「カーディガンを持って来てください」(大山)│大山真志×鍵本輝×中山優貴が語る『ALTAR BOYZ 2023/アルターボーイズ 2023』

『ALTAR BOYZ 2023/アルターボーイズ 2023』が8月11日(金・祝)から8月29日(火)まで東京・新宿 FACEにて上演される。

「ALTAR BOYZ」は2004年にニューヨークで初演されたオフ・ブロードウェイ・ミュージカル作品。神と司祭に仕える使徒=アルターボーイの5人がダンスボーカルグループ“ALTAR BOYZ”を結成し、人々の魂を救うため、歌とダンスで愛を説きながら世界中をツアーする、その中で巻き起こる出来事を描く。ライブ感満載のステージは、全米ツアー、韓国、ハンガリー、フィンランド、オーストラリア、カナダ、フィリピンなど世界各地で上演される人気作に。日本でも玉野和紀の演出で2009年に初演され好評を博し、今回で8回目の上演となる。

続投チーム【Team GOLD】【Team SPARK】、新チーム【Team SAPPHIRE】の3チームで観る者を救いの道へと導く2023年版について、【Team GOLD】の大山真志、【Team SPARK】の鍵本輝、【Team SAPPHIRE】の中山優貴に話を聞いた。

チームワークが命の作品です(大山)

大山真志

――2年ぶりの『ALTAR BOYZ』ですが、初参加の鍵本さんと中山さんは参加することになりどのように思われましたか?

鍵本 未知数です。過去の公演は拝見して、どんな作品かはイメージできているのですが、やってみないとわからないところもたくさんあるので。自分がどれだけ楽しめるか、そしてチーム全体として目指せるものをちゃんと作れるか、というようなことも含め、未知数だなと思いました。

中山 『ALTAR BOYZ』という歴史ある作品に携わることができるのがすごく嬉しいです。過去作品を拝見して最初の感想は「めっちゃ大変そうだな」だったんですけど(笑)、大変であればあるほど、できたときの達成感や仲間でやり遂げたときの感情は大きくなると思うので、そこがすごく楽しみです。あとは僕の【Team SAPPHIRE】は全員が初参加なので、先輩方が築き上げてくださったものも参考にしつつ、だけどせっかく新チームとして登場するので、僕らにしか出せないものを出せたらなと思います。

――何度も参加されている大山さんはどう思われていますか?

大山 久しぶりにこうして【Team GOLD】のメンバーとして、そしてこのメンバーで戻ってこられたことがまず一番うれしいです。 そして今回は、【Team SPARK】【Team SAPPHIRE】の新しいメンバーの方々がまた新たな『ALTAR BOYZ』をつくりあげていくと思うので、それを楽しみにしています。GOLDも実は日によってメンバーが変わったりもするので、そこも楽しみです。

――『ALTAR BOYZ』にはこういう心構えが必要、みたいなことはあるのですか?

大山 いやもう、気合いだけですよね(笑)。あとはチームワークが命の作品なので、とにかく5人でコミュニケーションを取るっていうのは心構えとして持っていたほうがいいなと思います。

――演出の玉野さんはどんな演出をつけられるのですか?

大山 玉野さんは普段は演出をしっかりつけられる方なのですが、この作品に関しては、ポイントポイントで「このタイミングでマイクを置きに行く」みたいな決め事はありつつも、それさえ守っていれば自由にやっていいよというスタンスです。やっぱりこの作品はグループの関係性で成り立つところが多いですから。そのぶんチーム力が問われる作品なんですよね。

自分の中で忘れかけたなにかを思い出せそう(鍵本)

鍵本輝

――作品そのものにはどのような印象を持たれましたか?

鍵本 この作品は「ALTAR BOYZがコンサートをしに来ている」という前提のもと物語が始まっていくのですが、僕はリアルで(ダンスボーカルユニット「Lead」として)アーティストとして活動しているので入りやすいですし、いろいろな展開に懐かしい気持ちになったりもします。 そういう内容ではないのですが、“青春スポ根”に近いものがあって、そこが素敵だなと思える作品なので、僕自身、この作品に携わることで、自分の中で失いかけていたなにかを思い出せるんじゃないかと思っています。

大山 おお!

鍵本 (笑)。

中山 熱量と気持ちが圧倒的にすごい作品だなと感じました。いろんな意味で生(なま)感が強いですよね。パフォーマンスはもちろん生ですし、演奏も生バンドですし、お客さんとの掛け合いも生ですし。その一つひとつがこの作品のピースで、それがはまっていって、(本番で)最後のピースがはまって完成するような感じがあります。そこが魅力だなと思いました。

大山 ストーリー自体はとてもシンプルだと思うんです。グループのお話で、「この後、この5人はどうなっちゃうんだろう」みたいな。だけどその中に、例えばLGBTQのことだったり宗教的な問題だったりが練り込まれているので。日本では14年前に初演されたんですけど、あの頃は正直まだそこに理解が追い付かない部分もあったと思うんです。なのでそこは時を経て、受け取ってもらいやすくなっているのではないかと思います。あとはやはりこの作品って、もちろん芝居なんですけど、なんか、マシュー(大山の役名)なんだけど大山真志もいるんですよ。「この言葉、どっちで言ってるんだろう」っていう感じがあるので。そこが面白いし、それがチームの個性にもなると思います。

