西川貴教と柿澤勇人が語るミュージカル『スクールオブロック』

ミュージカル『スクールオブロック』が8月17日に開幕する。

本作は、ジャック・ブラック主演の映画「スクールオブロック」(’03年公開)を原作にしたミュージカル。鳴かず飛ばずなロックギタリスト・ヒューイがひょんなことから厳格な名門小学校の教師となり、破天荒な授業を行いながら子供たちを、そして大人たちを変えていく物語が描かれる。ミュージカルはアンドリュー・ロイド=ウェバーが音楽を手がけ、2015年にブロードウェイで初演。日本では2020年の上演中止を経て、今回が待望の上演となる。日本版演出・上演台本を手がけるのは鴻上尚史。

主人公デューイ・フィンをWキャストで演じる西川貴教と柿澤勇人に話を聞いた。

デューイになるために必要なのは?

――3年の時を経てミュージカル『スクールオブロック』が上演されますが、今の心境をお聞かせください。

西川「少し時間はかかりましたが、「本来のパフォーマンスを楽しんでもらう」という意味ではいい状況になったと思いますし、そのぶん「待っててよかった」と思ってもらえるような作品にしないといけないなと思います」

柿澤「3年前は稽古が始まるかというところでストップして、一番残念だったのは生徒役のみんなだったと思います。ぜひ2020年版のみんなにも今回の本番を観てもらって、「やっぱやりたかったな」と思ってほしいです。「なんだよ。つまんないじゃん」とは思われたくないですね。そして彼らが喜んでくれるようなものにしたいです。もちろん今回の生徒役のみなさんもすごく才能のあるメンバーなので、僕もそこから学びつつ作っていこうと思っています」

――ミュージカル『スクールオブロック』はこれが日本初演となりますが、どのような魅力がある作品になりそうですか?

西川「ライブシーンは当てぶりではなくガチで子供たちが演奏するんですよ。今はPCで音楽がつくれますし、生の楽器の音を聴く機会も減ってきているように思うのですが、だからこそぜひ「生で鳴っている楽器の音」を楽しんでもらいたいし、味わってもらいたいなと思います。そういう時代に生まれたデジタルネイティブな子たちが敢えてアナログな楽器を弾いている姿も素敵だなと思いますしね」

――子供たちの演奏がすごいと聞きました。

柿澤「僕はまだちゃんと聴いたことないのですが、1,500人ほどが参加したオーディションから選ばれたメンバーですからね。倍率の話じゃないですが、すごいだろうなと思います。ビジュアル撮影の時、僕はかなり久しぶりにギターを触ったのですが、「柿澤さん、もうちょっと練習したほうがいいよ!」って言われて(笑)」

西川「ええ!?」

柿澤「だから稽古中に教わらないと(笑)。舞台ではライブシーンを、理想を言えばお客さんも一緒に盛り上がって、ワーッとライブ会場みたいにできたらいいなと思います。そのライブ感はここでしか味わえないものだと思うんです」

――アンドリュー・ロイド=ウェバーさんの楽曲はいかがですか?

西川「ロイド=ウェバー作品(ミュージカル『キャッツ』や『オペラ座の怪人』など)の持つイメージがある中で、こんなアプローチもできる方なんだという印象を受けました。楽曲から時代までちゃんと感じられるし、かつキャッチーなんですよ。これをできる方はなかなかいないですし、そういう楽曲を歌えるのは光栄なことです」

――柿澤さんはどんな印象をお持ちですか?

柿澤「めちゃくちゃキーが高い。(笑)」

西川「ははは!」

柿澤「ミュージカルでの楽曲というのは基本的に相手に向けての言葉だったり、自分の想いを発するようなものですよね。そして僕たちが演じるデューイはテンションがかなり高くて、頭のさらに上くらいのところで喋っているような人なので、そんな人の思いや言葉がミュージカルの楽曲になって、しかもロックとなると、当然キーが高いんですよ。そこが僕の課題です。高く歌えればいいというわけではないとも思うんですけどね」

西川「そうそう」

柿澤「そして物語の途中まではデューイが子供たちを引っ張っていかないといけない。「こっちに来い!」って舵を思いっきり切らないと物語が進んでいかないですからね。体力がいるだろうな……。簡単に歌える曲は一曲もないですしね。かなりハイカロリーな気がしています」

――毎公演「よし!」って気合入れないと乗り切れない感じですか?

柿澤「僕はそうだと思います。(ミュージシャンでもある)西川さんはどうですか?」

西川「これをどう表現していくかではあるけど、デューイって、根っからそうなんじゃなくて、彼の中の「ロック」というスタイルに自分で合わせにいっているところがあるから。虚勢を張っているんですよね。ロックスター気取りで話している。でも僕は普段、そんなふうに生きてませんからね?」

柿澤「はははは!(笑)」

西川「だから僕も同じようにデューイになんなきゃいけないです。」

「西川さんを参考にしたい」「カッキーみたいに動いてみたい」

――デューイはどんな人物だと思われますか?

