柿澤勇人&上川一哉インタビュー|ミュージカル「ジキル&ハイド」

2001年の日本初演から上演を重ねてきた「ジキル&ハイド」。初代・鹿賀丈史からタイトルロールを引き継いだ2代目・石丸幹二は、今回で有終の美を飾ることになった。そして3代目を引き継ぐ柿澤勇人とWキャストで上演される。また、ストーリーテラーとなる弁護士アターソンを、石井一孝と上川一哉がこちらもWキャストで演じるという。柿澤と上川はともに劇団四季出身で、共演はなんと13年ぶり。久々の共演となる2人に話を聞いた。

 

――出演が決まって、率直なお気持ちは?

上川「驚きが一番でしたね。カッキーとも久しぶりにご一緒させていただくのもすごく楽しみです。作品のお話をいただけるとも思っていなかったし、カッキーとはいつか共演できたらと思っていたところ、こんなに早いタイミングでできると思っていなかったので、びっくりしました」

柿澤「僕は学生のときに初演の鹿賀丈史さんを拝見していて、その後に石丸幹二さんが演じられていて……どちらも大スターじゃないですか。この役はそういう大御所の方がやる役なんだろう、と勝手に思っていたので、自分がやるなんてまるで考えていませんでした。驚きと同時にプレッシャーも感じましたが、新しいものをみんなで作りたいと思います。上川くんは劇団四季での2期上の先輩で、同じ役もやったことがあるので13年の時を経て一緒にやれるのは嬉しいですね」

 

――作品の物語としての魅力をどのようなところに感じていますか?

柿澤「主人公の人格が変わっていって、破滅に向かっていく話ってすごく演劇的だと思うんですよ。映像だと、編集や特殊メイクなどで面白くしていくんでしょうけど、舞台の上だと声も加工できないし、そうはいかない。生身で芝居しないといけないので、演劇としてはもってこいのお話だとおもいます。フランク・ワイルドホーンの楽曲がすごくキャッチーで力強いんです。やるほうはすごく大変だけど、やりがいがありますね」

上川「この人間模様をライブでやるからこそ、この作品は面白いんだろうな、とは感じています。。心の動きがとても激しいので、そこをより人間っぽくというか、人間らしさを出していけたらいいなと思っています」

柿澤「今回、メインの4役が全部ダブルキャストなんですよね。完全にセパレートするのかと思ったら、いろいろな組み合わせで上演するので、そこの違いもまた楽しみです」

 

――柿澤さんは以前観劇した際に、ノートをとってらしたとお聞きました。

柿澤「学割で見ていたころ、まだ四季にも入ってなくて、入ってみたいな、と思っていたような頃ですね。日生劇場の2階でした。どうやったらこんな声が出るんだろう、とかそういうことばかり書いていましたね。ノートはまだ…残っていると思います。生意気なことばかり書いていたと思いますよ(笑)」

――フランク・ワイルドホーンの音楽は、実際に歌ってみてどのように感じられますか?

上川「そのシーンで聴くと、すごく聴き心地がいいんですよね。でも実際に歌ってみるとすごく難しい。日本語の歌詞をどうまとめればいいのか、とか。音楽の中にストーリーがあって、すてきなナンバーであるだけに、自分が歌うとなると、難しいだけじゃなくて奥が深いですね」

柿澤「もうキーが高いんですよ。とにかくもう上に上に行かせたがる。もっと上だ、上でハモれ、ってね。いやもう無理無理!ってなっちゃうくらい、感情的にもかなり上にいったところで歌わせたがる印象で、当然疲弊するんですよ。それで一度、フランクに「もう声が出ないよ」って言ったら、それが正解だ、って言うんですね。僕の曲はすべてイグゾースト(くたくたになる、余すことなく研究する)することを増幅させるために書いているからね、そこまで行かないと伝わらないでしょ、ってことなんです。それこそ人格が変わった時とかのモーメントはおそらくかなりのテンションに合わせていると思うので、すごく疲れるんじゃないかな」

 

――お2人は劇団四季のころにご一緒していて13年ぶりとのことですが、お互いの印象はいかがでしょうか。

上川「カッキーはもう、劇団時代から素敵でした。卒業してからもその声とルックスで活躍されていたので、カッキーが劇団を辞めた後は「もしカッキーが劇団にいたらこの役をやっていたかな?」とか考えたりしていましたね。これをカッキーがやったらどうなるんだろう、って思ったりもしていましたし、今回も普通にカッキーの歌が聴けるのが楽しみです(笑)。四季では僕の方が期は上ですけど、カッキーはやめてからいろいろな経験をしていると思うので、お世話になります!っていう感覚です」

柿澤「僕がよく覚えているのはオーディションの時。ダンス審査のお手本で踊ってくださった方が上川くんでした。オーディションを受けながら、なんだこのカッコいい人は!って思っていました。主役はもちろん、歌えて踊れたので、もう上川一哉は何でもでる人でしたね。「人間になりたかった猫」で僕はアンサンブルだったんですけど、浅利慶太先生が「お前、上川の勉強しとけ」って言って、そしたら本当に出ることになって…。「春のめざめ」でも同じ役をやって一緒に勉強したし、上川君は歌声も癖が無くて、スコーンと抜けていくんです。だから今は、すごく不思議な感じですね。ご縁なんだろうな」

 

――稽古もこれからだと思いますが、どんな稽古場になりそうですか?

柿澤「今回、僕は顔なじみもたくさんいますし、共演してきた仲間もいます。特に、笹本玲奈ちゃんとは「東京ラブストーリー」でも一緒で、彼女とは「(「東京ラブストーリー」での経験は)一生の戦友になるだろうね」っていうくらい絆が深まったと思うので、この作品ではまた違う関係性ですけど、どうなるか楽しみです。そして石丸さんはハリー・ポッターをやりながらこちらの稽古もやるので…石丸さんの前で疲れたなんて言えないですね」

上川「僕はほとんどの方々がはじめましてですし、いろんな刺激をいただけるんじゃないかと思って楽しみです。劇団では、共演していなくても顔見知りというか、廊下でばったり会ったりしているような感じなんですよね。今回は、いろいろな場所でいろんな経験をされてきた方が集まって作り上げていくので、すごく面白くなりそうですし、本当に学びになると思っています」

 

――最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします!

上川「僕自身もすごく楽しみにしていますし、挑戦だと思っています。カッキーからもいろんな刺激をもらって、僕らが新しい風になれるように頑張りたいと思います!」

柿澤「すごい名作ですし、王道といわれる作品でプレッシャーもすごく感じています。生半可な気持ちではいけないと思いますが、せっかく初めて参加させていただくからには、新しいジキル&ハイドを作っていくことが、僕がやる意味だと思っています。ご覧になったことがある方も、無い方も、新鮮な気持ちで楽しんでいただけるように、稽古を頑張ります!」

取材・文/宮崎新之
撮影/番正しおり