ミュージカル「Ordinary Days」 相葉裕樹+小池竜暉 インタビュー

左:相葉裕樹 右:小池竜暉

2008年にオフ・ウエストエンドで初演を迎え、翌2009年にオフ・ブロードウェイで上演されたソングスルーミュージカル「Ordinary Days」。気鋭のクリエイター、アダム・グウォンが作詞作曲を手掛け、実直でさわやかな演奏とともに、誰もが共感できるぬくもりや葛藤を描き出していく本作。相葉裕樹が主演を務め、GENICの小池竜暉が本作で俳優デビューを果たす。取材日に初めて顔を合わせたという2人に、話を聞いた。


――出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか

相葉 出演者は4人のみ、それにピアニストが1人というミュージカルで、かなり濃密な作品になると思いました。この作品のことは知らなかったんですが、普遍的な作品と言いますか、とても共感性が高いものになっています。稽古はこれからですが、4人の運命がどう変わっていくのかを楽しみたいと思います。そして稽古の中で、自分自身と共感できる部分をたくさん見つけていきたいと思います。

小池 僕にとっては、ミュージカルが初めて。というか、演技をさせていただくこと自体が初めてです。お話をいただいたときに本当に嬉しくて、演技をすることにも興味を持っていたんです。僕は普段、GENICというグループで活動していて、歌って踊っているんですけど、歌がすごく好きなんですよ。その大好きな歌を、今回ミュージカルという部分に落とし込んでいけるのはすごく嬉しいですね。その分、頑張らなきゃと気を引き締められました。


――物語の印象はいかがですか。

小池 タイトルの通り、とても日常的な部分をあまり飾りすぎることもなく表現しているように思いました。昔あった出来事とか、今自分に起きていることなど、すごく投影しやすい部分がたくさんあるんじゃないかと思います。4人のストーリーがあるので、絶対にとまでは言えませんが、どこかに自分の何かが引っかかったり、こんなこともあるよな、と感じていただいたりして、楽しめるんじゃないでしょうか。すごく心が温まると思います。そして、その4人のストーリーが交わっていくのも面白いですね。

相葉 本当に普遍的なものを描いていました。等身大の大学生や青年が登場してきて、いろいろな日々のことから葛藤が生まれてきたりして…。そして、交わらないけど、交わっているみたいな、絶妙な感じの4人が面白いです。あと、演出の方に聞いたんですが、ピアニストの方もステージ上で見えているような形になるそうなんですよ。それってすごくオシャレだなと思って、とてもエモーショナルな気分になれる作品になると思いました。人が恋しくなるような2月の雰囲気にもぴったりなんじゃないかな。


――全編ピアノ1本だけ、というシンプルなお芝居になりそうですが、本作ならではの特徴的な部分に対して感じていることはありますか?

小池 僕にとっては何もかも初めてなので、逆になんでも来い!って気持ちです。僕たちGENICは生バンドでのパフォーマンスをやったことが無いので、生身の演奏者の方がいるところで歌ったりするのも初めてなんですよ。すごくワクワクしています。きっと、音源で歌うよりも、その場に生身の方がいらっしゃることで、臨場感というか、一緒に演奏している感覚があると思うので。すごく楽しみです。

相葉 4人だけでずっと芝居を持たせなきゃいけないので、かなり責任重大だな、と思います。それぞれに役割、1人1人に負荷がかかってくると思うんですよね。全員初めてご一緒する方々ばかりなので、どんなふうにお芝居を作っていかれるのかも楽しみです。演出の田中麻衣子さんも、いろいろとセッションをしながら芝居を作っていくスタイルだそうなので、そのあたりは皆さんを知る時間としてありがたいですね。とはいえ、今回は稽古期間がやや短め、さらにダブルキャストの役もあるので、ちょっとドキドキしていますが、濃密な空間になると思うので、お芝居の力、生演奏の音楽の力で巻き込んでいきたいと思います。


――小池さんは以前からお芝居に興味があったということですが、きっかけになる作品や出来事はあったんでしょうか。

小池 具体的な作品があるわけではないんですが、昔から家族で一緒にドラマを見たりしていて、その時は特に演じたいという感覚でも無かったんですけど、俳優さんが言っていたセリフを真似してみたり、僕だったらどう言うかな?って考えたりしていたんです。そこから、なりきって演じてみたら楽しそう、って勝手に思っていたんですね。とはいえ、実際に自分が演技をしてみるとなると、どうなるかまだ分からないですけど…。でも、すごく素直な気持ちで、お芝居が楽しそうだと思っています。


――相葉さんが小池さんくらいの時に、これをやっておけばよかったなど、お芝居に関して思うところはありますか?

