日本のミュージックシーンを牽引する作詞家・森雪之丞が、作・作詞・楽曲プロデュースを手掛け、俳優として確かな活躍を続けている岸谷五朗が演出を務める日本発のオリジナルミュージカル「ロカビリー☆ジャック」。アメリカの片田舎で歌うロカビリー・シンガーが、彼を慕う男とともにスターを目指していくというストーリーを、屋良朝幸、海宝直人、昆夏美ら個性あふれるキャストで描いていく。今回は、主人公ジャックを幼いころから慕い、トラック運転手から彼のマネージャーに転身する男・ビルを演じる海宝直人に、作品の魅力について語ってもらった。
――「ロカビリー☆ジャック」へのご出演が決まった時の印象は?
やはり海外からの輸入ものの作品に出演することが多いので、まず日本オリジナルの作品というのは、すごくやりたかったですね。演出の岸谷五朗さんとは初めてご一緒させていただくのですが、ぜひご一緒してみたかったんですよ。森雪之丞さんは、何度か僕の舞台やコンサートにも来てくださっていて、ご挨拶はさせていただいていたんです。なので、僕のやってみたいこと、ご一緒したかった方たちが揃っている作品ですね。
――森雪之丞さんは今作の作・作詞・楽曲プロデュースを手掛けられます。これまで、ミュージカルの訳詞なども数多くされていますが、森さんの詞を歌うのも初めてだそうですね。
そうなんですよ。ご挨拶させていただいただけなのですが、とっても気さくで優しくて、いつもステキな感想をくださるんです。コンサートごとにいろいろな言葉をいただいて、高音がすごくきれいなんだね、と言っていただいたりしました。この作品が決まってからのコンサートにも来てくださったんですが、声が活きるような曲を用意するから、と言っていただけました。
――森雪之丞さんの詞について感じていらっしゃることは?
本当にたくさんの作品を手掛けていらっしゃいますし、個人的にはドラゴンボールの楽曲をよく覚えています。今、仮台本をいただいていて、曲も何曲か届いているんですけど、本当に振り幅というか…アニメーションの世界から今回のようなミュージカル作品まで、幅の広い素敵な詞を書かれるんだなと思いました。――ストーリーについての印象もお聞かせください。
お話はとってもキャッチ―で、難しく考えなくても楽しめる作品になっていると思います。気構えずに、笑って楽しんでもらえる脚本なんじゃないかな。キャラクターも濃ゆいというか、魅力的なキャラクターばかりなので、そういう部分も楽しんで頂けるんじゃないかな。昆夏美ちゃんや平野綾ちゃん、吉野圭吾さんは共演したことがあるんですが、主演の屋良朝幸さんは初めて。みなさんパワフルな印象なので、それに負けないように頑張らないとな、と思います。
――演出の岸谷五朗さんについてはいかがですか?
子どもの時から俳優さんとしてテレビで観ていました。特にハマっていたのが「みにくいアヒルの子」。子供がたくさん出てくるテレビドラマで、教師の役をされていたんです。この間、宣材撮影の時に初めてお会いしたんですが、その時のイメージのままでしたね。僕はちょっと緊張していたんですが、明るくて気さくに話してくださって、この作品がより楽しみになりました。稽古の中で、役者がやりやすいようにいろいろな変更をしていくというお話も聞いているので、きっとあのパワーで引っ張っていってくださるんだろうな、と思っています。海外作品ですと、動きも決められていたりとそういう変更が難しいところもあるんですが、やはり日本発の新作ということでそこも楽しみですね。
――今回のミュージカルではロカビリー音楽が大きなポイントになるかと思いますが、ロカビリー音楽はご存知でしたか?
