阿部サダヲや宮藤官九郎らを輩出した“大人計画”の主宰、松尾スズキ演出によるミュージカル『キレイ-神様と待ち合わせした女-』。今回で4度目の上演となる本作が、2020年1月、いよいよ福岡・博多座に初登場!2000年にシアターコクーンとの共同プロジェクトとして松尾自身が初めて手がけた“ミュージカル”である本作を、故郷で初めて上演するにあたり「非常に楽しみでどんな風に観られるかドキドキしている」という松尾スズキ。そんな彼による地元・福岡での合同取材会の模様をお届けする!
― まずはふるさと、福岡への思いを聞かせてください!
「博多は大学生のころ、よく遊んでいました。街ではアマチュア時代に芝居とかもやってたんですけど、いい年になって大きいカンパニーで演れるっていうことはあまり予測してませんでした。今回はけっこう大所帯で来ますすので。僕は出演しない(今回は演出のみ)ので博多の街を満喫しようと。いい飲み屋あったら教えてください。そういう感じです」(会場笑)
― 『キレイ-神様と待ち合わせした女―』は再々々演です。今回4度目の上演で、福岡初登場となります。どんな舞台になりそうですか?
「初演は30代後半のころでした。初めてシアターコクーンという大きな劇場に進出するということで、パンク魂というか、ミュージカルの概念をぶっ壊してやろうというような、そういう思いで臨みました。ミュージカルが初めての音楽家に頼み、舞台装置も漫画家の方に頼んで結構攻めたことをやったんですよね。ミュージカルのことを知らないまま、大きなところに突っ込んでいこうというエネルギーでやってきました。でも回を重ねるごとに、ミュージカルを本職にしている人たちとの付き合いも増えて、この世界も深いなという思いがだんだん強くなってきたんです。そうなると自分が未熟なままミュージカルシーンに入っていったというのが気になり始めて、どんどん無駄をそいでいきました。そして、ミュージカル的な要素っていうのを、いわゆる輸入もののミュージカルではないアプローチの仕方で深めていって、どんどんさらに進化した形になってきました。今回も音楽的に充実した舞台になると思います」
― 民族紛争あり、監禁ありのさまざまな要素が詰まったディストピア戯曲です。とても興味深いのですが、どういったところから着想を得たのですか?
「覚えてないです(笑)。初演は20年ほど前のことなので・・・。でも、それまで培ってきた芝居から現れたモチーフがあったり、また大きい劇場で演るということで、何かスペクタクルな演出をしたい、それには“戦争”だろう!というものはあったと思います。ちょうど内戦みたいなものが活発化していた時期だと思うんですけど、そこからひとつの国のなかで三国が争っているみたいな発想になったのではないか・・・ということはいえます」
― 今回もキャスティングが興味深いです。主演の生田絵梨花さん、神木隆之介さんなどに関して一言いただけますか?
「今までの『キレイ』よりもミュージカル経験のある人がキャスティングされていると思います。生田絵梨花さんに関しては、彼女が出ていた『レ・ミゼラブル』を観て、非常に手垢のついてない演技をする方だなと。歌声も素晴らしくて美しいと思って、出てください・・・とお願いしました。生田さんも『キレイ』を観たことがあったみたいで、とんとん拍子にお話が進みました。神木くんは前から注目してました。初舞台ということになるのですが、彼のやる役に彼のコンディションが合致しているんじゃないかと思っています。この間、シアターコクーンの芸術監督というのに僕はなったんですけど、就任式に神木くんが自分の歌を歌ってくれて。非常に上手でね。こりゃめっけもんだったなと(笑)」
― そもそも松尾さんがミュージカルをやってみようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。そのときの気持ちを教えてください。
「シアターコクーンが、渋谷のど真ん中にある劇場で、にぎやかな街の中心みたいなところなので、大人計画のメンバーとそういうのに見合った、音楽があるものにしたいなと思いました」
― 4度目の上演となりましたが、この『キレイ』は松尾さんのキャリアのなかで、どういう位置づけになっていますか?
「これだけ何回も演るということは(本作に)何かあるんだろうなと思います。それまではカルト的な人気といわれてきた大人計画ですけれど、『キレイ』を演ったぐらいから、チケットが即完するようになって。だいぶ眺めが変わりました。僕や大人計画に関していえば、そういう作品だといえますね」
― 伊藤ヨタロウさんの音楽も素敵です。伊藤さんを指名された理由は?
「つきあいが長かったものですから、意思の疎通がしやすいかなと思いました。芝居の無国籍感も(彼に)合うんじゃないかなということで相談しました。音楽でいうとオープニングの『ケガレのテーマ』は名曲だなと思っています。日本発のミュージカルの、スタンダードナンバーになっていくんじゃないかなという気がしています」
― 最後に意気込みを聞かせてください!
「うちの俳優たちもきっと博多が大好きで、少しテンションが上がると思います。これまでは小さな規模のお芝居しか博多にはもってこれていないので、松尾も今回のような派手で大規模なスペクタクル演出ができるんだということを感じていただけれたらと思います。こういう大きな芝居をやる機会はなかなかありません。ぜひ来てください」
ローチケでは東京・福岡公演分は既に完売となっている本作。最終公演地となる大阪公演分では、残りわずかながら一部の公演回では販売中のお席の取扱いも有り!東京・福岡のチケットを逃した方は、大阪公演に出かけてみては?
松尾スズキが満を持してお届けする本作はぜひ劇場にてご体感ください。
取材・文:山本陽子
取材・写真:ローチケ演劇部(シ)
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