「楽しくつくりたい」花總まりと瀬奈じゅんが語るミュージカル『SUNNY』

韓国の大ヒット映画を原作にしたミュージカル『SUNNY』が、6月から7月にかけて上演される。出演者の花總まり、瀬奈じゅんに話を聞いた。

本作は、韓国で2011年に制作された映画(日本でも2018年に『SUNNY 強い気持ち・強い愛』として映画化)を、世界で初めて舞台化するというもの。バブル経済絶頂期の1980年代と現代の日本を舞台に、学生時代と大人になった仲良しグループ「SUNNY」メンバーが、笑いと涙の青春物語を繰り広げる。脚本・演出を手がけるのは西田征史。

新しいミュージカルが生まれる

――「SUNNY」の世界初舞台化ということで、劇中では松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」や荻野目洋子さんの「ダンシング・ヒーロー」、松本伊代さんの「センチメンタル・ジャーニー」、さらにおふたりのデュエット曲として、あみんの「待つわ」も発表されていますが、現時点でどんなことを楽しみにされていますか?

花總 いろんな分野の方が集まってこられるので、新しいミュージカルが生まれそうな予感がふつふつと沸いています。そういう作品ができあがっていく過程を出演者として体感できるのはすごく楽しみですし、幕が開いてからのお客様の反応も楽しみです。

――花總さんの出演作の中でも異色ですよね

花總 そうなんです。なので楽しみたいなと思っています。変に気負うことなく、出演者の皆さんと楽しく稽古して、本番も楽しくお客様の前に立ちたいなと。共演者を見ればいろんな刺激をもらえて、また新しい自分の取り組み方が見つかりそうな気がしますし。

瀬奈 私はこの作品に出演が決まって、最初に花總さんとお電話したときに「楽しませてね」と言われたんですよ。

花總 (笑)

瀬奈 だから花總さんを楽しませることに徹していこうと思います!(笑)

――楽しい現場になりそうですね

瀬奈 はい。ただ私自身は案外人見知りというか、初めての方に自分をちゃんと出せないので。

花總 そうかな?

瀬奈 なんか変にニコニコしちゃうんですよ。だけど久しぶりにこんなに女性キャストばかりの作品に出るので。

花總 ほんとだ!

瀬奈 男性キャストは2人しかいないです。

花總 彼らのことを思うと、

瀬奈 置いてけぼりにしないようにしないと(笑)。でも女性ばかりの作品というのは楽しみですね。

――花總さんの「楽しませてね」というのはどういう期待ですか?

花總 空気感ですね、まず私たちは役でも親友だから、そういう空気をつくりたいですし。あとは作品として、上手いとか下手とかちゃんとできたとかできないとかそういうことじゃなく、大きく見て「その作品がなにを伝えたいのか」みたいなことを、前段階の自分たちのつながりからつくっていきたいと思っています。それがあれば自然に、技術じゃなくて生まれてくるものがあると思うので。と言いつつも、難しいことも考えずにやっていきたいです。楽しくつくっていきたい。

瀬奈 多分花總さんもそうだと思うのですが、長いこと、プレッシャーのある舞台に出演してきて、独特な空気感の中で自分と闘って張りつめてやってきましたから。今作は、そういう意味でも楽しみたいですね。

花總 共演者もいろんな方がいらっしゃって、若いキャストもいるし、振付はakaneさん(バブリーダンスなどでも知られる振付師・ダンサー)ですし。きっと今まで見てきた景色とは全然違うと思う。それを楽しんで、刺激をもらって、みんなでひとつのものをつくりたいです。

SUNNYのメンバー一人ひとりに物語がある

――映画「SUNNY」はご覧になりましたか?

花總 お話をいただいて韓国版の映画を拝見しました。登場人物のキャラクター設定がおもしろいし、物語全体の設定も深くて、すごく充実感がありました。ただ楽しいだけの作品じゃない、感じるものがたくさんありました。

瀬奈 私もお話をいただいてから日本版の映画を観ました。これから韓国版も観ようかなと思っています。日本版も、花總さんがおっしゃっていたように楽しいだけじゃなく、いろいろな人間模様が描かれていて。SUNNYのメンバー一人ひとりに物語があるのも素敵だなと思いました。

――ご自身の演じる役に関してはどのような印象をお持ちですか? 花總さんは、主婦として何不自由なく暮らす中で千夏(瀬奈)と再会し、SUNNYの再集結に向け奔走する奈美を演じます

花總 奈美のように感じている主婦の方は少なからずいらっしゃるだろうなと想像しました。外からはわからないけれども、実はふと今の自分の生活を客観的に見て、自分を見つめ直してしまう、そういう日々を送っている方はいるのではないかなって。私自身は結婚もしていないし子供もいないので、想像の世界ですけれども。

――ご自身と役が離れている場合、花總さんはどんなふうに役を掴んでいかれるのですか?

花總 想像から始まります。もしかすると違うパターンと重ねて、「こういう感覚なのかな」と思うこともあるかもしれないし。これはどの役もそうですけど、想像から始まりますね。

――瀬奈さんが演じる千夏は、SUNNYのリーダーで、バリバリと仕事をしてきて、現在は大病を患い余命宣告をされたという人物です。どんな印象をお持ちですか?

瀬奈 余命宣告をされてからも悔いなく生きるってどういう感じだろうと想像します。今の私だったら、子供のために家族のために何ができるだろうと考えるけど、千夏は結婚をしていないぶん、そういう気持ちの行き場がきっとSUNNYなんだろうなと思いました。そういう部分を丁寧に演じていきたいです。でも最初から「こうしよう」と決めちゃわずに、お稽古しながら周りの方々と共鳴しながらつくっていきたいです。私はお芝居をするときはいつも、人の役も自分がつくるつもりでやっているので。私の役もみなさんにつくっていただくつもりで、委ねながら、一緒につくっていけたらと思います。

SUNNYのようなキラキラした記憶

――この作品は、青春時代のキラキラした思い出を思い出すような物語ですが、おふたりが今でも思い出すようなキラキラした記憶ってありますか?

花總 私は中学時代です。中学3年のときが楽しかったな。電車通学が楽しかったし、帰りに途中下車して寄り道して、クレープを食べたり、ソフトクリームを食べたり。同じ電車の男の子を「かっこいい」とか言ったりして(笑)。

瀬奈 あるあるですね!

花總 ね。いろんな思い出があります。セーラー服を着て。文化祭とかにもすごく気合が入っちゃったり、クラブ活動もやってたし。

――何部に所属されていたのですか?

花總 バイオリンをやっていたので弦楽合奏クラブです。夏練とか楽しかったですね。

瀬奈 青春を謳歌してますね。私が楽しかったなと思うのは、花組の下級生時代です。春野寿美礼さんと一緒にずっとばかなことをしていて(笑)。でもなぜか上級生に怒られなかったんです、私たち。

――普通は怒られるのですか?

瀬奈 そうですね、怒られます。かけちゃいけないところで変な掛け声かけたりしていたし(笑)。下級生時代の、怖いもの知らずのあの頃は青春でしたね。なんの欲もなかったし。

――歌って踊って演じているのがただただ楽しかったんですね。

瀬奈 私は遅咲きの狂い咲きなんです。特に抜擢とかもされないまま、突然番手が上がっちゃって。ソロを歌ったこともないし、場面をもらったこともなかったのに、いきなりルキーニ(『エリザベート』)を演じることになりました(そののち、組替えを経て月組トップスターを務める)。だからあのなんの欲もないのほほんとした頃をもう一回、一日くらいなら経験したいです。

取材・文/中川實穗