ミュージカル『エリザベート』 花總まり インタビュー

日本初演女優が再び挑むタイトルロール

キャストを一新し、伝説の幕を開ける!

 

東宝版初演から15年目を迎える今年、ミュージカル「エリザベート」が生まれ変わる! キャストが一新されたなかでも、ミュージカルファンの熱い期待を集めているのが、エリザベート役の花總まりだ。日本初演(宝塚歌劇団雪組)でタイトルロールを演じ、華やかさと圧倒的な存在感で観客を魅了。その舞台はいまや伝説とも言われており、まさにウィーン・ミュージカルを日本に根付かせたひとりでもある。

花總「東宝版への出演が発表されてから、たくさんの方に『観に行きます』と言っていただいて、本当にありがたいなと思います。とはいえ、まだお稽古前のせいかあまり実感がなくて、宙に浮いている感じでもあるのですが。まずはエリザベートの資料を読み返すところから始めています」

 

―19世紀末のウィーンを舞台に、皇后エリザベートと、黄泉の帝王トートとの禁じられた愛を描いた本作。

花總「全編歌でつづられていきますが、初演当時の私は歌がまだまだ弱く、エリザベート役に決まったときは『大丈夫なのか』という声が多かったんですね。私自身、ひとつの作品でここまで歌って、なおかつ少女時代から亡くなるまでを演じるのは初めてでした。しかもトート役の一路真輝さんのサヨナラ公演でもあり……本当にいろいろなものが重なったなかでのエリザベート役でした」

 

―ふたを開けてみれば、観客に熱狂的に迎えられ、花總=エリザベートと言われるほどの代表作となった。

花總「この役に出会えたからこそ、今の私がある、と言える大事な役です。初演で得たものはとても大きくて、その後、様々な役を演じるなかで『エリザベートをやっておいて良かった』と感謝することばかりでした。ただ、東宝版は宝塚版とはエリザベートの描かれ方が違うので、新たなチャレンジですね。またきっと大変になるでしょうし、苦労するだろうなと覚悟しています」

 

―ミヒャエル・クンツェによる人間の本質に迫る脚本、シルヴェスター・リーヴァイのドラマチックな音楽が魅力の本作。昨年は、同コンビの世界初演作『レディ・ベス』のタイトルロールを務めた。

花總「『レディ・ベス』では宝塚的な歌唱を何度も指摘されて、いかにミュージカルとして、ミュージカル界の錚々たる方たちのなかで歌えるかとすごく考えました。まだまだ足りないことだらけですが、ベス役を通して学んだことを生かしたいですね」

 

―あらためて『エリザベート』の魅力とは?

花總「彼女が歩んだ劇的な人生に、みなさん共感されるのでしょうし、それが壮大なメロディで語られるとなれば、絶対にハマりますよね(笑)。さらに夫のフランツ、その母ゾフィーと、登場人物それぞれが複雑な思いを抱えていて、相手のためを思いながらも報われない。そのつらさ、もどかしさ、切なさから目が離せなくなるような……描かれている人生があまりに深くて。それを演じる面白さは、ひと言ではとても言い尽くせないですね。だからこそ、これからお稽古を通して、できるかぎり深めていかなければ、と思っています」

 

 新たな伝説が生まれる瞬間を、ぜひ目撃したい。

 

【WEBこぼればなし】

エリザベートを愛する黄泉の帝王トート=死を城田 優と井上芳雄が演じるなど、メインとなる役がWキャストなのも見どころの今回の公演。

花總「この前の『モーツァルト!』では私は井上さんの姉役で、エリザベートの暗殺者・ルキーニ役の山崎育三郎さんとは、『レディ・ベス』では恋人役でした。お二人とまったく違った役で共演できるのも楽しみですし、個性豊かで実力のある方たちばかりなので、お稽古場がどうなるか。演出の小池修一郎先生はお稽古しながら、どんどんアイデアを思いつかれるでしょうから、きっと大変になるでしょうね(笑)」

 

エリザベート役は昨年、宝塚歌劇団を退団したばかりの蘭乃はなさんとのWキャストとなる。

花總「『レディ・ベス』で演じたベスはWキャスト、『モーツァルト!』のナンネールはシングルで、Wとシングルで自分が何をすべきかが分かったところがありました。Wキャストはお稽古の時間が半分になってしまう大変さがある一方で、公演中の体調管理がしやすい良さもあるんですね。とはいえ、実際に舞台に立つことで見えてくる部分はすごく大きくて。今回はこれまで以上に、舞台上にいるつもりでお稽古に取り組みます。そうすることで初日から、楽日に近いぐらいの完成度を目指したいですね」

 

そのひと言に、花總さんのエリザベート役への並々ならぬ覚悟と意欲が表れていた。
新生エリザベートとの出会いが今から待ち遠しい!

 

インタビュー・文/宇田夏苗
Photo/慎 芝賢
構成/月刊ローソンチケット編集部

 

 

【プロフィール】

花總まり

■ハナフサ マリ  東京都出身。’91年、宝塚歌劇団入団。’94年に雪組娘役トップに就任。’96年には日本初演の「エリザベート」でタイトルロールを演じた。’06年、娘役トップとして最長在任記録で惜しまれつつ退団。最近の出演作に「モンテ・クリスト伯」「レディ・ベス」「モーツァルト!」など。