正直、何がロカビリーか、というところまでは理解できていなくて、もしかしたら、聴いたことがある音楽もロカビリーだったのかも…というくらい。でも、(エルヴィス・)プレスリーの時代とか、古いアメリカ音楽自体は好きなので、けっこうはまっていくんじゃないかなと言う気がしています。
――キービジュアルの写真もそういう時代を彷彿とさせるスタイルのお写真ですね。
みんな個性的な髪型をしているので、世界観が出来上がってきた感じはありましたね。どういう空気感でどういう方向性になるのかが見えてきた気がしました。
――役どころについてもお聞きしたいと思います。
主人公のジャックに本当に献身的な愛を抱いていて、子どものときからジャックの歌を子守唄に育ち、いろいろな悪いこと…たばこの吸い方もジャックに教わってきた青年です。一途にジャックの成功を信じていて、その想いがとても強い男ですね。素晴らしい才能に出会った時の感動やそれを信じる力、という部分はすごく共感できます。“これがとっても素晴らしい”“これはもっと売れるべきなんだ”というような気持ちは、すごく分かるな。そういう気持ちって、人に伝えるだけじゃなくて…例えば音楽に対してとかも、そこを目指したいんだ、というモチベーションにもなりますね。
――やはり、海宝さん自身もそういうものがモチベーションになる?
なりますね。進むべき道が見えたときというか。先日、ロンドンとドイツに行ってきたんですが、やっぱり素晴らしいものに触れたとき、演劇に対して、歌に対して目指すところの向かっているベクトルはこれでいいんだというものが明確になっていくことは原動力になりますね。
――稽古前に役は固めていくタイプ?
あんまり稽古前にガチガチに固めないようにしようと思うようになりました。以前は、できるだけこういう感じにして…とか考えていたんですけど。でも最近は、演出家さんや周りのキャストの方と現場で組み立てていけたらな、と。もちろん、セリフとかはきっちり入れて、しっかり動けるようにして稽古に入りたいと思います。――お仕事のモチベーションを上げるために、プライベートの時間の過ごし方にこだわりはありますか?
そうですね…特に意識していないかもしれません。オンとオフを切り替えるような感じもあまりなくて、プライベートでもよく歌ってます(笑)。自然と歌ったり、お休みの時でも“あそこの音取りしたいな”と思ってやったり。でも、作品や役柄にもよりますね。すごく重い作品の時は、ずっと作品が入ってきたりします。
――今、何曲かお手元に届いている状況とお聞きました。楽曲についてはどのような感想を持たれましたか?
いわゆる今までのミュージカル楽曲とはまったく違うんです。ポップスやロック、ジャズのニュアンスというのが色濃くて、ここにお芝居が入ってきたときにどう表現していくか。音楽がすごくカッコいいので、ミュージシャン的なアプローチもしっかりしていった方がすごく素敵になるんじゃないかという感じもある。今までのミュージカル楽曲とは違う、プラスアルファのアプローチがあるんじゃないかな。シンガーとしてのアプローチというか。そのバランスを演出の岸谷さんとお話しながら作っていきたいなと思っています。
――バンドのボーカルとしても活動されていますが、ミュージカルの時とで歌い方など、変わる部分などもあるんでしょうか
明確に自分自身の中で分けているわけではないんですけど、役を背負って歌うことと、自分自身として歌うことで、自然と変わってくるんじゃないかな。世界観を表現するという意味では同じなんですけど、バランスは変わってくる感じです。――ミュージカルの時の歌の場合、どのようにアプローチしている?
いかに歌わないか、ですね。普段のミュージカルではそこが大きな課題ですね。美しい楽曲、壮大な楽曲、歌い上げるような楽曲とミュージカルの中にはいろいろな楽曲があって、その音楽に乗っていくことももちろん大事なことですけど、そっちにガーッといってしまうのではなくて。演劇というお芝居なので、いかにその歌をセリフとして伝えるか。自分が気持ちよくなって歌ってしまうのではなく、歌を語っていく、というのは普段のミュージカルですごく大事にしています。でも…今回は、今いただいている楽曲の印象だと、それだけじゃなく、音楽そのもののカッコよさも伝えていきたい感じなんですよね。新しいアプローチを見つけられたらな、と思うので、シンガーとして活動している部分も活かせたらいいですね。
――最後に、今回のミュージカルを楽しみにしている方々にメッセージをお願いします!
森雪之丞さんによる、日本で作られたオリジナルミュージカルで、斉藤和義さんやさかいゆうさんといったアーティストの方がミュージカル音楽を作るという部分も、すごくセンセーショナルなこと。今までにないテイストのミュージカルになる予感がしています。笑いあり、ちょっとホロッとするところもあり、楽しんで頂ける作品にしますので、是非劇場に遊びに来ていただけたらと思います!
取材・文/宮崎新之
ヘアメイク:AKANE