初のソロコンサートを開催!東啓介 インタビュー

メキメキと実力をあげ注目される若手ミュージカル俳優、東啓介が、初のソロコンサートを2020年11月28日(土)に開催。ファンの要望が強い過去作品の楽曲はもちろん、これから挑戦したい目標作品の楽曲などもラインナップ。セットリストには彼自身の想いがあふれんばかりに込められているようだ。どんな想いで、どんな楽曲を歌うのか。「コンサートの瞬間が、新しい僕の誕生の瞬間になる」と語る、いま、25歳の東啓介の素顔に迫った。


――ファーストコンサートとなる今回、どんな基準で選曲しましたか?

まずは過去作品の中からもう一度純粋に歌いたいと思う曲、過去作品でも僕じゃない役の曲など、携わった作品の中から候補となる楽曲を挙げました。それに加えて今後挑戦したい作品の曲を入れたことは、すごく意味のあることだと感じています。セットリストの中にはこれまで歌っていない曲がたくさんありますよ。


――軌跡をたどるに加え、挑戦の意味が強いのですね。

そうです。だから「A NEW ME」というタイトルにしました。現在から、未来へつながるセットリストで、新しい僕、これからの僕をお見せしたい、届けたいと思っています。


――自粛期間中に、無観客の舞台も経験されたんですよね。

『ジャージー・ボーイズ インコンサート』が4日間無観客でした。無観客舞台は気持ちの入れ方が難しかったですね。画面の向こう側にお客様がいるのはわかっているけど、でも、目の前にはいらっしゃらない。劇中のコンサートの場面では客席との掛け合いもあるのに、それが、できない。これはしんどかったです。改めて、生の舞台の良さに気づきました。お客様の熱量って素晴らしい。このエネルギーに応えなければ! よく、「舞台はお客様がいて成り立つもの」と言いますが、痛感しました。――そうした経験を経てのソロコンサート、どんなものになりそうですか?

さまざまな作品のさまざまな楽曲が並びますから、一つひとつのテーマにきちんと添っていきたい。それと、ソロですし、曲の役だけでなく僕自身の気持ちも込めたいなと・・・。


――それは楽しみ! ぜひ具体的に聞かせてください。

予定楽曲から挙げると、たとえば、「普通の人生」(『マタ・ハリ』)。この曲は、普通の人生、それだけでいい、と役としても歌うものですが、僕自身もとても素敵なことだと思うんです。温かさをむちゃくちゃ感じる。そうだ、こういうものが欲しいんだ、この温かさを――と、役とともに僕の気持ちも、声にのせてお届けしたくて。


――声は目に見えない、けれど、波動は確実に伝わっていく。

そう思います。僕、人の歓声で泣いちゃうんですよ。『アメリカズ・ゴット・タレント』というオーディション番組が好きで見ますが、ゴールデン・ブザー(番組内で審査員が押す金色のボタン)がバーン!と押されるとき、わぁぁぁ!と大歓声が沸き起こります。あれで泣いちゃうんですよ・・・なんでだろう。鳥肌が立って、感動して、共感して、温かくなってく。観客のひたむきな拍手には温かさしかなくて、見守っていてくれている。ガチで泣きます。このコンサートでも僕から歌を届け、お客様がそれを受け止めてくださったと感じられる瞬間には思わず泣いてしまいそうですね。


――ブロードウェイで観劇した『DEAR EVAN HANSEN』からの選曲は希望ですか?

『DEAR EVAN HANSEN』は、ミュージカル俳優ならきっとだれもが大好きな作品です。素晴らしい楽曲がたくさんちりばめられているんですよ。選んだ「For Forever」はテーマ曲ではないけれど、僕が大好きな一曲。この曲、歌いたいです!と希望しました。


――ミュージカル俳優を惹きつける作品の魅力とは?

