PARCOプロデュース『プレイハウス』 根本宗子インタビュー

月刊「根本宗子」の主宰であり、女優、脚本家、作詞家、演出家として広く活躍する根本宗子がパルコとの初タッグで書き下ろす舞台「プレイハウス」が8/25(日)~9/1(日) 東京芸術劇場プレイハウスにて上演される。

主演を務めるのは、根本が今一番創作意欲を刺激されるという異色アイドルグループGANG PARADE(通称:ギャンパレ)。4月にメジャーデビューを果たした彼女たちの舞台初出演・初主演作品となる。

どんな作品になるのか、作・演出の根本に話を聞いた。


――なぜ今回、ギャンパレの舞台をつくろうと思われたのですか?

「もともとも私は旧BiS(アイドルグループ)が大好きで、そこからWACK(現在BiSやギャンパレが所属するタレント事務所)のアイドルは全て追いかけています。なので、ギャンパレはグループが誕生したときから見ていて。その歩んできた道というか、持っているドラマ……いろんなこと(※前身グループPOPからの大胆な路線変更や、同事務所所属グループの“BiS”、“BiSH”とのメンバーレンタル、トレード、合宿オーディションなどさまざまな事件が起きた)を経て今の体制になっているっていう、そのストーリーが興味深いグループだと思いました。あと単純に楽曲がすごくカッコよくて好きで。メンバーが作詞している曲とかもありますし、それを使ってミュージカルを作れたらおもしろいんじゃないかというのが最初です。私はWACKのグループの楽曲を全て作っている松隈ケンタさんの大ファンなので、ギャングパレードの楽曲でミュージカルがやってみたいなという気持ちもずっとどこかにありました」


――ギャンパレに感じる魅力とは?

「ものすごいチーム感というか。成長がすさまじかったイメージがあります。ダンスも歌も全員で揃える、みたいな意識がすごく高いグループ。アイドルには“未完成なものを楽しんでいく”という文化があるけど、ギャンパレはパフォーマンスをお客さんにちゃんと全員でみせよう、みたいな意識がすごく高いんだなってことをライブを観た時に思って。それがある人たちは、演劇に対しても取り組み方として“やろう”としてくれるんじゃないかと思いました。今回、振り付けも普段彼女たちが踊っているものとはすべて変わりますし、楽曲アレンジも歌割りも変わります。ギャンパレが普段やっているパフォーマンスじゃないものになるので。その辺は全くいつもとは違うギャンパレをお見せできるのではないかと。」


――歌割りを変えるというのは、ストーリーに楽曲を当てるということでしょうか?

「そうです。ストーリーに楽曲を当てていくので、いつでも10人で歌うわけではないです。まだわからないけど一人で一曲歌う人もいるかもしれない」


――既存の曲でストーリーをつくるのは難しい部分もありますよね。

「そうですね。グループの曲を使ってミュージカルをつくると、作品としては楽しくてもストーリーとしてちょっと無理矢理だろうってなりがちです。でもそれが絶対に起こらないように私はかなりいろんな準備を経てこの公演に至っていますし、ギャンパレはそうならなそうな楽曲を歌っているので。その辺は楽しみにしていただければと思います」


――ちなみにギャンパレ以外のキャストは歌ったり踊ったりされるのでしょうか?

「ギャンパレ以外の役者さんはがっつりお芝居をやってもらいます。」


――ギャンパレを、根本さんとしてどういうふうに見せていきたいですか?

「今回の書き方は、昔の自分に近いです。4、5年前くらいまで、私はものすごく劇団員との距離が近くて。劇団員以外でも私の作品に出る人たちは同世代の女子が多かったので、普段から近況を聞くようにして、もちろん言ってないこともあると思いますが、みんなの状況をよく知っている状態で本を書いていました。だからかなりの当て書きどころじゃない当て書きだったんです。ただ、当て書きと言っても、その人そのもののことを書くこともあれば、役者としてその人を見たときにこういうことをやるのがおもしろいというものもあるし、単純に見た目に当てて書くときもある。昔の自分は、本人たちのことを知って書いてたので総合的にそれをやっていました。今回、ギャンパレはがずっと見てた人たちなので人となりは勝手に知っていることに加えて、久しぶりに作品のためにギャンパレとも磯村さんとも話す機会をつくって、どういう人なのかを知る時間をもうけました」


