ミュージカル『ジキル&ハイド』 石丸幹二 インタビュー

悪役の面白さを知った今、再び挑む
人間の“善”と“悪”を描いた衝撃作

 

石丸幹二の「ジキル&ハイド」が4年ぶりに帰ってくる! 日本初演から15年、再演を重ねてきたブロードウェイ・ミュージカルの傑作。そのタイトルロールに初めて挑んだ前回を、石丸は次のように振り返る。

石丸「初演からこの役を演じてこられた鹿賀丈史さんからバトンを引き継ぎ、また作品のファンの方も多いなかで、自分が演じる意味を考えた公演でした。なんとか私なりの役作りができたかなと思っています。ブロードウェイの初演も観ていますが、演じてみて分かったのは、とにかく体力が必要な役だということ。主人公がほぼ出ずっぱりでいろいろなナンバーを歌い上げていくので、フルパワーでないと乗り切れない。だからこそ観ているとコンサートのような心地良さがありますし、それがこの作品が愛される理由のひとつだと思います」

 

19世紀のロンドン。人間のなかの“善”と“悪”を分離する薬を完成させるため、自ら実験台となった医師ジキルは、次第に“悪の塊”ハイドと化していく。

石丸「ミュージカルはファンタジックな物語が多いですが、これは人間臭くてハードボイルドな作品。そこに惹かれますし、父親を病から救いたいという使命感から、研究に突き進むジキルに共感します。ただ、彼は一歩行きすぎて、苦悩するわけですが」

 

善と悪の間を行き来する役を演じるにあたり、大切にしていることとは?

石丸「前回も、僕はジキルをあまりいい人として作ってはいないんですね。ジキルが“善”でハイドが“悪”だと単純に割り切るのではなく、ジキルのなかにハイドの要素がもともとあったのだという部分は、今回も大事にしていくつもりです」

 

ちなみに、いつも穏やかでジェントルマンといった印象の石丸のなかに、二面性はあるのだろうか。

石丸「以前は、車を運転すると別人になったりしたんですけれど、最近は、自分でセーブをかけられるようになりました。ハイドになろうとすると、ジキルが出てくる感じでしょうか(笑)。新たな一面といえば、近頃、子どもたちや動物たちを見るとすごくいとおしさを感じるんです。前を通りがかった猫に勝手に思いを添わせたりとか。それは今までなかった感情なので、ちょっと面白がっていますね」

 

石丸自身はこの4年、映像で憎まれ役や敵役を演じる機会が多かった。

石丸「音楽のフランク・ワイルドホーンいわく『この作品にはジキルとハイドともうひとり、ハイドの存在を知ったジキルがいるんだ』と。その言葉は、悪役の面白さを知った今の私に重なりますし、いろいろな役を経たことは、確実に引き出しになっているので。それがどう出てくるかを楽しみに、大事にしながら演じていこうと思います」

 

インタビュー・文/宇田夏苗
構成/月刊ローソンチケット編集部 12月15日号より転載

 

【プロフィール】

石丸幹二

■イシマル カンジ ’65年、愛媛県出身。劇団四季を経て映像、舞台、音楽、CMなどで活躍中。最近の出演作に音楽劇「ライムライト」、映画「ギャラクシー街道」など。’16年1月2日[土]、新春時代劇「信長燃ゆ」(テレビ東京系)に出演。