左:柿澤勇人 右:浦井健治
ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』の日本キャスト版Season3。観客席が360度回転するこの特殊な劇場に合わせたここでしか見られない演出版のファイナルシーズンで、トニーを演じるのは浦井健治と柿澤勇人。この不朽の名作に初めて挑む二人に、作品への想いや意気込みを語ってもらった。
「若い頃に憧れていたような青春を再体験できるのが楽しみ」(柿澤)
浦井「この作品は世界各国で上演されている名作で、日本でも諸先輩方が関わって来られた歴史あるミュージカル。それを今回は客席が360度回転する劇場で、令和時代を生きる我々が熱を注ぎ込むわけです。ぜひとも人としての葛藤や、争いの虚しさといった、この演目に流れるメッセージをお客様にしっかり伝えていきたい。また今、上演することは現在の日本の情勢においてもすごく意義のあることだと思いますね」
柿澤「僕が以前在籍していた劇団四季でもやっていた作品なんですが、残念ながら僕自身は在籍中に携わることはできなかったんです。でもミュージカルをやっている身としてはもちろん知っていましたし、その傑作に自分が出演できるなんてまさか思ってもみませんでした。若者の物語でもあるので、年齢的には僕も32歳ですから(笑)、トニー役はギリギリ、これがラストチャンスというつもりで挑んでいます」
浦井「トニーはとにかく真っ直ぐで、純粋に人を愛する気持ちを持っている。友情であったり、若さゆえのアンバランスさ、そして人としての生き方がたくさん学べる役でもある。セリフの裏側にある感情も、うまく演じていけたらなと思っています。このロングランはシングルキャストでは乗り越えられない過酷さがあるので、カッキーと助け合って1ステージずつ魂を込めて演じたいです」
柿澤「楽曲はどれも難しいですが、世界的な名曲を歌えることは本当に光栄です。そして、まずひとりの女性と巡り合い、その人を愛し抜くことが体験できるというのは役者としてもやりがいがありますし、ジェッツのみんな、主にリフという親友とのやりとりも含め、僕が若い頃に憧れていたような青春が再体験できることもすごく楽しみだったりします。二人のマリア、二人のリフと誠実に向き合いながら、演じていきたいと思っています」
「体験型のアトラクションのように名作を楽しんでほしい」(浦井)
浦井「この客席が360度回転する劇場というのは日本のほかにはオランダにあるだけ、世界で二つしかない特別な劇場なんです。それが今、日本で体感できるというのは、とても貴重な体験でもあって。劇団☆新感線『髑髏城の七人』の各Season花・鳥・風・月・極、そして『メタルマクベス』のdisc1、2 と続いてきて、disc3では自分も舞台に立つ側を体験でき、本当に極上の劇場空間だと思いました。お客様が前のめりになって楽しんでくださる劇場ですので、今回も体感型のアトラクションのように『ウエスト・サイド・ストーリー』という名作を大いに楽しんでいただきたいです」
柿澤「演じる側としては、もうとにかくやるしかないと思っています。僕が観客として最初に『ウエスト・サイド・ストーリー』の来日版を拝見した時は、プロジェクションマッピングも駆使していますし、客席がぐるぐると回って大きな転換シーンもあって。そういう最先端の技術を体感できるというのも、非常にいい時間だなと思いました。舞台の面白さって、お客さん自身がカット割りできることも大きいじゃないですか。主役をずっと見ていてもいいけど、その裏側にいる人の表情や芝居の変化を追うこともできる。特にこの劇場の場合は情報量がものすごく多いから、何回観ても面白く見ることができそう。まるでNYの街の中に自分がいるような感覚も味わえると思いますよ」
浦井「Season1、2とつないできたバトンもこのSeason3で完結します。我々がしっかり責任を持ってゴールできるよう、これが今の日本の『ウエスト・サイド・ストーリー』です!と言えるように、作品を全うしたいですね。ぜひともこの機会に、360度回転劇場に足をお運びください」
柿澤「物語の流れとしては決して難しくなく、一方で不変的なメッセージもある深い作品でもあります。それを名曲に乗せてカンパニーのみんなで一生懸命汗をかきながらがんばりますし、絶対に大事なメッセージを感じて帰ってもらえる自信があります。なかなかこの劇場で昔からの名作ミュージカルを観る機会も多くないはずなので、見逃してほしくないですね」
インタビュー・文/田中里津子
Photo/篠塚ようこ
※構成/月刊ローチケ編集部 4月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
浦井健治
■ウライ ケンジ ’04年、ミュージカル『エリザベート』でルドルフ皇太子役を務める。以後、ミュージカルやストレートプレイ、映像作品と幅広く活躍中。
柿澤勇人
■カキザワ ハヤト ’07年に劇団四季公演『ジーザス・クライスト=スーパー』でデビュー。以後、ミュージカル、舞台など数多くの作品に出演している。