有澤樟太郎インタビュー|ミュージカル『17 AGAIN』

大ヒットを記録した人気映画「セブンティーン・アゲイン」(原題:17 AGAIN)が、ミュージカル『17 AGAIN』として上演される。
負け組としての人生に項垂れていた35歳の主人公・マイクが、ハイスクールバスケットボールのスター選手として輝いていた17歳の頃の姿に戻り、もう一度人生をやり直そうと奮起する姿を描いたコメディー・ドラマ。映画は2009年に公開され、「ハイスクール・ミュージカル」シリーズのザック・エフロンが主演して人気を博した。
今作は竹内涼真が主人公・マイク役として初舞台&初ミュージカルに挑む。翻訳・演出を手掛けるのは谷 賢一。マイクの妻・スカーレットをソニン、マイクの親友・ネッドをエハラマサヒロ、娘のマギー役に桜井日奈子、息子のアレックス役に福澤希空(WATWING)、マスターソン校長役に水夏希と実力派キャストが集結した。この日本での上演が世界初演となる。

その中でも注目されるのはマギーの恋人・スタンを演じる有澤樟太郎だ。本格ミュージカルへのデビューを飾る予定だったブロードウェイ・ミュージカル「『ウエスト・サイド・ストーリー』」Season3は新型コロナウイルス拡大の影響で中止となってしまったが、ミュージカル『刀剣乱舞』和泉守兼定役やテレビ東京「サクセス荘」シリーズのアンテナ役など、様々な作品で印象を残している。
有澤に『17 AGAIN』にかける様々な想いをユーモアたっぷりに語ってもらった。

 

 

―― 今回の“ミュージカル版”の台本をお読みになった感想からお聞かせください。

ずっと楽しみにしていたので、製本された台本を見て「いよいよ始まるんだな」という気持ちになりました。お話の内容自体は映画を見て知っていたのですが、それをミュージカル版にしたらどんな台本になるんだろうと思っていて。最初はお話の流れを読もうとしていたのですが、つい自分のシーンをチェックしちゃいましたね(笑)。どういう風にスタンを描くのかが気になりつつ……読み終えた時は「これは面白いことになるだろうな」と思いました。

 

―― 楽しみにされていたという、ご期待通りの内容だった?

期待以上の作品ができると思います! 今から稽古を楽しみにしているところです。

 

―― 気になっていたスタンの登場場面はいかがですか?

楽曲の中で歌う場面もありますし、見せ場がしっかりあると感じました。スタンはイジメっ子なので、どれだけその印象を与えられるか考え中です。「どうイジメてやろうか?」と考える日々ですよ。性格がひねくれていっているかもしれない……ウソですけど(笑)。

 

―― 出演発表時に「驚いた」とお話されていましたが、それはスタンとご自身が全く違うから?

一番は豪華なキャスティングの中に自分がいるということへの驚きでした。でも僕を知っている方やこれまで演じてきた役をご存知の方には、そのかけ離れ方に驚かれるかもしれません。ご心配なく! 堂々たるイジメっ子ぶりにご期待いただければと思います!

 

―― 堂々たる(笑)。

あと、スタンって“男の子”って感じなんです。“男”と言うより、しっかり17歳の男の子という感じなので、そこは役作りしやすいかなと思います。その部分には共感性がありますね。「盛んだな~」とかも思いますけど(笑)。将来、スタンはどんな大人になるんだろうってこともすごく気になります。こういうタイプは「俺も若い頃はさぁ~」って飲み会でしゃべると思う(笑)。けっこう丸くなって、周りからは「お前、あんなことしていたよな」っていじられて、「あったなあ」なんて苦笑いで受け答えしてそう。

 

―― ご想像が進んでいますね(笑)

分かりやすいタイプだと思うんです、スタンって(笑)。もちろん作品として求められているポジションがあると思うので、そこはしっかり守っていきたいですね。主人公のマイクとの対比であったり、作品の中での位置づけ的なものは稽古をやっていく中で確立していけたら。『17 AGAIN』はマイクのお話なので、彼を中心とした関係図がどうなっていくのかという部分は丁寧に作っていければと思います。