相葉 小池くんくらいの年齢の時の俺は…めちゃくちゃ腐ってたな(笑)。だから、小池くんはすごく真っ直ぐで素直な方なんだな、って思います。その素直さが、今回のウォーレンという役にもきっと活きてくるはず。実は、本当に今日、この場で会ったばかりなんですよ。あだ名とかはあるの?

小池 リュウちゃんです。

相葉 じゃあリュウちゃんで(笑)。そのリュウちゃんの素直さがきっと役にピッタリだと思うから、いろいろ考えたりすると思うけど、思ったままにいっぱいいろんなことをどんどんやってみたらいいんじゃないかな。僕自身、その時、その時ですごく必死に、全力でやっていましたし、だからこそいろいろな発見がありましたけど、何より大事なのは楽しむことじゃないかな。


――自分自身が楽しんで演技に挑めているかどうかが大切だと。

相葉 そうです。今回のリュウちゃんみたいに、普段はアーティストをされていてお芝居に挑戦するってなったときに一番怖いのが、その作品があんまり楽しくなかったみたいな時。すごく才能があるのに、演技が嫌いになっちゃったり、役者は嫌だって思うようになっちゃったりするのは、すごくもったいないと思うんです。だからこの作品で、すごく楽しかったとか、もっと役者をやりたいと思ってもらえるような作品を一緒に作っていきたいですね。僕が演出するわけじゃないけど、そういう空間を一緒に味わいたいです。

小池 すごく根本的なことを聞きたいんですけど…セリフって全部覚えていくんですか?

相葉 そんなに根を詰めて覚えなくてもいいと思うよ(笑)。早く入れるのももちろんダメじゃないんだけど、もう最後のギリギリまで、幕開けまでに間に合えばいい。…甘やかしすぎかな(笑)。演出の田中さんがどうおっしゃるかにもよるけど、最初は台本を持ってていいし、4人しかいないんだからさ。


――セリフも変わっていくかもしれないですしね。と言いながら、初日から相葉さんが台本持たずに入ってたりするかもしれないですが…(笑)

相葉 いやいや(笑)。僕は結構(セリフが入るのが)遅い方なんで、本当に頑張って入れるんですよ。そういう努力はします。無理なんですけど…


――とにかく努力で覚えていくしかないんですね。続いて役どころについてもお聞きしたいと思いますが、キャラクターの印象などはいかがですか。

相葉 僕が演じるジェイソンは、本当に素直なところもあれば、恋人のクレア(夢咲ねね)とぶつかってしまうこともあって、女々しいところもあるんです。ごくごくありふれた、普通の青年という感じがしています。こういう人いるよね、と納得するような感じですね。その中で、自分とジェイソンの共通点とか親和性のある部分を高めていけたらと思います。

小池 ウォーレンはアーティストという部分で、共通点があるんじゃないかと思っていますね。目指しているところが同じような感覚があります。僕もただただがむしゃらに夢を追いかけていた時期がありますし、今もその中にいますけど、ウォーレンはどちらかというとその目指すところが漠然としているように思います。あまり先が見えていなくて、とにかく目の前のことだけ、今すべきことだけをやっているんですね。そのがむしゃらさは泥臭くてすごくいいと思いますし、いろいろな人に共感性をもって届けられる部分じゃないかと思っています。


――この作品で初めてお会いする人ばかりとのことですが、稽古場で親睦を深めるコツなど、考えていることはありますか?