――そのチームの個性についてもうかがいたいなと思います。それぞれどのようなチームを目指したいと考えてらっしゃいますか? まずは大山さんの【Team GOLD】(大山真志 / 法月康平 / 松浦司 / 石川新太 / 常川藍里)からお願いします。2017年に結成され、今回は4公演目となるベテランチームです

大山 強いて言うなら、コーラスワークをすごく緻密につくりたいなと思っています。うちのチームのメンバーも、いろんな場所でいろんな経験をしてこの作品に帰ってきていますしね。分厚い音を聴かせたいので、今回はコーラスについて「こうしようよ」という話し合いをする時間を取りたいです。

――鍵本さんの【Team SPARK】(鍵本輝 / 米原幸佑 / 和田泰右 / 川原一馬 / 若松渓太)は2019年に結成され、2021年公演から続投の米原さん・和田さん・川原さんと、今回初参加となる鍵本さん、2021年公演時はGOLDだった若松さんが参加されます

鍵本 チームが目指すところは、正直なところ、まだわからないです。【Team SPARK】は、経験者のみなさんのところに真っ白な僕が入るカタチなので。僕という歯車が入ることによってどういう回転の仕方をし始めるかはちょっとわからないんですけど、みなさんとコミュニケーションを取るごとに、そこは突き詰めていけたらなって思います。

――チームの他のメンバーはみなさん初共演ですか?

鍵本 はい。ただ、よねちゃん(米原)だけはずっとニアミスしていて、お互いを遠いところから見ていた存在です(笑)。同じ関西出身で、ノリも近いものがある気がするので楽しみです。

――中山さんの【Team SAPPHIRE】(中山優貴 /大野瑞生 / 中本大賀(円神) / 司波光星/ Rayshy)は全員が初参加となる新世代チームです

中山 そうですね、鍵本くんと同じで僕らも真っ白です。しかもチーム全員そうなので。そういうところは強みでもあるのかなと思います。もちろん作品としてのベースがあってのことですが、そこに+αされる人間性だったりは、他のチームとはまた違う色をどんどん出せたらなと思っています。あとはフレッシュさも出したいです。

――中山さんも全員初共演ですか?

中山 そうです。違うチームですが米原幸佑くんは以前共演したことがあります。

大山 幸ちゃんばっか出てくるね(笑)。

お客さんも含めてみんなで舞台をつくりあげられる(中山)

中山優貴

――鍵本さんと中山さんが初出演なので、大山さんにうかがいたいのですが、初めてこの作品に参加したときのことは覚えていらっしゃいますか?

大山 覚えてます。ダンスも一日3曲ずつ覚えたりして大変だったんですけど、でもやっぱり幕が開いて、あのお客さんの熱狂は普通の舞台じゃありえないものだったので。楽しくてしょうがなかった。それがすべてを“浄化”してくれたじゃないですけど、救われたなって。「うわ、やってよかった!」と思った記憶があります。僕はもともと歌手になりたかったんですけど、この作品には、そのやりたかったバンドだったりなんだったり全部が詰まっていたので、その時のことはものすごく鮮明に覚えています。

――鍵本さん、中山さんはこの舞台に立つうえで期待していることはありますか?

鍵本 グループでのハーモニーを楽しみにしています。普段は(Leadの)3人でハーモニーを奏でていますが、これが5人になったときにどんどんな厚みを出せるのかなとか。(大山に)歌の部分の自由はきくんですか?

大山 ききますよ。ソロとかは好き放題やれます。

鍵本 そうなんですね。いじくり倒したいです。そのぶん基礎はしっかりしとかなきゃいけないですが。歌、楽しみですね。

中山 ライブでの声出しが少しずつ復活してきているので、そこに期待しています。もう3年ぐらいそういうことができなかったですし。やっぱそのお客さんがいないと僕らもステージに立てないので、お客さんも含めみんなで舞台をつくりあげられることが楽しみです。

――お客さんたちは“魂”を“浄化”されに劇場に行くと思いますが。浄化された先にはなにがあると思いますか?

大山 浄化した先にはですね、また2年後が待ってると思います!

一同 (笑)。

大山 大体2年周期でみんな魂を真っ黒にしてくるので(笑)。この作品は、舞台を観に来たというより、ライブに来た感覚が一番あると思うんですよ。お客さんと一緒になってつくり上げることができる作品だと思うので。お客さんもいい汗かいて、すっきり心の洗濯をしていただきたいなと思います。

鍵本 「この日があるから楽しみだな」とか、この……もう“公演”って言わずに“ライブ”って言いますが、「このライブを観たら明日からまたがんばれる」みたいな、そういうお客さんの活力になったらいいなと思います。

中山 (作品の性格上、)一公演一公演が新鮮だと思うので、「また浄化されたいな」とか「 またこいつらの汗、観たいな」とか思ってもらえるようにしたいです。

――初めての夏の公演ですしね

大山 夏にやって大丈夫かな?(笑)。劇場をキンキンに冷やしてもらいますので、お客さんはカーディガンを持って来てください!

インタビュー・文/中川實穗