西川「今ってなにかを始めようと思っても、ちょっと検索すれば誰かが同じようなことをやっているし、「こうなりました」と体験談がドンと出てくるじゃないですか。つまりやる前に結果が見えちゃう。だけどこの作品はそれがない時代が舞台で、だからこそデューイは自分で「いける! がんばれる! 俺はスターだ!」みたいなところでやれちゃう。それは無謀かもしれないし、人から見たら無駄かもしれないけど、「やってみる」っていう彼の強さに。僕はすごく憧れみたいなものを感じます。僕自身がどちらかと言えば石橋を叩きすぎて割ってまたひっつけて渡る(笑)、みたいな人なので。デューイの大胆さをいい意味で吸収して、そして出しながら、いいものができたらと思います」

柿澤「デューイは正直でピュアで素直で頑固で、傍から見たらイタイとか破天荒とか思われるんでしょうけど、本人は多分そんなこと思ってない。自分は正しいと思っているし、かっこいいと思っているんですよね。そういうところが、自分に対しても、相手に対しても、社会に対しても、正直な人間だなと思います。ロックを愛しすぎちゃって、西川さんがおっしゃったように「実際のロッカーはそんなことないんじゃない?」くらいやるし、俺はまだ夢を見られるし、いけると思っている。そこが切ない部分でもあるんですけどね。そういう彼がかわいかったりチャーミングに見えたら最高なのかなと思っていて」

西川「デューイは計算してないからね」

柿澤「そうですよね」

西川「多分本物の天然だから。そこがいいんでしょうね。僕たちは子供の頃から自分なりに大人との付き合い方とか向き合い方とか考えて、子供として「これがいいのかな」とか「ここではこうしないといけないのかな」と判断して自然とやってきて。だから彼みたいな、場面とか空気とか考えずに「楽しくない!帰る!」みたいな(笑)、そういうことはやったことがないですし」

――そんな姿に気持ちよさも感じそうです。

柿澤「そうですね。芝居がちゃんとハマればそうなるはず」

――おふたりはキャラクターも違いますが、お互いの「こういうデューイが見たい」と思っていることはありますか?

柿澤「僕、西川さんはマジで役にハマってると思うんですよ」

西川「いやいや(笑)」

柿澤「さっきおっしゃった「スイッチをどこで入れるか」というようなことはあるかもしれませんが、あとはもう「まんま」って感じがあります。ピッタリ。(笑)だからもはやもろパクリしたいくらい」

西川「よく言うよ(笑)」

柿澤「僕は普段からミュージカルでWキャストをやる機会も多いですけど、こんなふうに思うことはあまりないんです。もちろん自然と西川さんと違うデューイになると思いますが、こんなに「参考にしたいな」とか「パクりたい」と思っているのは初めてです。だって本物じゃないですか。音楽もずっとやってこられた方で。デューイにこんなにハマる人はいないと思う」

西川「…………はい」

柿澤「(笑)」

西川「(笑)。とはいえカッキーは、キラキラした役もやっているし泥臭い役もやっていて、どういう角度の役でもものにしちゃう方だから。実際3年前に中止になったときに、子供たちと1曲だけ映像を残しているんですけど、その映像だけでも僕らで全然アプローチが違っていましたから。カッキーのデューイは荒々しい感じも出ていて。僕は小物なんでね、」

柿澤「いやいや(笑)」

西川「ちょっと当たっただけでも(腕が当たって過剰に気にするジェスチャー)」

柿澤「(大笑い)」

西川「でもほんとにね、カッキーみたいに動いてみたいなって思う。だから僕は僕でつぶさにカッキーのエッセンスを取り込みながら、デューイをつくっていけたらいいなという気持ちです」

――おふたりが生徒役の子供たちとどんなふうに絡むのかも楽しみです。

西川「もうね、やばいですよ。もうすでに個性的な感じがしてる。自分の稽古に集中しないと全部持っていかれちゃう、あいつらに!」

柿澤「あっはっは!」

西川「ほんとにだよ? あいつらから鴻上さんを奪い返さないと。カッキー、現場にこんなにたくさん子供たちがいたことある?」

柿澤「いえ、ここまでの大所帯は初めてです」

西川「数人だったらかわいいんだよね。「甘いもん食うか?」とかね。でも今回は違います。熱川バナナワニ園みたいな状態になります。甘やかしてると大変なことになる!」

――(笑)。柿澤さんも甘やかさずいきますか?

柿澤「ええ? 僕は一緒にヘラヘラしてたいですけど(笑)」

西川「ほんとに!?」

――西川さんはビジュアル撮影でそう思われたのですか?

西川「そう。すごく元気だったんですよ」

――生徒は2チームありますからね。

西川「僕が一緒に撮影した「チーム・コード」、すごかった」

柿澤「僕のほうの「チーム・ビート」のみんなも元気ではありましたけど、そんなにではなかったですよ??(笑)」

――チームで色が違いそうですね。これは両方観ないといけない。

西川「ぜひそうしてください!(笑)」

取材・文:中川實穗