英国人作家チャールズ・ディケンズによる名作「クリスマス・キャロル」を原作に、市村正親の主演でお届けするミュージカル「スクルージ ~クリスマス・キャロル~」。人嫌いで意地悪な金貸しの老人・スクルージが、クリスマスイブの夜に現れた精霊によって過去、現在、未来への旅へと連れ出される。一夜の夢の中で、スクルージの心根と運命は変化していき――。このクリスマスの奇跡のような物語に、新たに出演することになった相葉裕樹。彼は、どのような想いを胸に物語に飛び込んでいくのか。話を聞いた。
※本取材は稽古開始前に実施。
――ミュージカル『スクルージ ~クリスマス・キャロル~』に、新たなキャストとして参加されることになりました。今はどんなお気持ちですか?
何度も上演されている作品で、そういう作品に新キャストとして参加させていただくのは、身が引き締まる思いです。ある程度、もう完成されている中に飛び込んでいきますので、やはり一緒にスタートする作品とは少し、気持ちが違います。緊張します。皆様にご迷惑をおかけしないよう、何か新しい風を送りこめたらという気持ちで挑戦させていただこうと思っています。事前にしっかりと準備して、稽古に臨めたらと思います。
――市村正親さんとの共演は、7年ぶりになるそうですね。
嬉しいです。自分の成長した姿…と自分で言ってしまうのもなんですが、他の現場で培ったものなど、何かしらを感じ取ってくださって、変わったなと思っていただけたら嬉しいです。市村さんは、本当にいろいろと親身になってくださる方ですし、周りの方々にすごく優しくて、気を使われている方。僕にもすごく優しくしてくださいましたし、まさに大先輩という方です。自分が市村さんの年齢になったときにどうなっているのか、ちょっと想像がつかない領域。これだけ長くミュージカル界の第一線で活躍し続けていることが、本当にすごいことですよね。
――俳優としての市村さんの魅力はどのようなところにあると感じていますか
常に探求していらっしゃる方です。ご自分でもよくおっしゃっているんですけど、今日はこういう感じで演じてみた、ああいう感じで演じてみようか、といろいろ試していらっしゃるんですよね。舞台を拝見させていただいたときに、楽屋でお話させていただいたときも「今日はちょっと、ここをいつもと変えてみたんだよ」とお話していて…俳優には正解がない、答えが無いからずっと探し続けなければいけないんだよね、とおっしゃっていました。自分の中の表現の可能性を、アグレッシブに挑戦している姿には感銘を受けますし、大御所と呼ばれるようになったとしても、俳優とはそういう仕事なんだな、と思わされます。何がどう届くか、正直なところお客様がキャッチするものですから、その時々によって表現方法も変わる。時代とともに変化し続けないといけないと思いました。
――今回は市村さんが演じるスクルージの若いころを演じられます。どんなふうに演じたいとイメージされていますか。
スクルージは、老人と呼ばれる年齢になっても、あの当時のことをとても後悔しているんです。なぜ、あの時に自分の言葉で愛している人を止められなかったのか。手遅れになって、失ってからでは遅いということを、もう変えられないことがわかってしまっているって、めちゃくちゃ切ないですよね。スクルージの抱えている闇や弱さ、その塊が僕の演じる若きスクルージなので、老人になっても引っかかっている部分を、ちゃんと引っかかりを持たせられるように演じたいです。そこの感情をしっかりと届けられるようにしたいです。誰しも、人生の中で後悔ってあると思いますし、だからこそ共感できる部分はあるんじゃないかと思うんです。変えられない過去だけれども、しっかりと見つめて、その後悔をしっかりと感じてもらえたらと思っています。
――ストーリーの魅力をどのようなところに感じますか?
おじいちゃんになっても変わることが出来るんだ、ということなんですよね。そういうところも本当に良い作品だと思います。よく、28歳ごろまでに人格って形成されるなんて聞きますけど、あの年齢までずっと頑固に生きてきた人が変わっていく。その”変われた”ことに、すごく希望があります。僕も、まだまだ変われるんだ、と思わせてくれます。
――クリスマスの奇跡のようなお話ですが、相葉さん自身のクリスマスの思い出を聞かせてください。
クリスマスは、割とちゃんとやってもらってました。プレゼントが用意されていて、朝起きるのがめちゃくちゃ楽しみでした。なかなか寝れなくて、寝ないで頑張って起きておこうと思っても寝ちゃって…目覚めたらプレゼントがあって。本当に上手にやってくれていたな、と思います。好きなファミコンのソフトとかが置いてあって、めちゃくちゃ遊びました(笑)。クリスマスは、あの空気感がいいですよね。クリスマスソングが流れていて、あの浮かれた気分、ちょっと気持ちが高揚する感じがいい。カップルも嬉しいんでしょうけど、やっぱり子どもの頃のクリスマスは、すごくワクワクしましたから。プレゼントが貰えることももちろんですが、サンタさんがいるんじゃないかとか、そのファンタジーの中に自分が居る感じがすごく楽しいんですよね。そのファンタジーの世界をちゃんと親とかが守ってくれていたことが、今考えるとすごいな、と思います。自分に子どもができたときも、絶対にやりたいですね。
――最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
クリスマス恒例の作品になっていると思いますが、そんな作品にはじめて参加させていただきます。皆さんと一緒に、僕自身もこのクリスマスシーズンを最高のものにできるように楽しんで、精一杯若き日のスクルージを演じさせていただきます。ぜひ、素敵なクリスマスを、ご家族や大事な人、お友達と一緒に遊びに来ていただきたいと思います。お待ちしております!
取材・文/宮崎新之