 

―― 確かに。スタンはハイスクールのトップポジションにいる人物なので、かつてのマイクとの比較にもなるでしょうし、マイクの娘・マギーの彼氏として一波乱を起こす人物でもあります。

マギーも、なんであんな男(スタン)と付き合っちゃうかなあ!? と思いますよ(笑)。親からしたら、絶対いたたまれない! マイクにとっては息子のアレックスをイジめている相手ですし、「アイツ~!」と思っていたら娘と付き合っているだなんて……。俺から見ると、敵しかいない立場だと思います(笑)。

 

―― でもスタンは、全員から嫌われているわけではないんですよね?

そうですね。一応、学園のキングですし。きっと分かりやすいからでしょうね。そういう人に周りも付いていくものだと思います。ちょっとイケイケの人たちと一緒にいると安心というか。だから周りの気持ちは分かります。

 

――『17 AGAIN』のストーリーは、自分の学生時代を思い起こさせるようなものもありますね。

そう思います! 僕も懐かしさと「楽しかったな~!」という学生時代の楽しさを思い出しました。最近もミュージカル『ジェイミー』の上演が発表されましたし、学園モノのミュージカルを世が欲しているんだと思います! TVドラマでは、昔ほど学園モノやTHE・青春ドラマを見かけなくなった気がしているのですが、絶対にみんな好きだと思うんです。この舞台を通じて皆が忘れかけているものを……苦い思い出も楽しい思い出も蘇ってくると思いますし、演じている役者も楽しく臨める作品だと思うので、そういう気持ちが伝わったらいいなと思います。

 

―― 有澤さんにとっても学園モノのご出演は願っていたもの?

夢でしたね。やはり学園モノの作品を見てきていますし、若手の俳優であれば夢見ることのひとつではないかなと思います。その意味では、ひとつ叶ったかもしれない。……まさかイジメっ子の方だとは思わなかったですけど(笑)。自分の中で「学園モノに出るなら」という想像をしていたりもしましたが、何か複雑な事情を抱えている少年であったりとか、演じるならそっちのタイプだと思っていました。イケイケなキャラクターより、それこそターゲットにされているアレックスみたいな方に感情移入してしまうので。真逆でしたね(笑)。でもだからこそスタンには演じ甲斐を感じます!

 

―― まだお稽古開始前(※取材時)となりますが、カンパニーの印象などもお聞きできれば。

昨年11月に製作発表があったのですが、楽屋では皆さんとすごく盛り上がりました! エハラさんが盛り上げてくださって、雑談から作品についてまでいろいろお話できて良い時間でした。ソニンさんや水さんも盛り上げてくださる方なので、僕ら男子チームは相槌を打っていましたね(笑)。でも皆さん大体、マイク一家なんですよ。だから僕は「家族になりたかったなあ」と思ったりもしていました(笑)。稽古場でも家族関係の結び付きが強いと思いますし、なんとなく勢力図が……。

 

―― スタン、孤立の可能性が(笑)。

マイク一家にはひどいことしかしていないですからね(笑)。謝り倒すしかないだろうなあ。先ほどスタンの将来について語りましたけど、スタンも大人になったら17歳の時の自分に対して思うところはあるんじゃないかなと想像するので。舞台が日本だったら、わりと大手の企業とかに就職していそうだなと思うんですよ。学生生活を謳歌して、推薦で大学に進学して、ちゃんと単位も取って就活して……って、プランはしっかり組み立てるタイプだろうと妄想中です。

 

―― お話を聞いていると、『17 AGAIN』ならぬ『17 AFTER』みたいな、スタンのその後を見てみたくなります。

スタンのスピンオフ・ストーリーも期待です! 絶対無いと思いますけど(笑)。それぐらいどこかで好かれたらいいなとは思います。

 

―― スタンが参加するナンバーもあると思いますが、歌唱についてもお聞きできれば。最近、特に歌唱力の評判が高まっていると思います。

ありがとうございます。でもその役をまとった状態でしか歌を披露していないので、その役としての歌い方が上達しているだけかもしれないなと。歌唱力そのものについてはもっと訓練したいと思っているところです。基本、歌うことは好きなんですけどね。一人カラオケにも行ったりします。今はこの状況なのでなかなな行けていませんが。

 

―― その時はどんな曲を歌われるのですか?

