『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』井上芳雄 インタビュー

2017年度トニー賞最多12部門ノミネートの傑作が日本初演!

 

ブロードウェイで絶賛の嵐を巻き起こした傑作ミュージカルが日本初演を果たす。主人公・ピエールに扮するのは、井上芳雄。愛のない結婚生活に虚しさを覚え、鬱屈した毎日を送る冴えない男を演じる。

井上「舞台で地味な男を演じるのは珍しいですね。でも、王子様や死神といった役より、こういう役の方が自分に近いです(笑)。俳優としてもっと幅を広げたいと思っていたので、すごく挑戦しがいのある役に巡り合えたと思います」


そんなピエールの運命を変えるのが、生田絵梨花演じる伯爵令嬢・ナターシャ。美しき少女との出会いが、ピエールの人生を動かしていく。

井上「自分とは違う美しい存在への憧れは誰にでもあると思います。そして、あまりにも自分とかけ離れた存在だからこそふさわしくないと諦めるピエールの気持ちも、多くの人に共感してもらえるはずです。報われない想いを寄せ続けるピエールの尊さを出したいですし、一心不乱にナターシャを見守り続ける姿を見て、お客様が思わず応援したくなるような、そんな役にできたらいいですね」


ブロードウェイでは、舞台と客席が一体となる「観客参加型」の演出が話題を呼んだ。日本版でも舞台エリアに「コメットシート」という特別席が設けられるなど、意欲的な試みが取り入れられている。

井上「これだけお客様との距離が近いのは、演じる側としてはすごく力になります。あくまで日本版は日本版の演出となりますが、ブロードウェイで注目された演出要素については、あったらいいなとスタッフさんとも話しているところです。普通の演劇を観るのとはまた違った体験ができる空間にできればと思います」


ブロードウェイを沸かせた音楽についても、井上は太鼓判を押す。

井上「内容としてはロシア文学の『戦争と平和(第2巻第5部)』を題材にしているんですけど、全編に渡って歌で構成されていて、面白いつくりになっています。音楽も現代的で勢いのあるものもあれば、美しいメロディもあって魅力的。ブロードウェイではピエール役のジョシュ・グローバンがアコーディオンとピアノを演奏しました。僕も今、楽器の稽古中。どこまでできるかはまだわかりませんが、そのあたりもぜひお楽しみに」

 

インタビュー・文/横川良明

 

※構成/月刊ローチケ編集部 10月15日号より転載

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【プロフィール】
井上芳雄
■イノウエ ヨシオ ’79年生まれ。福岡県出身。近作に『ナイツ・テイルー騎士物語―』『1984 』『黒蜥蜴』など。