KOKAMI@network vol.16 『ローリング・ソング』中村雅俊 インタビュー

――鴻上尚史さんとのお仕事は、『僕たちの好きだった革命』(07年初演、09年再演)以来ですね。

中村「『またやりましょう』とは会うたびに言われていたんです。でもそのわりにオファーがないので、いつやるんだろう?と思っていて(笑)。鴻上さんとのお仕事で印象的なのは、演出がとてもきめ細かいということ。せりふってメロディがあると俺は思っているんですけど、鴻上さんはそのキーであったり、高さであったりが、とても的確に言える人なんですよね。さらに飽きさせない構成力もあり、作品としてとても面白いので、今回またご一緒出来ることをとても楽しみにしていました」

 

――鴻上さんの新作になりますが、脚本を読まれての感想は?

中村「すごく苦労したんだろうなっていうのが、読んでいてわかる脚本でした。やっぱり3人を描くっていうのは大変なことで、今も稽古をしながらどんどんせりふを変えていっていますから。実際に役者にせりふを読ませて、立たせてみると、やっぱりこうした方がいいって作家として感じるところがあるんでしょうね。だからこちらとしても一日一日が真剣勝負、という気持ちで臨んでいます」

――3人というのは、20代の男、40代の男、そして中村さん演じる60代の男のことですね。

中村「ええ。(中山)優馬がロック歌手を目指す20代の若者、松岡(充)くんがかつてロック歌手で今は納豆屋の40代の男、そして俺は60代の音楽プロデューサーで、実は結婚詐欺師という役どころです。まだ楽しむまでにはいきませんが、ちょっと面白そうな役ではありますね。芝居をしていても、本音なのか嘘なのかわからない瞬間があったりして。こいつ、どういう奴なんだろう?と。そういう起伏であったり、幅みたいなものが見せられる、なかなか面白い役だと思います」

 

――本作は森雪之丞さんが作詞を手がけられるオリジナル音楽劇ですが、中村さんが歌われるのは何曲ですか?

中村「全7曲のうち、俺は2曲ですね。1曲目はちょっと皆さんの笑いをとるような、久野(綾希子)さんとのデュエット曲。もう1曲は意外だったんですが、『あゝ青春』という、42年前の俺の曲です。鴻上さんになんでこの曲なのか詰め寄ったら、『いいじゃないですか』としか言われなくて(笑)」

――この作品を通して、どんなことが伝えられたと思いますか?

中村「登場人物たちの“夢”に対する想いが、すべて歌に繋がっている作品です。単純に歌を生業に生活出来たらそれは夢のような話ですが、“歌”ってすごく間口が広い分、極めていくのはとても難しい。俺は俺なりの表現で40年以上やってこられた幸せがありますが、松岡くんや優馬は、また俺とはまったく違うやり方でパフォーマンスを続けてきた。ただ共通して言えるのは、“歌をやってこられてよかったね”ってこと。“歌”ってそれくらい魅力的なものですから。そうやってプロとして歌をやっていくことに厳しさと喜びがあるように、夢をもつことには厳しさと喜びがある。そういうことがテーマとして描かれている作品なのかなと思います」

 

インタビュー・文/野上瑠美子
写真/ローソンチケット