相葉 役者の方っていろんなタイプがいるじゃないですか。今は声をかけない方がいいかな、みたいな雰囲気のときもあるので、僕はうまくバランスを取りながら徐々に行くタイプですね。あんまりガツガツいけないんです。どちらかというと、話しかけてもらった方が助かります。僕からも話しかけるんですけど、なんか今違ったわ…って思ってしまうこともあるんですよね。集中してましたよね、ごめんなさい、みたいな気持ちになってしまう。特に今回は4役それぞれで大変だと思うので。僕と夢咲さんはシングルキャストだけど、ほかの2役はダブルキャストなので、その4人は仲良くなりそうですよね。なので、僕は夢咲さんと仲良くなります(笑)

小池 キャストの皆さんはミュージカルで活躍されている方ばかりなので、あんまりいい言い方じゃないかもしれないですけど、食われないように。僕も負けじと、好きな歌を全力で歌いたいです。お互いに、いい意味で歌のぶつかり合いみたいになったらいいですね。あと、ダブルキャストなので、同じ役でもきっと空気感とか違うものが生まれるんじゃないかと思っています。その2通りの空気感を一緒に作っていけるのが楽しみですし、中本大賀さんの空気感がどんな感じかも楽しみです。


――本作は人生のかけがえのない時間に触れるお話になりますが、お2人にとってのかけがえのない大切な時間はなんですか?

小池 僕は実家に帰ることが一番ですかね。実家に帰って、玄関でみんなに迎えてもらったときがすごく幸せな時間です。犬を飼っていて、最初は誰こいつみたいな態度なんですけど、そのうちにしっぽを振ってくれたりするんです。実家が群馬なんですけど、向かう途中で景色が大自然になっていく時間もいいですね。あとは…日常でいうと、曲を作ってそれが完成した時の幸せとか、コーヒーを挽いている時間とかでしょうか。あと、お抹茶点てたりもするんです。

相葉 えっ、お抹茶点てるの!?

小池 そうなんですよ。コーヒーも豆から挽いて入れるんです。お酒も飲まないし、外にも出かけないので、そういう趣味がどんどん増えています(笑)

相葉 僕は友人と一緒に過ごす時間ですね。とても楽しくて、かけがえのない時間です。特別何かをするわけじゃないんですけど、ご飯に行ったり、ちょっと銭湯に行ったりして、疲れも癒されるし、自分が一番リラックスできる時間なんですよね。同業の友人もいますし、違う業界の人もいますよ。特に仕事の話をするでもなく、どちらかと言えば全然関係ない話をすることの方が多いかな。多少は仕事の話をすることもあるけど、まあ、ほとんどないですね。友人との時間は、仕事を離れているときなので。逆に言えば、それ以外にないんですよ。趣味がない。だから、リュウちゃんみたいに趣味があるのいいなぁ。一応、昔はDIYとかやったんですよ。でも一時的にハマっただけで、もう何年もやっていないから趣味と呼べるようなものでもないし。温泉、銭湯くらいですかね。まとまった休みができたら、温泉に行こうかな、とはなります。


――それぞれのかけがえのない時間を大切にしつつ、今回の公演も頑張っていただければと思います! 最後に、楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

相葉 六本木の俳優座で上演させていただきます。2月の寒い時期、人恋しくなる季節にぴったりの、エモい気分になりながら観ていただけるんじゃないかと思っております。目の前にある大切なもの、大切な何かに改めて気付かせてくれるような作品になっておますので、ぜひお越しいただければと思います。そして、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにも参ります。ぜひ、一緒に濃密な時間を過ごしましょう。お待ちしています!

小池 一見、そうじゃないようにみえて、すごく刺激的な内容になるのではないかと思っています。日常に寄り添っているからこそ、自分に置き換えられることも多いので、自分の人生とも重ねながら、違った世界戦の人生というか、いろいろな人生の交わり方を楽しんでいただければと思います。そして、個人的には初めての舞台で、歌って演技をすることになります。その瞬間をぜひ見届けてほしいので、劇場でお待ちしています。よろしくお願いします!

 

インタビュー・文/宮崎新之