筧利夫 主演!ミュージカル『深夜食堂』開幕レポート

2018年10月26日(金)、新宿のシアターサンモールでミュージカル『深夜食堂』が開幕した。
開幕前から様々なパターンのPVや「深夜食堂応援団」などでネットを賑わせていた本作は2012年と2014年に韓国で上演された作品の「凱旋公演」。
昨今いろんな形で漫画や映画原作のコンテンツがミュージカル化される中、ミュージカル『深夜食堂』はもっともミュージカルから「遠い」作品という既存ファンの戸惑いも見られたが、実際に上演された作品を観るとその戸惑いは懸念に過ぎず、見事な群像劇に仕上がっていた。

 

物語は新宿にある「めしや」という深夜食堂に集まる常連客たちと、その常連たちのよもやま話を聞くマスターとのやり取りで進行する。このお店が深夜食堂と呼ばれるのは深夜0時に開店して朝の7時に閉店するからだ。

10人のキャストたちで実際には20を超えるキャラクターを演じていた。

長年この街でストリップを見続け、底なしに明るい忠(藤重政孝)。20年以上ゲイバーのママを務めるどこか陰のある小寿々(田村良太)。強面で暴力団の幹部を務める剣崎竜(小林タカ鹿)は無口だが優しく、竜を慕うゲン(碓井将大)は血の気は多いが根は陽気。30代後半にして未だ理想の男性を追い求めるお茶漬けシスターズこと梅(壮一帆)・鮭(谷口ゆうな)・明太子(愛加あゆ)の3人組はいつも賑やかで場を盛り上げる。好きな男がコロコロ変わるベテラン・ストリッパーであるマリリン松嶋(エリアンナ)は今日も新しい恋に忙しい。ストリートミュージシャン・千鳥みゆき(AMI)は、そのどこまでもまっすぐで明るい感じが「めしや」ではちょっと異色の存在。そしてその濃い面々の身の上話を淡々と受け止めるのは深夜食堂の主人であるマスター(筧利夫)だ。この他にも風見倫子、キミ君、毛利くんなど原作でお馴染みの常連客たちが多数登場する。
カウンターを囲む常連たちを客席から眺めていると、まるで後ろのテーブル席からちょっと溢れてきたよもやま話を聞いているようで、そのうち話に混ぜてもらいたくなってしまったりもする。

音楽も実にバラエティーに富んでおり、昔懐かしの歌謡曲風の歌からロックバラード、フォーク、ジャジーな曲、ブルースにR&Bまで様々なジャンルの楽曲が登場人物たちの心情を見事に描いている。これらの楽曲を紡ぐのは4ピース編成の生バンド。キーボード、アコースティックギター、チェロ、パーカッションによるその音色は繊細で温かく、夜更けの食堂に集まる大人たちの物語をしっかりと支えている。またゴールデン街をイメージした街路の奥(舞台奥)にセットされているバンドの雰囲気は、繁華街で演奏するストリートミュージシャンに見えてくることもあって面白い。そして何よりニヤリとさせられたのは「匂い」だ。
劇中で「あれ?誰か場内で飲食をしているのかな?」と一瞬勘違いしてしまったが、お腹を空かされる素敵な匂いが舞台上から漂ってきたのだ。これはまさに舞台ならでは仕掛け。
どんな料理の匂いなのかは観てのお楽しみ。劇場を出るときにはきっとお小腹を満たしたくなるに違いない。公式サイトに掲載されている「深夜食堂応援団」店の中にはサービス品の提供や割引があるお店もあるようなので観劇の余韻を持って訪ねてみるのもいいだろう。
またロビーには「めしや」の暖簾と提灯も飾ってあったので、記念に写真を撮るのも楽しみ方の一つになりそうだ。

公演は11月11日(日)まで。皆さんも是非、深夜食堂の常連になってみてはどうだろうか。初日を終えた出演者からのメッセージも届いている。

■筧利夫

是非お店(めしや)の常連とワイワイやりに来てください!

■壮一帆

いよいよ初日を迎えました。壮一帆です。今回は深夜食堂に集うお客さんの一人、梅を演じますけれども、とても客席が近い劇場なので、お客様との一体感を楽しみつつ深夜食堂のキャスト一丸となって皆様に暖か空気感をダイレクトにお伝えできるように一生懸命頑張ります!
皆様のお越しをお待ちしてます。

■田村良太

ミュージカル『深夜食堂』開幕しました!美味しい料理と同様に腕によりをかけてお待ちしています。