福岡・キャナルシティ劇場にて7月27日(火)開幕☆劇団四季 ミュージカル『キャッツ』舞台仕込み取材会レポート

写真左:福永泰晴(舞台監督)/写真右:土屋茂昭(舞台美術家)。

 

劇場に一歩足を踏み入れた瞬間から目の前に広がる『キャッツ』の世界観は圧巻!

7月27日(火)から福岡・キャナルシティ劇場において、劇団四季 ミュージカル『キャッツ』福岡公演が開幕する。福岡での上演は2014年以来の約7年ぶりとなる。それに先立ち、舞台仕込み取材会が開かれ、舞台監督の福永泰晴さんと舞台美術家の土屋茂昭さんが福岡公演について語ってくれた。

撮影:山之上雅信

“仕込み”だけあって、この日の取材会場はキャナルシティ劇場の実際の客席で行われた。見渡せば『キャッツ』の大事な小道具である‟ゴミ”が舞台や客席の左右の壁、2階席近くまでびっしりと飾られている。猫たちの住む“都会のゴミ捨て場”の空間が着々とできあがっていた。設営期間はこの日まですでに3週間を要しており、初日までとなるとおよそ1ヶ月はかけることになるという。

福永「ゴミは実寸の3〜5倍のサイズで、猫の目線から見た大きさになっています。まるで自分も猫になったような、そんな空間を作り出しています」

土屋「ゴミは2,500ぐらいはあります。量でいえば11トントラックで約60台分です。お客さんにはこのサイズ感のスケールに酔いしれてもらいたいですね」

『キャッツ』がいかに大掛かりなステージであるかが想像できるだろう。ふと隙間なく埋め尽くされた巨大な‟ゴミ”をよくよく見ると、見覚えがあったり、一度は手にしたことがあるものだったりとどこか懐かしく、親しみを感じた。また“ご当地ゴミ”と呼ばれる九州ゆかりのものもあり、銘菓や土産物、九州生まれの石けん、ソフトバンクホークス関連のものまで24種・34点もある。

舞台美術家である土屋さんは、1983年の『キャッツ』日本初演時から美術デザインを担当している。このゴミに関して、土屋さんは劇団創設者である浅利慶太氏にこう言われた経験があるという。

土屋「ゴミではあるが、(知らない)誰かが使ったかもわからないゴミではなく、(たとえば私の)お兄ちゃんが使ったかもしれないものと思えるようにしようといってました」

役割を終えると、捨てられるのがゴミだが、少し前までは誰かが使っていたものである。ゴミは誰かの思い出の集積とも言い換えられる。そう考えるとこの“都会のゴミ捨て場”がまた違ったものに見え始めた。
加えて土屋さんは、その真意は『キャッツ』の代表曲「メモリー」にも込められていると話す。それは歌詞に込められた「思い出をたどって新しい生命を得る」というメッセージにつながるという。

最後に二人に『キャッツ』の見どころを語ってもらった。

福永「この空間をちょっとしたアトラクションというような気持ちで楽しんでほしいですね。『キャッツ』という作品はいろんなキャラクターがいて、2回目観たら1回目とは違う猫に惹かれるということもあるはず。まずは一度観にきて、よかったら何回でも観に来ていただきたいです。観れば観るほどどんどん深まっていく作品です」

土屋「それぞれの猫が個性豊かですから、24匹の中から好きな猫を見つけてほしいと思いますね。そしてこれ。(大きな靴を指差しながら)どうやって作るんだろうと思うでしょ?こういうのが2,500個ぐらいある。触ることはできませんが、できるだけディテールを見てほしい。精密にできていますから。この猫のファンというのを見つけると同時に、お気に入りのゴミを見つけてほしいなと思います」

ロングラン公演が決定している劇団四季 ミュージカル『キャッツ』だが、本作をもってキャナルシティ劇場での長期公演活動を終了する。

チケットは現在10月公演分まで販売中。8月14日(土)からは延期公演分・第二期となる11月以降の公演分のチケットも発売開始!

詳細は下記よりご確認ください。

 

〜こぼれ話〜
取材会では土屋茂昭さんが詳しい解説とともに、劇団四季と『キャッツ』の必然性について語った。「劇団の名前は当初、劇団荒地とする予定だったそうです」と劇団四季旗揚げ時のエピソードを披露。『荒地』はノーベル文学賞を受賞したT.S.エリオットの詩集のタイトルであり、T.S.エリオットはご存知の通り『キャッツ』の原作者である。

 

【プロフィール】

舞台美術家 土屋茂昭(つちや しげあき)

●1972 年より劇団四季美術部員として金森馨、ジョン=ベリーに師事。現在はフリー。日本舞台美術家協会副理事長を務める。主な作品に劇団四季『エビータ』『ミュージカル李香蘭』『ユタと不思議な仲間たち』『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』など、多くの舞台美術を手掛けている。『キャッツ』では、1983 年日本初演より美術デザインを担当。

土屋氏が手に持っている小道具の1つ、四つ葉のクローバーは、公演ごとに置かれる場所が変わるそう。見つけたあなたは幸せになれるかも?

 

取材・文:山本陽子

取材・編集:ローチケ演劇部(シ)