ブロードウェイミュージカル『コーラスライン』来日公演が4年ぶりに開幕!初日レポート!│初演キャストであり演出振付を担当するバーヨーク・リーが語る。

昨日、8月11日(木・祝)に東京・渋谷オーチャードホールで、ブロードウェイの歴史上に燦然と輝くミュージカル『コーラスライン』の来日公演が、初日の幕を開けた。同作は、1975年にブロードウェイで初演され、トニー賞9部門を受賞。15年(続演回数6,137回)にも及ぶ大ロングランを記録した、ミュージカルの金字塔ともいえる名作だ。原案・オリジナル振付・演出のマイケル・ベネット(1943~87年)は、ダンサー仲間を集め、個人的な体験やダンスへの思いを語り合うトークセッションを実施。性的嗜好にまで話が言及した、このセッションをもとに『コーラスライン』を作り上げた。

物語の舞台は、ショービジネスの街、ブロードウェイのとある劇場。新作ミュージカルのためのダンサーのオーディションの真っ最中で、最終選考に残った17人が、舞台上の1本の白いライン(コーラスライン)に並んでいる。新進気鋭の演出家ザックは、彼らに問いかける。「君たち自身を知りたい。君たちはどんな人間なのか?」。ダンサーたちは、戸惑いながらも自分自身の人生について赤裸々に語り始めた──。

世界中で上演が繰り返されている同作だが、来日公演は4年ぶり。前回の来日公演に続き、初演でコニー役を務めたバーヨーク・リーが、演出・振付・再構成を手がける。

マイクを持って解説する演出振付のバーヨーク・リー ©GEKKO

初日の前にはプレスコールが行われ、バーヨークの解説のもと、作中の4曲が披露された。冒頭で、バーヨークはこんなエピソードを披露した。「初演の少し前に、マイケルに『いいかい、バーヨーク。あなたは、この作品を世界中に届けるんだよ』と言われたの。あれから47年、今、日本でまたこの作品を上演できることをとても誇りに思うわ」

バーヨークは、マイケル自らが語った、同作のコンセプトについても紹介してくれた。

「みなさんの多くは、きっとオーディションというものを見たことがないわよね?舞台に立っている俳優が、どうやってここまで来たのか──。それを見ていただきたいというのがコンセプトになっているの。舞台構造もとてもシンプルで、白い線(コーラスライン*)の前で行われていることは現在進行形のオーディションを、後ろで行われていることはキャラクターの記憶やキャラクターが頭の中で考えられていることを表わしているの」

2回に及ぶトークセッションで収録したテープを、マイケルは、繰り返し聞き、オーディションをテーマにした同作の構想を練り上げたという。

「最初のワークショップでは、上演時間が4時間を超えてしまったの(笑)。そこでマイケルは、いくつかのエピソードを合わせてひとつのナンバーにするという方法を思い付いたの。それが、『ハロー12歳、ハロー13歳、ハロー恋』というナンバーよ」

当初はマギーやコニーにビックナンバーがあったというエピソードも興味深い。

同作のクライマックスで、マイケルが自分を投影したと言われているザックは、ダンサーたちに問いかける。「もし踊れなくなったらどうする?」。そのアンサーともなるナンバー「愛のためにしたことは」についてバーヨークはこう解説する。

「それぞれのキャラクターには、それぞれのストーリーがあるわ。たとえば、私が演じたコニーは、田舎に行って食べるのを楽しんで太ってやる、そして子どもを産むと言うの。ハリウッドに行ってスターになると言うキャラクターもいるわ。この曲で伝えたいのは、ダンサーにもそれぞれの人生があるということ。この曲はダンサーへのアンセムのようなものよ。子どもの頃、ダンスを始めた時、この仕事でいくら稼げるか考えないわよね(笑)。ダンスするのが楽しくて愛しているからこそ踊っていた──そういうナンバーよ」

『コーラスライン』は、オリジナルキャスト本人のエピソードをもとに作られた、ダンサーのリアルを見せるミュージカルだ。初演から半世紀近い時間が流れ、時代は大きく変化したが、夢を追うダンサーたちの情熱はきっと変わらない。なんといっても、来日公演を率いるのは、オリジナルキャストのひとりであるバーヨークである。また、キャストは、アメリカでのオーディションを勝ち抜き、作中のダンサー同様、ブロードウェイを目指す俳優たちだ。2022年夏、オーチャードホールの舞台にダンサーたちのリアルがある。

< コーラスラインとは >
それは、舞台に引かれた、1本の白いライン
役名もないキャストたちが、このラインより前に出ないようにと引かれた1本の白いライン。
それは、メインキャストとコーラスの境界線・・・