1973年に舞台初演、1975年に映画化され、いまだに熱狂的なファンに支持され続けている『ロッキー・ホラー・ショー』(以下『R.H.S』)。このロックミュージカルの金字塔が、5年ぶりに待望の復活を遂げる。5年前の前回公演に引き続き、演出は河原雅彦、振付は東京ゲゲゲイのMIKEYが担当。主人公の性倒錯者にして科学者のフランク“N”・フルターに扮するのは2011年(いのうえひでのり演出版)、2017年に続いての登板となる古田新太だ。キャストは他に小池徹平、ISSA、昆夏美、フランク莉奈、峯岸みなみ、東京ゲゲゲイ、武田真治、ROLLY、岡本健一らが華やか、かつ賑やかに顔を揃える。これが三度目にしてラストのフランク役となる古田に、作品への思い入れ、共演陣への期待などを語ってもらった。
――古田さんにとって『R.H.S』は、特別な位置づけの作品かと思いますが。改めて観る側からの面白さと演じる上での楽しさ、もしくは苦労などがあれば教えていただけますか。
苦労はないです。ガキの頃から観ている演目で『ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー』(映画版)は、いまだに観ていますから。「(脚本・作詞・作曲の)リチャード・オブライエン、やっぱりバカだなあ~」って思いながらね(笑)。そもそも『R.H.S』みたいなことがやりたくてこの世界に入って、いまだに『R.H.S』みたいなことをやりたいなと思い続けているので、本当なら『R.H.S』そのものをやってしまったらダメなんですけど。だって“みたいなこと”がやりたいんですから。そこは、ジレンマです。ある意味、いまだに『R.H.S』をやっているということは、それ以上のものがまだできていないということでもありますから。
――河原雅彦さんが演出することによって生まれる面白さについては、どうお考えですか。
前々回のいのうえ(ひでのり)さんの演出には『ピクチャー・ショー』に対するリスペクトが強くあって。オイラは『ピクチャー・ショー』はもちろん大好きなんですけど、ライブでやる限りは“お客さん参加型”でいきたいんです。そういう意味では、リーダー(河原)は客いじりが大好きな演出家なので信頼しています。
――このご時世で、客いじりはなかなか難しいことになりそうですが。
そうなんです、お客さんに「叫べ、踊れ」とは言えませんから。だけど、この間もリーダーと作戦会議をしました。お客さんとどうやって一緒に遊べるか、ちょっと今、いろいろと企んでいるところです。
――56歳でフランク・フルター役を演じることについて、体力的な心配などは?
だってなんといっても上演時間が短いですから!それも含めて、素晴らしい作品なんです。どこかの劇団みたいに3時間も4時間もやりませんからね!!(笑)
――5年ぶりのフランク役で、これがラストと謳われていますが。どうしてラストと宣言してしまうのですか?
実は前回の『R.H.S』で終わるつもりでいたんです。それでプロデューサーとリーダーから「もう一回やりたいんだけど、誰かほかにフランク役にふさわしい俳優はいない?」という相談を受けていまして。
――推薦してほしい、と?
「若手で誰かいない?」と。それでいろいろ考えた結果「やっぱオイラじゃね?」って話になっちゃっいました(笑)。
――まだ、自分以外にはいないと。
それで「じゃ、もう一回やるか!」ってことに。
――そういういきさつだったんですね(笑)。
そうなんです。誰か、こいついいなというのが見つかっていたら、前回で終わってましたね。
――だったら、もしかしたら次もあるのでは?(笑)
だからこそ「これで終わりだよ!」と明言しておかないと「またオイラかな?」って言っちゃいそうですから。
――一応、ここで一区切りにはしておきたいなと。
さっきも言いましたけど『R.H.S』みたいなことをやろうとあがいている身でありながら、『R.H.S』をいつまでもやってたらダメでしょう。
――では、自分で。
そろそろ本気で『R.H.S』みたいな、フランクとかジャネットという役名ではない、日本人が演じる作品を作らないと。歌って踊ってお客さんいじって短くて楽しいお芝居。いよいよ、本腰を入れてやらないと身体にガタが来ているので。
――今回は前回とは少しキャストが変わりますが、『R.H.S』に複数回出ている、ゆかりのある方々が大勢集まりましたね。
そうですね。男性陣は前回出ていなかったのはオカケン(岡本健一)くらいじゃないですか。女性陣は、東京ゲゲゲイのメンバー以外が一新されます。ジャネットは昆夏美ちゃんで、オイラの中では昆ちゃんというのは『アダムス・ファミリー』にウェンズデー役で出ていたイメージがすごく強い。ああいう少女とかやらせるとすごく可愛いじゃないですか。だから、今回はちょっとエロい格好をさせたいなと。フランク莉奈ちゃんといい、峯岸みなみちゃんといい、かわいこちゃんばっかりですし。そこはオイラもリーダーもどっちかというと、かわいこちゃん好きですから。
――満足の顔ぶれに。
満足、満足。ただ、今回は(武田)真治がちゃんとオイラをお姫様抱っこできるのか、どうかが問題かな。コロナ禍でオイラもだいぶ太っているので(笑)。
――そこが課題ですか。
真治も、もともと筋肉はあるんだけど。でもフランクよりも背が低いという意味では、『ピクチャー・ショー』と同じ設定のロッキーになれるんです。前回は(吉田)メタルがロッキー役だったからデカかったんですけど、そもそもロッキーがフランクに嫌われるのは背が低いからという設定だったので。その点は、真治だったらちょうどいいなと思っています。ちなみにこの間、小池徹平とISSAとは偶然会えたので、その時に二人への作戦として「前回のことは全部忘れろ。君たちの役はそれぞれ新たに構築しなければならない」という命令を出しておきました。まあ、そんなこと言われたって、結局は似たようなものになるのかもしれないですけどね。
――ラストと銘打つにあたり、特にどんなところに最もこだわりたいですか?
単純に、このご時世なのであまりお客さんをいじれないかなあとは思っています。最近は劇場に行くと「お客様同士の会話はお控えください」みたいなボードを持った場内整理の人たちがいるじゃないですか。ああいうことで、何かできないかなあとか。係員の人に卑猥なボードを持たせてみるとか。そんなようなことをちょっと今、考えています。どこか、逆手に取らないとね。
――最後、みんなで一緒に歌ったり踊ったりは。
そこもね、歌わないで済む、参加の仕方はないか、と考えているんですよ。それは見てのお楽しみです。
――では最後に、お客様へメッセージをいただけますか。
このご時世なので『R.H.S』は非常にやりにくいんではございますが、ただ今、鋭意、作戦を立てている最中でございます。とはいえ、お客さんと一緒に遊ぶというのが『R.H.S』の大前提であることは変わらないので、ぜひそのつもりで劇場にお越しください。グッズもいっぱい売る予定です。きっとグッズを持っているほうが、より楽しめるはずですからぜひぜひ♡買ってくださいね!
取材・文/田中里津子