。そして、元々の歌詞は繰り返しているだけの表現もあるのですが、雪之丞マジックで、よりわかりやすい日本オリジナルバージョンができそうなワクワク感がありますね。
ーー雪之丞さんの歌詞を歌うのは、表現するうえでいかがですか。
贅沢な話ですが、これまでたくさん歌わせていただいています。前回出演したミュージカル『どろんぱ』に続いてになりますが、雪之丞さんの歌詞は言葉が馴染むというか、聴いているお客さんに伝わりやすく考えられて、こういうニュアンスになっているんだろうなと。音に合わせて歌うとハマりもすごくいいですし、伸ばす音やブレスの位置なども意識して作ってくださっていると思うので、めちゃくちゃ歌いやすいです。最終的な訳詞はまだ見ていないですが、言葉を攻めたときの、汚い言葉の表現でも、日本人好みにチョイスされたワードなのかなと感じますし、韻を踏む音も、絶妙に緻密に計算されている感じがするので、さすがのセンスだなと感じています。
ーー今までいろんな作品で、いろんな歌唱方法を開拓されてきたと思いますが、グラムロックを歌う上で、こんな声質にしたいなど考えていますか。
歌のリハーサルで先行している「ETERNITY」という最後の楽曲を、もうちょっとロック感出してみましょうかという話が出てトライしているんですが、まだ慣れてないからなのか違和感があって、本当にこの歌い方でいいんだろうかと。僕はミュージカルでは感情をメインに歌うんですが、今回はアーティストとして楽曲を歌う部分もあるので、その辺の歌い分けが結構難しいなと思っていますね。ロックアーティストとして歌わなければいけない部分に寄せるのは、僕がやるブルードットとして果たして正解なのか。いろいろチャレンジして、適した声が見つかったら、それも使うかもしれないですし、意外とそのままの声がシンプルでいいよねとなるかもしれない。これから探っていこうと思っています。
吉井さんに憧れていた、初めて観た時に一筋の涙
ーーこの物語では、カイパーがブルードットに憧れていますが、小池さん自身は憧れたアーティストはいますか。
それこそTHE YELLOW MONKEYの吉井(和哉)さんは大好きです。ビジュアル撮影が昔の吉井さんを彷彿とさせて、めちゃくちゃテンション上がりましたね。90年代のロックアーティストというか、バンドが大好きだったので、憧れのアーティストたちです。
ーー憧れたときに、リスペクトした上で、あえて触れたくないとか、そういうこだわりはありますか。
めちゃくちゃ悩ましいですが、ライブとかに行きたいけれど、挨拶はちょっとどうしよう……気を使っちゃう……みたいな。同じ業界にいらっしゃるから、会えるといえば会えるじゃないですか。結局、吉井さんには会いたくてしょうがなくて、お会いさせてもらったのがすごく嬉しくて。
ーーなるほど。小池さんの中でギリギリの攻め合いがあるんですね。
ちょっと、どうしよう、なんか恥ずかしい、みたいな(笑)。あがめるからこそ、みたいな感覚がありました。イエモンさんのライブとか、YOSHII LOVINSONとしてのライブに初めて観に行った時とか、大好きな曲を歌った時に、うわぁってなって、その曲終わりで涙が一筋流れて……その時のことはすごく覚えています。かっこよすぎて、忘れられないみたいな。
ーー今は逆に憧れられる側になってきていると思いますがいかがですか。
『どろんぱ』の時は、若手の役者も多かったので、言ってくれる若手はいましたね。
ーーそういう時は、どういうコミュニケーションをとられるんですか。
ちょっと嬉しいけど、「またまた、本当?」って。小っ恥ずかしくて。「ぜひまたご一緒したいです」と、めちゃくちゃ言ってくれたんですよ。そんな年になったか、みたいな(笑)。僕からは「頑張って」としか言えないですが、「またやろうね」って。みんなの言葉が本当だったらいいなと思っています。
ーー今作には、時代が変わっても消えない音楽というテーマもあるかと思いますが、お芝居や歌に、人を救う力があると思いますか?
もちろんめちゃくちゃあると思います。観に来てくださった方の感想や、いろいろな意見をいただきますが、嬉しくなります。特にファンの方が、いろんな作品が見てくださる喜びの言葉には、単純にそこに全てが詰まってるというか、これが見たくて、こういう仕事をやったんだよなって。自分自身がその言葉でまた元気をもらって、ループしていますね。
そして、うちの子供達も観にきてくれるようになったのが、自分の中ではすごく大きくて。観た後にドギマギする感じとか、やっぱり何かしら伝わってるんだろうなと。子供にとっても夢じゃないですが、生ものというか、本物のプロ集団が集まった舞台から、何かしら影響を与えられているというのは、やっぱり仕事冥利に尽きます。今、AIがすごい時代になってきていますが、リアルにそこで起きているものを、自分の目で直接見て感じるという、嘘のない面白さを、舞台からは強く感じますね。
ーー最後に読者の方に、メッセージをお願いします。
本当にライブなので、お金を払っていただく価値があるぐらいに歌いますし、楽曲もめちゃくちゃいいです。ダブルキャストで、組み合わせも楽しんでいただけると思いますし、日本語版で届けられることを楽しみにしてほしいです。とにかく、ミュージカルを観るというよりも、ライブを体感する感じの作品だと思うので、劇場で魂のパワーを浴びに来てほしいですね。
取材・文:岩村美佳
