年明け1月より東京・シアタークリエにて上演されるミュージカル『リトルプリンス』。サン=テグジュペリの『星の王子さま』を原作に音楽座ミュージカルが1993年に初演し、数々の演劇賞を受賞している傑作が、装いも新たに登場する。この作品で主人公の王子役を務める加藤梨里香が、『星の王子さま』とその作者サン=テグジュペリをテーマにした「星の王子さまミュージアム」(神奈川県箱根町)を訪問。作品背景やサン=テグジュペリの生涯を学び、作品への理解を深めるとともに、『星の王子さま』の世界を楽しんだ。
『星の王子さま』といえば、示唆に富んだ奥深い内容や、人生の折々にふと道筋を照らしてくれるような名言の数々とともに、サン=テグジュペリ自身が描いた可愛らしいイラストも印象的だ。ミュージアムに入ると、多くの人が思い浮かべるであろうその表紙のイラスト――小さな星の上にひとり立つ王子の姿――が像となり、来場者を出迎える。この日の天気予報は残念ながら一日中、雨。しかし奇跡的に雨があがり、これは幸先がいいぞと思ったところで、弾ける笑顔で加藤が登場。加藤さん、“持って”ますね!
エントランスから展示ホールへ行く道中は、「出会いの庭」「アジサイの小径」などのヨーロピアン・ガーデン、ローズガーデン、「王さま通り」など、テーマ性がありつつ、思わず写真を撮りたくなる可愛らしいスポットだらけ。特に「王さま通り」は、サン=テグジュペリの生まれた1900年頃のフランス・リヨンの街並みを再現しているそうで、盛りの紅葉とあいまって、“ヨーロッパの秋の風景”といったおしゃれな雰囲気だ。加藤も足取り軽く、楽しそうにキョロキョロとあちらこちらに視線を送っている。
そして館内へ。ここではサン=テグジュペリの生涯が代表作とともに9つのエリアに分けて紹介されている。作家であり、飛行士であったサン=テグジュペリ。少年時代から空に憧れ、陸軍飛行連隊で飛行機の操縦士となり、その後、民間の郵便輸送のパイロットとして勤務した経緯や、砂漠のただ中の中継基地キャップ・ジュビーの飛行場長として13ヶ月を過ごしたことなどを、加藤は展示物を見て、またミュージアム広報担当・都路さんの説明を受けて学んでいく。サン=テグジュペリがキャップ・ジュビーで実際に砂漠のキツネ(フェネック)を飼っていて、それが『星の王子さま』のキツネの原型であることなど、作家本人の経験がこの物語の様々なところに投影されていることも新鮮に受け止めていた模様。特に加藤が胸を打たれたようなのは、サン=テグジュペリの弟・フランソワの死。フランソワが死の直前に言ったという言葉「僕は苦しくなんかない。痛くもない。ただ、どうにもとめられないんだ。これは僕の体がやっているんだ」は、肉体より精神が優位に立つという意味で、『星の王子さま』ラストシーンに大きく影響を与えている、という説明を真剣な表情で受け止めていた。
ほか、『星の王子さま』の献辞がユダヤ人の親友レオン・ヴェルトに宛てられていることから読み取れる戦争の影や、サン=テグジュペリの最期など、ファンタジーの裏側にある時代背景も学び、展示ホールラストの『星の王子さま』エリアへ。ここでは、キツネを見ては「キツネの言葉は大人になっても心に響きます。井上(芳雄)さんがどう演じるのか楽しみ」、バラの花を見ては「花總(まり)さんですね!」と声を上げるなど、自然と加藤の表情も楽し気なものに。ちなみにバラの花はサン=テグジュペリの妻コンスエロがモデル。「王子さまとバラのように、仲違いやすれ違いもあった結婚生活だったようですが、きっと最後まで愛し合ったことでしょう……」という都路さんの説明に感慨深い様子の加藤。
その後も館内・屋外の様々なフォトスポットで写真を撮り、ミュージアムを堪能した様子。ミュージアムショップでも「これ、可愛い!」「楽屋で使えそう」と、何を見ても心惹かれて目移りしてしまうようで、スタッフから「加藤さん、あと10分くらいで……」と言われ慌てるひと幕も。カードに願い事を書けるコーナーでは公演成功のお願い事もばっちり記した。最後に「とっても素敵なミュージアムで、作者の生い立ちや、『星の王子さま』の誕生秘話も学んで、私もより一層『星の王子さま』への理解を深められました。この経験をミュージカル『リトルプリンス』に活かしていきたいと思います。見どころや可愛いフォトスポットもたくさんあるので、皆さまにも遊びに来ていただきたいです」と感想を話した。
ミュージカル『リトルプリンス』は2022年1月8日(土)から31日(月)まで、シアタークリエにて上演。2月には愛知公演もあり。なお、王子役は加藤と土居裕子のダブルキャスト。星の王子さまミュージアムは神奈川県足柄下郡箱根町仙石原に位置し、箱根登山バス「川向・星の王子さまミュージアム」バス停下車すぐ。開園時間は10:00~18:00(最終入園17:00。第2水曜日は休園 ※3月と8月は無休)。
(取材・文:平野祥恵)
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