屋良朝幸「これからの地球にとって大切なメッセージをサラッと描いている」 オリジナルミュージカル「りんご」取材会レポート

【上段左から】大倉杏菜、川原一馬、加藤良輔、斎藤准一郎、白木原しのぶ
【下段左から】林アキラ、吉沢梨絵、岸祐二、Micro、屋良朝幸、梅田彩佳、松澤一之、細貝 圭、上川一哉
©オリジナルミュージカル「りんご」製作委員会/撮影:岩田えり


オリジナルミュージカル「りんご」オンライン公開稽古および取材会が、11月8日(火)に行われ、屋良朝幸、梅田彩佳、Micro(Def Tech)が出席した。

本作は、青森のりんご農家・木村秋則氏の実話を基に、「できるわけがない」と否定的な意見が多かった、りんごの“自然栽培”に人生の全てを賭けた彼の生き様と、その家族の半生をダイナミックに描いたミュージカル。脚本を青木豪、演出を荻田浩一が務め、木村秋則役を屋良、妻のミチコ役を梅田、秋則の兄・ハルヒコ役をMicroが演じる。
物語の舞台は青森県のある農家。りんご農家の木村家の一人娘・ミチコと結婚し、婿養子入りをした秋則は、木村家でりんご栽培をしていた。そんな中、ミチコの体に異変が起こる。その原因は、散布している農薬だった。ミチコの身体を気遣い、無農薬のりんご栽培を決意するが、そんなことは絶対に不可能と言われた栽培方法は険しい道のりだった。何度も失敗を繰り返し、うまくいかず、秋則は失意の中、岩木山へ向かう。
そして、自然栽培の糸口となる“土”と出会った。自殺まで意識していた秋則は、一念発起し、りんごの自然栽培に勤しむ。そして、ついに無農薬でのりんごの木の白い花が咲く。

 

この日の公開稽古では、物語の冒頭の一部が披露された。「咲いた、とうとう咲いた」と屋良が演じる秋則が喜びの声を上げるシーンがスタート。その後、秋則と兄・ハルヒコのやりとりからミュージカルナンバーへ。アップテンポな楽曲で、二人が“農業”について歌う。レゲエユニット「Def Tech」としても活躍しているMicroのラップ調の歌唱もあり、キャストたちがポップに踊る姿が印象に残る。

©オリジナルミュージカル「りんご」製作委員会/撮影:岩田えり

続いて、秋則とミチコが出会い惹かれ合うシーンへ。地元が同じ二人は、学生時代のある出来事を共有していることが判明。ピアノの旋律が美しいバラード調の曲調に合わせ、ミチコが学生時代の思い出を歌い上げる。それに応じるかのように秋則が歌いかけ、二人の距離が縮まっていく。キャッチーなメロディーラインが印象的なナンバーだ。

思いを寄せ合った二人は、その後、結婚。りんご栽培のために農薬を散布すると体調を壊すというミチコの姿を見た秋則は、「おかしくないか、そんなに体壊してまで食べ物を作るって」と疑問を持ち始める。そして、アメリカの開拓者、通称「アップルシード」がりんご栽培の方法をポップな楽曲に乗せて説明する。秋則はそれを聞き、新たな栽培方法に思いを馳せる。

青森弁での会話、カントリーやポップスなど曲調は違えどいずれもキャッチーな楽曲、農業やりんご栽培についての歌詞という組み合わせがこれまでにない新しさを感じさせた。チグハグのように見えて、ピタッとハマり、本作のエンターテインメント性を高める要素になっている。コミカルな掛け合いも多く見られ、キャストたちは自然と笑顔に。リラックスして心から楽しんで演じていることが窺い知れた。

©オリジナルミュージカル「りんご」製作委員会/撮影:岩田えり

その後の取材会で屋良は、「木村秋則さんが生きてきた人生を2時間半という短い時間で描く物語ですが、これからの地球にとって大切なメッセージをサラッと描いています。ものすごくエンターテインメント要素が強い中でサラッといいことを言っているんです。これからの僕らがしていかなければいけないことを押し付けるわけではなく、エンターテインメントとして楽しく見せて、でも、私たちがこれからどう次の世代につなげていくかという重要なメッセージがしっかり込められていると思います」と挨拶。

