名門進学校を舞台に、ミュージカル部の設立を目指す生徒と教師の奮闘を描いたミュージカル『「オープニングナイト」~桜咲高校ミュージカル部~』が、7月2日(金)より東京・日本青年館ホールで上演となる。本作は、劇団四季出身でミュージカル「魔女の宅急便」などを手掛けたことでも知られる岸本功喜が脚本・演出・振付を担当する完全オリジナル作で、同演目を〈team Blue〉〈team Red〉の2チームがそれぞれ上演するというこれまでにない取り組みも話題だ。横山だいすけ、三倉佳奈、福井貴一、野々村真、湖月わたるが演じる個性豊かな教師陣は共通で登場し、〈team Blue〉は、ダンス・ボーカル・グループの『原因は自分にある。』から、武藤潤、杢代和人、大倉空人の3人と、瑛、中谷優心、村上貴亮が出演、〈team Red〉は、私立恵比寿中学の星名美怜、超ときめき♡宣伝部の小泉遥香と杏ジュリア、透明感のある雰囲気で現在売り出し中の河村花、NHK『おとうさんといっしょ』の竹内夢に加えて、前田悠雅が名を連ねる。ミュージカル俳優を夢見る主人公と、ひょんなことから顧問を引き受けることになった熱血教師を軸に、癖のある生徒たちと、創部を反対する校長との対立を経て、ミュージカル部は舞台初日=オープニングナイトを迎えることが出来るのか…。今回は、稽古が佳境に入る前の6月中旬の稽古場を取材した。
取材はそれぞれ別の日に行われたが、取り組んでいるシーンはほぼ同じ。生徒6人とアンサンブル・キャストによる歌の稽古がメインで、主人公のマイト/マイを中心に、ミュージカルの上演に向けて、それぞれの生徒の個性を生かして役割を分担し、学校全体を巻き込んでいくという重要なパートだ。
team Blue
〈team Blue〉の稽古は、今回ミュージカル初挑戦となる『原因は自分にある。』武藤・杢代・大倉が瑛、中谷、村上の3人と共に、いろいろと試しながら演出の岸本が肉付けをしていく。主人公のマイトをきっかけに進んでいく物語だけに、彼を演じる武藤はマイトをムードメーカーでみんなから愛されるキャラクターへと作り上げている印象だ。一方、マイトを支えるしっかり者の親友・ヒロキを演じる杢代は、自身の役割を理解しながら動きを何度も確認、自分の夢を打ち明けられないオウタ役の大倉は、全体の流れを見ながら的確に意見を出す。妹を溺愛する不良学生のユージに扮する瑛は、場面によりコミカルさを加え、ダンス力抜群という役どころの村上は、劇中で見せるキレのある動きが華やか、計算高い食いしん坊のタロウを演じる中谷は具体的な提案をしながら進めていく。6人のわちゃわちゃした感じを活かしつつ、役者の動きを見ながら振付をしていく岸本は、この稽古を通じて演出の方向性を定めつつあるようだ。また、この日の〈team Blue〉は、校長(湖月わたる)が創部を反対していた理由を語り、熱血教師のテッペイ先生(横山だいすけ)と生徒たちのいる前でとある先生の過去が明かされるという、芝居パートの稽古もあり、シリアスとコミカルを見事に演じ分ける校長役の湖月、横山扮するテッペイ先生の慕う生徒たちとのやりとりも楽しく、全体を通じてどのようなものになるのか、期待が高まる1日となった。
team Red
前述のとおり、場面やキャラクターの設定は同じながら、〈team Red〉の稽古は〈team Blue〉とは異なる輝きを放っていた。主人公のマイを演じる星名が持つ華やかでカリスマ性のある魅力と、まるでライブを行っているかのような力強いパフォーマンスは見る者の視線を釘付けにする。彼女を支える親友のヒロミ役の河村は、ニコニコとしながら場の雰囲気を作り上げ、思いを告げることができないレイコに扮する小泉は、クールで内なるものを秘めているという役どころをとらえつつ、しっかりとリアクションもしていく。妹を溺愛する不良学生ランを演じる前田は、誰よりもパワフルで粋なランを常に意識しながら稽古に挑んでおり、ダンスが上手なエリカ役の杏はしなやかに両手を広げながら、軽快に踊る姿が美しい。それぞれの個性が随所に溢れ、生き生きとしたカンパニーとなっているのだろう。岸本から「6人はクリエイトするほうなので、他の生徒や先生を巻き込んでいく役柄だから」という言葉で、アンサンブルとは異なる動きで引っ張っていこうとそれぞれの表情が変わったのもまた印象的な一幕だった。役者から湧き出るものを演出に落とし込んでいくという岸本が、彼女たちからどんな刺激を受けてこのシーンを仕上げていくのかも注目したい。同じ脚本であっても、キャストが異なれば別のものになる。〈team Blue〉〈team Red〉の違いを楽しむのもこの『「オープニングナイト」~桜咲高校ミュージカル部~』の魅力の一つだ。
〈オープニングナイト〉に向けて駆け抜けていく大切な場面の稽古で、アンサンブルも含めて登場人物が多いため、実際に出演者の動きを見ながら、岸本が演出と振付のイメージを膨らませていく。目標に向かって一致団結していく生徒役メイン・キャストの6人の姿と、最高の〈オープニングナイト〉を迎えるために奮闘する劇中のキャラクターたちの思いが重なり、圧倒的な熱量を持って取り組んでいる。教師のキャストやアンサンブルは同じながらも、〈team Blue〉〈team Red〉で演出やとらえ方は異なるだろうし、互いに切磋琢磨しながら、素晴らしい〈オープニングナイト〉をそれぞれが迎えることだろう。
星名美怜コメント
Team Redみんなでつくるキラキラとしていて温かい雰囲気を毎回稽古で感じています!
私たちらしさももっとつくりあげて、オープニングナイトを通して来てくださる方に沢山のときめきをお届けしたいです!
河村花コメント
稽古の日々が続く中、毎日ヒロミを好きになっています。それと同時にこの作品がなんて素敵なんだろうと思う瞬間が沢山あって、それをどうしたらもっと伝えられるのか悩む毎日でもあります。
一緒にミュージカル部をつくる仲間達やその周りの大人達、揺れ動く感情が、私が今まで味わった事のない大きさとエネルギーで、稽古中に涙が出そうな程高まる瞬間があります。
この作品を是非沢山の方に見てほしいです。伝えたいメッセージがあります。
よろしくお願いします!
小泉遥香コメント
毎日本当にワクワクドキドキ、キラキラした気持ちで稽古させて頂いています。ミュージカルが初めてな私には、なにもかもが初めてのことづくしで、毎日違う刺激を受け、学ぶことばかりですが、毎日すごく楽しくて、本当に貴重な経験をさせて頂いているなと感じます。
レイコを演じている時は、本当に自分が自分じゃないみたいで、新鮮な気持ちです。自分自身とは違う部分も多かったりするので、苦戦もしていますが、一生懸命向き合って行けたらと思います。
まだまだ未熟な所ばかりだと思いますので、岸本さんや小島さん、他のキャストの皆さんにもたくさんのご指導を頂きながら、真剣にこの作品の素晴らしい世界に溶け込んでいけたらいいなと思います!
学べるだけ学び、吸収して、盗みに盗んで頑張ります!!!
よろしくお願いします。