ミュージカル『(愛おしき)ボクの時代』稽古場レポート

11月上旬、都内某所の稽古場にて、11月15日(金)から開幕するミュージカル「(愛おしき)ボクの時代」の稽古場にお邪魔してきた。

脚本・演出:西川大貴、音楽:桑原あい、振付:加賀谷一肇と豪華なメンバーによって作られる日本発のオリジナルミュージカルということで、注目を集める本作。出演者もフルオーディションにより決定していたり、「スウィング制度」(公演ぺージ参照)を導入していたりと、新たな挑戦を続ける意欲作である。

 

物語は、とある童話を彷彿とさせる、日常と非日常が融合した不可思議な世界でのお話。

さて、この日行われていたのは物語の中盤。風間由次郎演じる青年・戸越が、一風変わった仲間たち、サルや武士、なまはげと、旅を進める一場面。

 

同じ場面を何度も繰り返しては、こうしてみてもいいですか、と出演者たちも自主的に考えながら最良を探していく。西川と相談しながら、出演者たちと意見を交わしあいながら、回を重ねるごとに都度変わっていく彼らの動き。

これだ!というものにたどり着いたときに見せた西川の笑顔は、本当にこの作品を愛しているのだなあということを実感させる笑顔であった。

実は私、この作品のオーディション会場に潜入しその現場を見学していた。いくつかのグループに分けられた団体の中で指定されたダンスや歌、演技が披露されていくのだが、その時に西川が何度も参加者に伝えていたのは、「自分の思う表現を。指定されたダンスができなくても、代わりに自分がやりたいように表現して」ということ。オーディションの段階から、みんなで作ること、その人の良さを引き出すことをブレずに追い求めている姿には尊敬の念を覚える。長い稽古時間を通してその想いに触れてきた出演者たちもまた、自分のできることを観客に最大限に伝えようという熱意が感じられる。

 

そんなオーディションを経て選ばれた今回の出演者たちだが、休憩時間にはお互いにダンスを教えあう場面も。大所帯ながらも全体で仲良く、和気あいあいと互いを高めあう良い雰囲気の稽古場であった。

 

そしてスーパーバイジング・ディレクターを務める演出家のダレン・ヤップ氏もこの日来日し、アドバイス。真剣だが温かなまなざしで西川やキャストたちを見守るダレンとの稽古は、終始和やかな雰囲気で包まれていた。

そんな熱意と笑顔の中で稽古は進んだが、その後訪れるダンスシーンは、さらに圧倒される気迫に満ちていた。押し寄せるある生き物たちの群舞で繰り広げられる華麗なステップ!キレのいいダンス!翻弄される旅の仲間たち!

文章に書いているだけでは一切伝わらないだろうから、もういっそ伝えるのは諦めようではないか。代わりに、その正体を是非劇場に足を運んでその目で確認して欲しいのである。

 

不思議な世界観がたっぷりのミュージカル。ファンタジックでコミカルな世界観の中で、日本の若者が知恵を結集し、ミュージカルを愛して作った作品。これは、こうして舞台に興味を持っている、この記事を読んでいる、私たちの為に作られたミュージカル。

海外ミュージカルの日本語上演が多い昨今のミュージカルのなかに一石を投じる作品になることだろう。

 

日頃からよく大きな劇場で観劇を楽しんでいらっしゃる皆様も、「なんだかその大げさな感じが苦手だわ」とか、「急に歌いだすのに苦手意識がある」などというミュージカル苦手層の皆様も、また新たなジャンルとして、本作をご覧いただければと思う。

 

11月15日(金)から12月15日(日)まで東京・渋谷 DDD青山クロスシアターで上演。プレビュー公演はかなりお得に作品を楽しめる価格設定。1stプレビュー、2ndプレビュー、本公演と3度にわたって、公演期間中も進化していく作品を楽しむことができるだろう。