物語の基となった木村さんから「エンターテインメントじゃないと伝えられないこともいっぱいある」と言われたことも明かし、「僕らもこれからどうするかということを考えながら作っています。ぜひ、そうした問題提起を持ち帰っていただいて、何ができるかなということを考えていただけたらありがたいなと思っています」と思いを語った。

一方、梅田は「この村に住んでいる人たちは、みんなすごい人たち。だからこそ、りんごを無農薬で作ることができて、物語が広がっていったんだろうなと思います。物語が進むにつれて、おもちゃ箱の一個ずつが開かれていくように、どんどん物語が進んでいって、最終的には、感動するミュージカルになっています」とアピールした。

©オリジナルミュージカル「りんご」製作委員会/撮影:岩田えり

そして、Microは、「この作品の見どころはそのエンターテインメント性。音楽性が素晴らしい。ファンクをはじめ、様々なバリエーションの楽曲があり、その音楽の上にメッセージが乗っかるから、“りんご”への想いがちゃんと伝わる。ただのお芝居、活字だと届かないことを届けることができるのがミュージカルで、それがこの作品の一つの使命だと思いました」と思いを明かした。

今作はオリジナルミュージカルのため、0から作り上げる苦しさや楽しさがあると思われるが、屋良は「今は、稽古場が楽しすぎて、稽古が終わってくれるなと思ってます。どのキャストもキャラが粒立っているし、こんなに面白いメンバーを集めるなんて制作はすごいと思う。稽古中も笑ってしまってセリフが言えないこともあるくらい楽しい作品。そうした瞬間に生まれるものを楽しめる作品なので、きっと何度観ていただいても新しい発見があると思います」と笑顔で語る。

梅田も「私も、こんなに笑いが絶えない稽古場は初めて」とにっこり。「屋良さんが(稽古場で)ムービーを撮ってくれて、屋良さんご自身が編集したりナレーションを入れたりしてくださっていて、ホームページに上げてくれています。屋良さんを中心としたカンパニーの雰囲気の良さが本番にも出ると思うので、それがたくさん出ればいいなと思います」と屋良の座長っぷりを明かした。

©オリジナルミュージカル「りんご」製作委員会/撮影:岩田えり

続いて、Microも「コロナ禍でご飯に行けたりはしないんですが、稽古中にコミュニケーションをたくさんとってくださっています。僕は音楽の畑で生きてきたので、舞台に慣れ親しんでいませんでしたが、そんな思いをそれを取っ払っていただいて、本当によくしていただいています。感謝しかないです」と屋良に感謝を述べた。

改めて本作の見どころを「一つあげるのは無理」と言いつつも、屋良は「音楽が様々なジャンルの楽曲があります。ラップだったりヒップホップテイストもあれば、カントリー調もあって、こんなに幅広い音楽を使う作品を僕は今まで見たことない。ミュージカルというカテゴリーをぶち壊していると思ってるんです。クリエイターさんの皆さんの、新しいエンターテインメントを作っていきたいという思いをすごく感じるし、音楽はこの作品の一つの武器になっていると思います」と語る。

Microも「1回じゃ観きれないと思います。観れば観るほど面白くなる作品です。何度も通ってください」と呼びかけ、梅田は「色々な果物がある中で、りんごって優しくて、小さい頃から身近な果物。でも、そのりんごの背景には知らないことがいっぱいあると思います。私も無農薬のりんごがあることも知らなかった。ぜひ、そういう方にも気軽に観にきていただけたらと思います」とコメント。

そして、最後に屋良が「次の世代に残していけるものってなんだろうなとすごく考えさせられる作品になると思います。ただ、それをエンタメとして楽しく消化できる。観終わった後、私たちが身近でできることってなんだろうと考えるきっかけになっていただければいいなと思います」と改めて思いを述べ、取材会を締めくくった。

 

取材・文:嶋田真己