ローチケ演劇部presents はじめてのミュージカル「今月のあの人の“今キニナル”」第14回:松尾スズキ

――4度目の再演が決まった『キレイ-神様と待ち合わせした女-』(12月東京・2020年1月福岡・大阪にて上演)は、松尾スズキさんが初めて挑戦したミュージカルです。松尾さんが生まれて初めてご覧になったミュージカル作品は何だったのでしょうか?

松尾「なんだろう・・・『キャッツ』かな?東京で観ました」


――そのときの印象はどうでしたか?

松尾「初心者だったので、その時はついていけなかった感じがありました。初めてでしたし、座った席の関係なのか、僕には歌詞がうまく聴き取れなくて・・・。そのときから歌詞が聴き取りやすいミュージカルを心がけています」


――では、これから初めて見るという方にオススメするミュージカルは?

松尾「何か作品をオススメしても、今後それが上演されるかもわからないですものね(笑)。う~ん・・・。だから、映画などで復習できるものがいいんじゃないですかね。(以前演出を手がけたことがある)『キャバレー』は映画と舞台版が違うのであれですけど、例えば『シカゴ』や劇団四季さんでよく上演される作品とか。予習復習ができるのがいちばん楽しめるのかも知れません」


――ミュージカルは食わず嫌い、苦手かも・・・という方って、まだいらっしゃると思うんですけど、その点はいかがですか?

松尾「(その方々の理由はわかりませんが)僕は外国の演出をただ受け継いでいるだけ…みたいなミュージカルはもったいないとは思うんですよね。やはり日本人なので、日本人がやる意義っていうのをちゃんと明確にしていないと・・・とは思っています。日本人の体で作品化しているものがいいと思います」

――松尾さん主宰の『大人計画』の作品は、喜劇というか笑える要素がたくさん詰まっていますが、幼少時代に何か影響を受けたものってありますか?

松尾「笑えるものは大好きだったので、いろんな漫画や芸人さんを見て触発をされました。小説もそうですね。小説では、筒井康隆さんの作品とか大好きです。ブラックユーモアのあるものが大好きですね。今回の『キレイ』でも、その点は盛り込まれていますよ」


――『キレイ』という作品を何度か送り出しているうちに、関係の方々のお付き合いも増えて、ミュージカル世界の奥深さもだんだんわかるようになってきた、とおっしゃっていました。そんな松尾さんから、ミュージカルの魅力を一言お願いします。

松尾「歌と踊りが入って、リッチな気分になれる・・・みたいなところですよね。目と耳が豊かになるというか、そこにいる時間がすごく豊かになる気がします」


――『キレイ』では、出演もされているミュージシャンの伊藤ヨタロウさんと松尾さん手がけられた、楽曲も素敵です。

松尾「オープニングのケガレのテーマは名曲だなと思っていて。日本発のミュージカルの、スタンダードナンバーになっていくんじゃないかという気がしています。僕は台詞にも詩の要素を織り込んだりしますが、今回も一文一文に深い意味合いがある詩のようになっていますね。その上で今回の再再再演をもっと音楽性を豊かにして、言葉が届くミュージカルにしたいと思いますね」

 

そう静かに語ってくれた松尾スズキさん。今回、決して自らオススメとは言われなかったが、“日本発”のミュージカル創りへの思いが詰まった松尾さん演出によるミュージカル『キレイ-神様と待ち合わせ した女―』。この作品で「はじめて観たミュージカル作品はキレイでした!」という人がたくさん生まれることも、そう遠い話ではなさそうだ。

 

取材・文:山本陽子

 

■松尾スズキ

1962年12月15日生まれ、福岡県出身。俳優、演出家、脚本家、作家。『大人計画』主宰。1997年、『ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~』で第41回岸田國士戯曲賞を受賞。2001年、第38回ゴールデンアロー賞演劇賞を受賞。2004年、初の長編映画監督作『恋の門』がヴェネツィア国際映画祭に正式出品。2006年、小説『クワイエットルームにようこそ』が第134回芥川賞候補に選ばれ、2007年に自身が監督・脚本を務め映画化。2008年、脚本を担当した映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』で第31回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。

 

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