ミュージカル『モダン・ミリー』(演出・翻訳:小林香)が、2020年4月に東京のシアター・クリエほか全国で上演されます。
本作は、1967年公開の同名ミュージカル映画が原作で、1920年代のニューヨークを舞台に、モダンガールに憧れて田舎から出てきた主人公・ミリーの奮闘を描く物語。2000年に初演されたブロードウエイ・ミュージカル版は、映画から楽曲をほぼ一新し、トニー賞作品賞など5部門を受賞した人気作です。そんな本作で主人公・ミリーを演じる朝夏まなとさん、ミリーに惹かれていくジミーを演じる中河内雅貴さんにお話をうかがいました。
――おふたりは今日が初対面だそうですが、すでに和やかですね。
中河内「いい感じです!」
朝夏「(笑)」
中河内「自分では波長が合うのではないかな?と思ってます。」
朝夏「私も思ってます!」
中河内「(朝夏は)スターさんなので少し緊張していたのですが、思いのほか……」
朝夏「あはは!」
中河内「とても話しやすい方でした。多分、お酒を飲んだら一発で仲良くなれそうな感じがしてます。」
朝夏「そうだね!」
――『モダン・ミリー』が動き出して、今はどんな気持ちでいらっしゃいますか?
朝夏「やっと始動したなって気持ちです。出演が決まったときも、映画もとても面白いし可愛いしワクワクしていたのですが、今はさらに楽しみになっています。」
中河内「僕は久しぶりにハッピーなミュージカルに立てるんですよ。だからすっっっごく楽しみにしていました!!」
朝夏「(笑)」
中河内「死ななくていい作品が久々ですからね(笑)。過去の出演作の中でもナンバーワンのハッピーミュージカルだと思いますし、もうすっっっごく楽しみです!」
――(笑)。ジュリー・アンドリュースがミリーを演じた映画(‘67年公開)はいかがでしたか?
朝夏「とてもチャーミングでした。ジュリー・アンドリュースがとにかく魅力的で。ミリーがどんどんあか抜けていく冒頭のシーンが素敵でしたね。私自身が佐賀出身なので、ミリーの気持ちがすごくわかるんですよ。」
中河内「僕はこの時代のヘアスタイルやファッションが好きなので、そういう楽しさも感じました。この作品のチラシで皆さんが着ている衣裳も、オールドな感じがかわいいですよね。ストーリー以外にもいろんな楽しみがある作品になりそうだなと思っています。」
――ご自身の役柄はどうでしたか?
朝夏「ミリーは、田舎から出てきて都会に夢を見ている女性で、私はそこに共感しています。玉の輿を狙っているところはちょっと違いますけどね。でもこの際狙おうかな(笑)。」
中河内「たくさん来ちゃうから、気を付けてください!」
朝夏「(笑)。ミリーちゃん、面白いですよね。すごく素直だし、その場で起きたことを全部そうだと思い込んでしまうという、純粋でかわいい子だなと思っています。タイピストという仕事をきっちりこなしながら「玉の輿に乗りたい」と思って生きているのですが、そういうところからも生きるエネルギーって出てくると思うから。私自身が舞台に立つときの熱量ともかぶってくるんじゃないかなと思います。」
中河内「僕が演じるジミーは、作品資料に「いかにも都会の遊び人風だが」……もう一度言いますね。「いかにも都会の遊び人風“だが”」!」
朝夏「(笑)」
中河内「「実は真面目で誠実な」……俺!(※実際は「若者」と書いてあります)」
二人 「(笑)」
中河内「まさしくなんですよ。こう見えて真面目に生きてきた人物なので(笑)。ピッタリだと思っています。ただ、ジミーにはある秘密があるので、そこの見せ方を探りながらつくっていきたいです。」
――秘密は見え隠れするんですか?
中河内「そこを見え隠れさせるのかさせないかは、役者と演出家のジャッジメントで。稽古していくうちにどうなるかはわからない。いかようにもできそうな役です。」
――今回の舞台はキャストも個性豊かですね。
中河内「初めましての方もいらっしゃいますが、きっと楽しく真面目につくっていけるんだろうなと思うメンバーです。まぁちゃん(朝夏)との初共演は本当に楽しみです。」
――「まぁちゃん」と呼んでいるんですか。
二人「 (笑)」
中河内「30分前から呼んでます(笑)。言いながらドキドキしてますよ。」
朝夏「(笑)。私は「まぁくん」と呼ぶことになりました。“ダブルまぁ”です!」
中河内「保坂知寿さんと久しぶりに共演できるのも楽しみ。アンサンブルのメンバーも知っている方が多くて、アグレッシブに歌、ダンス、芝居に臨みそうな方が揃っています。楽しみなことだらけです。」
朝夏「私もまぁくんと今日お会いして、いける!と思いましたし、一路(真輝)さんも『オン・ユア・フィート!』(18年)で母娘役だったので、今度はまた全く違う役柄でご一緒できることが楽しみです。廣瀬(友祐)さんは初めましてなのですが……ふふっ。」
――なにかありましたか?(笑)
朝夏「チラシ撮影で初めてお会いしたときに、「私は“まぁちゃん”と呼ばれています。呼んでくださいね」とお伝えしたら、「徐々に」って(笑)。」
中河内「あはは!」
朝夏「玉の輿に乗りたいお相手(会社社長グレイドン役)なので、これからどんな感じになっていくのかすごく楽しみです。保坂さんは個人的に舞台で拝見していて、いつかご一緒してみたい女優さんだったので今回、嬉しかったです。」
――どうして共演してみたかったのですか?