楽曲が半端なく素晴らしいんです! 内容を知る前にテーマ曲を聞きましたが、なんだこれ、めちゃめちゃカッコいいな! これミュージカルなのか! と興奮しました。物語を知ると、なお面白い! もう<奇跡作品>です。大好きなこの作品をみなさんに知っていただきたいし、英語で歌う挑戦もあります。――『DEAR EVAN HANSEN』は映画化が決定されたそうですね。

実は・・・、たったいま、知りました(笑)! めちゃめちゃ見たい!どうしよう! 大好きすぎて、僕、主人公が着ているポロシャツをニューヨークで買いましたもん(笑)。やりたいっ! いや、もはや彼になりたいっ! けれど、たぶん僕には演じられません。タイプが違うと感じているので、ジェラシーですね。叶わないからこそ、コンサートで歌います!


――仕掛けも考えていますか?

弾き語りがあるかも!?というところです。ピアノか、ギターですね。最近ギターを始めたんですよ。Jポップを弾きます。本当にやるかどうか、何の曲を歌うのか、どうぞ劇場にいらして確かめてください。


――Jポップと、ミュージカル、歌の違いをどう感じますか?

僕にとっては、ミュージカルよりJポップがはるかに難しいです。僕は言葉を伝えたがる。カラオケでも、ミュージカルっぽい、と言われます。そんなつもりないのに(苦笑)。
Jポップのいろいろな歌い方は、『ジャージー・ボーイズ インコンサート』でご一緒させていただいた藤岡正明さんが詳しく説明してくれました。たとえば、ビブラートにも深い、浅いがあるとか、フェイク(音にアレンジを加える)の入れ方で想いの伝え方が変わるとか。これ、難しいんですよ。でも、どんな歌、歌い方でも、僕が大事にしているのは想いを届けることです。


――ファンからのリクエストにも応じますか?

まさに、「サラへ」(『ダンス・オブ・ヴァンパイア』)がそうです。自粛期間中にインスタライブを結構やりまして、ピアノで弾き語りながら、なにを歌ってほしいですか? と問いかけました。すると、「サラへ」のリクエストが多かったんです。ファンのみなさまは、本当によく見てくださっている。過去作品のあの曲を歌ってほしい、この曲が好きと、それぞれの胸に刺さる楽曲は違うんですよね。むかしの楽曲もよく憶えてくださっていてうれしいです。


――過去作品の楽曲には、時を経ての再挑戦がありますね。

経験を積んだだけの違いが出ると思います「普通の人生」(『マタ・ハリ』)も2年前ですから、あれから2年、だいぶ変わっていると思います。白状すると、あのとき、僕、歌えてないんですよ。嘆きながら歌いました。そういう、ガムシャラな良さもあったと思いますが、今回、成長したいま、もっと良い「普通の人生」を聴いていただけると思います。――待ちに待った「A NEW ME」(新しい僕)のドキドキを聞かせてください。

過去のものを単に思い出して歌うのではなく、作品を理解し、いまに置き換え、新しい楽曲としてチャレンジするのでとても大変ですけれど、稽古して、リハーサルをし、当日の舞台に立ったとき、めちゃくちゃうれしいと思います。新しい僕が見てもらえる。新しい僕の誕生の瞬間になる、と思うんです。さらに、今回挑戦する未来にやりたい作品の楽曲は、何年か後、本当にその役を演じることがあれば、今回のコンサートと比べてもらえる、という楽しみがあります。25歳のいまと、たとえば30歳の僕の違いが楽しんでもらえるのでは、と。その日が来るのを僕と共に楽しみにしていただきたいですね。


――最後に、待ち焦がれているみなさんにメッセージを。

劇場に足を運ぶのもためらわれるときです。チケットを取ったのに中止という挫折の繰り返しを、みなさんもされているでしょう。僕らも同じ思いをしてきました。だからこそ、今回のコンサートでは今までにないドキドキやワクワクが分かち合えると思います! 劇場でお会いしましょう。

 

取材・文/丸古玲子