女性キーの歌を男性キーで歌ったりしています。みんなで行くカラオケはあまり好きじゃないんですよ。人の選曲とかが気になっちゃうので。行く時は『湘南乃風』さんしか歌わないって決めています。盛り上げに徹する!(笑) でも一人カラオケの時は自由に、しっとりした曲を歌ったりします。

 

―― こうしてミュージカル作品への参加も増えていることで、歌に対して意識の変化などはありましたか?

ミュージカルの世界で活躍されている方と共演して、すごく刺激をいただいたということはあると思います。今までは気にしていなかったスキル面も動画で学んだり、自分で調べるようになりました。まだ全然ですけど、一歩一歩経験を積んで、結果を残していきたいなと思っています。本当に実力勝負の世界だと思うので。「『ウエスト・サイド・ストーリー』」の現場なんて、「ここサバンナかよ!」ってくらいバチバチしていて、鎬を削り合っていました。もちろんカンパニー力があるので、みんなで一緒にやっている感じはありましたけど、ギラついている様に「わぁお……」って(笑)。映画でしか見たことのないような雰囲気でした。僕も生半可な気持ちでできる役ではなかったですし、その次元じゃないということは実感したので、頑張らないとなと感じています。

 

―― すごい地帯に飛び込んだと。

いつ食われてもおかしくないなと思いました。噛み付いてくる奴らがいっぱい! 僕も草食動物のつもりはないので、「来んな!」と振り払いながら……超走って逃げていました(笑)。

 

―― サファリパークだったらバスですね。

バスだったかもしれないですね!(笑) でも本当に、ミュージカル作品って名作が多いじゃないですか。だからどの作品にも「この役がやりたい!」と願っている人がたくさんいると思うんです。僕も「ウエスト・サイド・ストーリー」ではベルナルドという多くの人が憧れる役をいただいていたので、きっと「俺だったらこうやる」と思われていたんだと思います。今回の『17 AGAIN』も刺激のある現場だと思うので、スタン役も「やりたい」って思ってもらえるようなものに出来ればと思います。

 

―― 日本初演となる今作をご覧になった若い俳優さんが、「次のスタンを狙いたい!」と願うようになるかもしれません。

そうなれば嬉しいです。初演ということは、今のところスタンは映画で演じた方と僕しかいないということなので、僕なりのスタンを見つけていければと思います!

 

―― 最後に因んだ質問になりますが、有澤さんが「35歳」になった時の目標やプランを教えてください。

10年後ということになるので、自分の中ではそんなに遠くないイメージですね。周りの35歳前後の方々が「腰が……」とぼやいているところをよく聞くので(笑)、今から体作りを入念にしていかなければと思います。ふつうに家庭を築いていてもおかしくはない年齢ですけど、悪い意味で落ち着くことなく25歳と同じように活動していたい。でも良い意味での「落ち着く」という評価も得ていたいです。「あいつが居てくれると安心」って、いろんな場所で必要とされる人になっていたいと思います。……なんか、不安になってきちゃいました(笑)。まだ目の前のことでいっぱいいっぱい、が正直なところです。

 

―― お客様へのメッセージをお願い致します。

僕も大好きな作品の日本初演。期待値も上がっていると思いますが、製作発表での竹内さんの素晴らしいパフォーマンスもありましたし、僕も早く稽古に入って、皆様に良い舞台をお見せしたい気持ちでいっぱいです。この状況下ですが、無事に初日の幕を開けて成功させたい。そしてご覧いただく皆様のどこかにスタンの印象を残せたら幸いです。本当に楽しい作品ですので、ぜひ観劇いただければと思います!

 

インタビュー・文/片桐ユウ