朝夏「舞台を拝見してとても魅力的な方で、いろんな役を演じられていますし、それが全て違う人に見える。素敵だなっていつも思っています。今回、ミリーにとっては道を示してくれるような存在(世界的歌手マジ―役)なので、私の保坂さんへの憧れの気持ちがそのまま出せるんじゃないかなと思っています。」
――親友ドロシー役の実咲凜音さんとは宝塚ではトップコンビでしたね。
朝夏「実咲さんとこんなカタチで共演するとは思ってもいなかったです(笑)。」
――そうなんですか?
朝夏「はい、さすがに女優になってからも一緒に出られるなんて。でもよく知っている間柄ですから!」
――それは安心になるのではないでしょうか。
朝夏「そうですね。安心な面もあるし、観てくださる方に昔がよぎらないようにしなきゃって。ちゃんと女同士の親友に見えないといけないなと思います。でも普段の私たちがそんな感じなので。」――演出の小林香さんとは、朝夏さんは『Little Women -若草物語-』(19年)、中河内さんは『ロコへのバラード』(11年)ぶりですね。
朝夏「香さんはその作品の世界観をとても素敵に表現されるので、今回も楽しみです。『Little Women -若草物語-』のときも、時代のイメージにすごくこだわっていらっしゃったんですよ。今回も20年代のファッションや最先端のものもたくさん出てくるだろうな。」
――『Little Women -若草物語-』で印象的だったことはなんですか?
朝夏「深いところまで見られる方なんだなという印象があります。紆余曲折のある濃い半生が描かれる役でしたが、わたし自身がつくってきたよりも、さらに深いところで繋いでくださるんですよ。いろんなヒントをくださいましたし、それがとても勉強になりました。こちらの話も聞いてくださいますし、こだわりもあるけど柔軟という、すごく素敵な方です。今回は香さんがコメディをどう演出されるのか、今から楽しみにしています。」
――中河内さんは小林さんとは9年ぶりになりますね。
中河内「だからこその楽しみがありますね。香さんもここまでいろんな葛藤や苦労も経験してこられたでしょうし、僕自身もいろんな舞台に立って、いろんな役をやらせてもらってきたので、またこうしてご一緒できるのが嬉しい。「あの頃から成長したね」と言われたいです。」
――当時からの変化で、小林さんに「ここは絶対に見せたい」というところはありますか?
中河内「昔は“自分、自分”だったんですよ。でも今は“役、作品、関わる方々、カンパニー”。お客さんの前に出るうえでは、そこが絶対に大事なので。だから、周りのことを考えるようになりました。昔は目立ってなんぼ、みたいな精神だったのですが、それは一切なくなったと思います。大人になったその変化はお見せしたいですね。」――最後の質問になりますが、この作品には「すべての出会いが明日を変える!」というキャッチフレーズがついています。おふたりの印象的な出会いについて教えていただければと思います。
朝夏「まさに「すべての出会い」ですよね。ただ特に、宝塚歌劇団を卒業してからの出会いは、人と人との繋がりとか縁とか運命ということを、より感じるようになりました。」
――それはどうしてですか?
朝夏「自分自身、女優としてこんなにお仕事をさせて頂ける、とは思っていなかったといいますか、卒業をするときには未来が想像できてなかったんですね。でもそこから、いろんな方に引っ張っていただいたり、役や作品を与えていただいて、今がある。自分が望むだけでは絶対にできないことがあると思うから、とてもありがたいことだなと思っています。」
――ただ、朝夏さんご自身にも何かがないと、出会いがあっても結びつかない気がします。
朝夏「私は自分に与えられたことには必ず“プラスα”で返したいと思っています。真面目にやるのは当たり前で、それに何かプラスαをして返したい。「この人とまた仕事がしたいな」と思ってもらえたらと、いつも思っています。」
――中河内さんはいかがですか?
中河内「僕も「すべての出会い」なんですけど、敢えて言うなら、生んでくれた親との出会い。親にはすごく感謝しています。芸能の世界の人ではないですが、僕が「やりたい」ということを受け止めて、応援してくれて、動いてくれた。面と向かっては絶対に言えないのですけど、感謝していますね。」
――特に心に残っていることはありますか?
中河内「「周りには感謝しなさいよ」といつも言われていました。やっぱり、周りの方の力がないとどこにもいけませんから。だから、誠意を持って、感謝をしなさいと言われていました。あと、15歳の時に生まれ育った広島から(ダンスのために)長野に旅立つときに、「やるからにはちゃんとやりきりなさい」と言われたのも覚えています。そして「人よりも早くがんばりなさい」って。つまり、人より何倍も努力しろということなのですが、それは特に覚えていますね。」
――素敵なお話をありがとうございました。開幕を楽しみにしています。
インタビュー・文/中川實穂
朝夏/ヘアメイク:タナベコウタ スタイリング:加藤万紀子
中河内/ヘアメイク:前田美沙子