――かなり当て書きになるということですね。

「ただ、本人たちのことをそのまま書くという意味ではないですけどね。ギャンパレは全員パフォーマーで、なにかやるってことに関してはプロですが、役者が本業の人たちではないので、役が感じているものは本人に近いものにしたほうがやりやすいし、おもしろいことになると思うんです。だからかなり本人たちの話を根掘り葉掘り聞きました」


――その根掘り葉掘り聞いた中で、この歌舞伎町を舞台にしたストーリーが浮かんできたのですか?

「このストーリーは話を聞く前に私が考えました。その中で本人たちの感覚に当て書きするみたいなイメージですね。例えばすごく悲しいことがあったという話を、この作品では失恋の話に置き換える、みたいな。その感情とこれは近いんじゃないか、みたいな作業をしています。群像劇ですが、全部のストーリーをつなぐ役割は磯村(勇斗)さんがやる予定です」


――このストーリーが浮かんだきっかけは?

「ギャンパレは『エンジョイプレイ、みんなの遊び場GANG PARADE』というキャッチフレーズなのですが、『みんなの遊び場』って言うのがすごくいいなと思っていて。ファンの人たちは『遊び人』って言われているんですよ。そのギャンパレを使って作品で“遊び場”を表現するときに、歌舞伎町を舞台にするのはおもしろいなと思いました。一言で『風俗嬢の芝居です』と言うとみんなの頭に思い浮かぶものがあると思うのですが、そういうことじゃなくて、なんでその仕事に就いたのかとか、そこでなにを抱えている人なのかということを書きます。昔、自分が書いていたような“切実な女の子の思い”だったりが、今回ギャンパレの楽曲と共にミュージカルになる、という感じです。人数がたくさんいるグループとお芝居をつくれる機会ってそうそうないので、ちょっと『バーレスク』(’10年に公開されたアメリカのミュージカル映画)っぽい感じのものがやってみたいなっていうところが発想のきっかけです」


――根本さん作・演出でミュージカルは初めてだと思いますが、ミュージカルだからこそできる表現ってあると思われていますか?

「あると思います。台詞なら書くのをやめようと思うことも音楽なら歌えてしまいますから。それは曲の力だし、歌う人の力。例えば私は(ギャンパレメンバーの)ヤママチミキさんの歌声が好きなのですが、芝居の中で彼女がちょっと歌うことで、世界が広がる瞬間があるだろうなと思っています。それはもちろん他のメンバーもですし」


――特に今回はギャンパレの曲をギャンパレが歌うわけですが、だからこそのものもありますか?

「普段から歌ってる楽曲だからこそ、この曲は何を思って歌っているか、みたいなものが既に各々にあると思います。家族のことを思って歌っていることもあるだろうし、メンバーのことを思って歌っていることもあるだろうし、個人的な事情を思って歌っていることもあるだろうし、何も考えずに本当に盛り上げようと思って歌っていることもあるだろうし。そういうベースが既にみんなの中にあるのは、新しい曲を歌ってもらうんじゃない作品ならではかなと思います。みんなの空気感もできあがってますしね。一人メンバーが増えましたけど、まさかの(笑)」


――パルコとは初タッグですが、意識していることはありますか?

「パルコさんってすごく硬派な企画から、エンタメっぽいお祭り感のあるハチャメチャなものまで幅広くやられていて、どれもちゃんとおもしろいっていうイメージを持っているので、自分が呼ばれるときにはどれでくるんだろうと思っていたのですが……お話をいただいたとき、最初に『夏っぽいお祭り感のある感じで』と言われて。やっぱ私、演劇の中のお祭り女だと思われてるなって思いました(笑)。自分発信で思い入れがとても強い企画ですし、本当にやりたいことを実現してもらえたので、お祭りのオーダーには応えつつ、“ただのハチャメチャ”にはならないようにするつもりです」

 

インタビュー・文/中川實穗