ミュージカル『るろうに剣心 京都編』 小池徹平 インタビュー

暴れまわって、心をほぐし、心を躍らせたい


大人気漫画「るろうに剣心‐明治剣客浪漫譚‐」(和月伸宏作)を原作にしたミュージカル『るろうに剣心京都編』がこの5月、IHIステージアラウンド東京にて開幕する。2020年秋の公演中止を経て、待望の上演となった本作。主人公の緋村剣心を演じる小池徹平にとっても「ついに」という感慨があるという。

小池「一昨年、公演中止になったときは、呆気にとられたような気持ちになりました。だけどそれ以降も、『これで終わりたくない』という気持ちは持ち続けていて、脚本・演出の小池修一郎先生とも連絡を取っていましたし、この作品への気持ちはずっとありました。だから今回の上演が決まったときは、『ああ、ようやく』と喜びを感じました。まだ油断ができない状況への不安も、半々でありますけどね」


どんなに気をつけても不安が付きまとう嫌な時代ではあるが、作品そのものへはやはり前向きな気持ちが湧いてくる。

小池「まずIHIステージアラウンド東京は、絶対に立ちたいと思っていた劇場なんです。あの劇場で上演された劇団☆新感線さんの『髑髏城の七人』が大好きですべて観に行ったので、あの場所に立てるんだ!という嬉しさがあって。まだ客席からの景色しか経験したことがないので、早く逆側から見たいし、走り回りたいです。実際にあの舞台に立ったら、『走り回りたいなんて言わなきゃよかった…』と思うかもしれないですけど(笑)」


小池がそう明かすのも頷ける。IHIステージアラウンド東京は、客席が360度回転し、そのまわりを取り囲むように舞台とスクリーンが設置された特殊なつくり。観客にとっては、座っているだけで唯一無二のエンターテインメント体験ができる劇場だが、「走り回る」側にはなかなか大変な広さでもある。さらにこの作品は、ミュージカルで、殺陣も満載。体力は必須だが、華やかで賑やかなものになるだろう。

小池「剣心が歌うわけですものね。どんなふうになるのか楽しみにしています。殺陣に関して僕はまだ経験が多くないので、人一倍やらなければというプレッシャーもありますが、カンパニーには信頼している仲間もいますし、変に気張りすぎず、みんなにも頼りながら楽しくやりたいです」


脚本・演出の小池修一郎とは、『1789 -バスティーユの恋人たち-』(16年・18年)ぶりのタッグ。

小池「小池先生とはまだ2作目ですが、以前お世話になって以来、当時は食事をご一緒したこともあり、自分の中ではなんでも言えるような信頼関係が築けていると思っています。今作では、原作があってイメージもある程度できあがったキャラクターを演じるので、そこで先生がどんな演出をつけてくださるのかも楽しみにしています」


子供の頃から原作を読んでいたという小池。自身が演じる緋村剣心の魅力を問うと、彼ならではの視点で語ってくれた。

小池「自分の過去を受け入れて、ちゃんと今を生きようとするところが好きです。その覚悟が、あのやさしい緋村剣心として表れている。子供の頃は、人斬り抜刀斎(=剣心)を強くてカッコいいと思っていたのですが、僕自身も大人になって、いろんな経験をして、あのほんわかした剣心のカッコよさもわかるようになりました。彼の持つ両方のカッコよさを大事に演じていきたいです」


共演には、緋村剣心の後継者として人斬り役を担っていた志々雄真実役に黒羽麻璃央、剣心の師匠であり育ての親でもある十三代目飛天御剣流継承者・比古清十郎役に加藤和樹をはじめ多彩な面々が揃う。

小池「今回、和樹さんが出演することになったのは、僕にとっては非常に大きいです。(Wキャストで同じ作品に出演した経験はあるけれども)お芝居で共演するのは実は初めてなので、そこを楽しみにしています。あと、個人的には加藤清史郎くんの瀬田宗次郎が大好きなキャラクターなんです。宗次郎の葛藤や徐々に狂っていく様、そしてあのスピード感を清史郎くんがどんなふうに演じるのか楽しみです。そして麻璃央くんが志々雄をどうカッコよく演じてくれるかも期待しています。カーテンコールまで包帯巻いて出てくるのかな?(笑)。山口馬木也さんの斎藤一も見たいし……ほんと、みんな楽しみです」


老若男女に愛される原作、個性豊かなキャスト陣、小池修一郎の演出、オリジナルの音楽、特別な劇場……否が応でも期待が高まる。

小池「楽しい作品になればいいなと思っています。客席が回る劇場もエンターテインメントですしね。今は皆さん、感染症対策ですごく厳しいルールを守って観てくださる。マスクや消毒はもちろん、客席でおしゃべりもできないし、笑うのも気を使ってくださって、きっと心まで縛られているような気持ちになると思うんです。だからせめて僕たちが、客席の皆さんの代表として、暴れまわって、心をほぐしたいし心を踊らせたい。せめて劇場にいる間は、自由な感情になってほしいです。『こんなご時世でも来てよかったな』と思わせるステージに、絶対にしたいですね」


インタビュー・文/中川實穗


※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載

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【プロフィール】
小池徹平
■コイケ テッペイ ’86年生まれ。大阪府出身。’16年、第42回菊田一夫演劇賞を受賞。今年俳優生活20周年を迎える。