ミュージカル『GIRLFRIEND』稽古場レポート&出演インタビュー

6月14日にシアタークリエで開幕する、ミュージカル『GIRLFRIEND』の公開稽古が行われ、ウィル役の高橋健介、島太星(NORD)、井澤巧麻、マイク役の萩谷慧悟(7ORDER)、吉高志音、木原瑠生が歌唱披露し、翻訳・演出の小山ゆうなを交えて、今の稽古の様子や思いなどを語った。

日本初演となる本作は、90年代の”パワーポップ”(※ロックの形態の一つ)シーンの中で、最も輝いたアメリカのシンガーソングライター、マシュー・スウィートが91年に発表したCDアルバム『GIRLFRIEND』をベースに、ネブラスカ州の小さな町を舞台に、ミックステープがつなぐ甘酸っぱいポップでロックなジュークボックスミュージカルだ。脚本家のトッド・アーモンドはこの男性から女性に向けた歌詞に自身の経験を織り交ぜ、まるで作品のために描かれた楽曲と感じさせる程、見事に融合させたミュージカルに仕立てている。たった二人の役者のみで構成された世界は、自身の経験を重ねながら作品へと没入し、青春時代の初恋を思い出すように二人の距離感に共感・心を揺さぶられる作品だ。

高橋&萩谷、島&吉高、井澤&木原、の固定ペアに加え、SHUFFLE WEEKではペアをシャッフルして上演され、9通りのバージョンが誕生することになる。二人だけのミュージカルだからこそ、組み合わせによっても質感がかなり変わりそうだ。青春時代を演じるにふさわしい、今後の活躍が期待される、東宝ミュージカル初登場のフレッシュなキャスト6名が揃い、今だからこその鮮度で舞台上に息づくのだろうと期待が高まった。

稽古場に入ると、揃って出迎えてくれた6人。和気藹々とした様子から、活気ある稽古が進んでいることが窺える。各ペアが登場する度に、待機している4人が声をかけたり、6人のいい関係性が垣間見えた。やってやるぞという武者ぶるいのような高揚感が感じられ、瑞々しさが眩しい。広い稽古場には、細長い斜めになった可動式の台があるだけで、大きな舞台セットがあるわけではない。他には、ベッドや椅子があるくらい。シンプルなステージはどんな風に変化して表現されるのか興味深い。

公開されたのは3曲。井澤&木原ペアによる「Reaching Out」は、物語序盤のナンバーで、まだお互いに距離があって、はにかんだ様子が初々しい。マイクに車で送ってもらったウィルが、車から降りる場面は注目だ。そして、別々の場所で同じ曲を歌う。ゆったりとした気だるいメロディが、若い二人だからこそのもどかしさも感じさせる。マイクのギターソロも見どころだ。

続いて、高橋&萩谷ペアによる「GIRLFRIEND」。フラストレーションを吹き飛ばすように、二人で夜の街をスリリングにドライブする。叫んだり、飛び上がったり、ヤンチャな弾ける若さが眩しい。可動式の細長い台を二人で押しながら回る演出は、車のスピード感が感じられる。二人の無邪気さとロックのビートが小気味良い。

最後は、島&吉高ペアによる「We’re the Same」。歌のタイトルのように、同じ思いを確かめ合う二人。互いを近く感じていて、吸い寄せられていくが、どこかぎこちなさがあって、ピュアな可二人が愛おしい。二人のハーモニーが心地よく、島の柔らかい声と吉高の透き通ったハイトーンが美しく溶け合う。

歌唱披露を終えて、質疑応答が行われた。

【質疑応答】

ーー楽曲を披露した感想などお聞かせください。

高橋:沢山の皆さんに集まっていただき、稽古場にこれだけの人がいることがあまりないので、ちょっと緊張しましたが、楽しくやらせていただきました。

萩谷:結構楽曲が多くて12曲ぐらいあります。ミュージカルにする際にいろんなアレンジが加わっていて、ギターを弾いたり、音楽が好きな二人が音楽に対して楽しんでる姿を見せていけたらと思います。僕達は一番楽しいシーンでした!

:6人並んでいますが、本当に6種多様で。本番は何回リピートされても、また違った世界観を味わえる、心に来る、楽しめる舞台だと思います。本当に楽しくお芝居を努めたいと思います。

吉高:「We’re the Same」という曲は、ビルとマイクの距離がより縮まる楽曲で、すごく素敵なシチュエーションの中で歌いますが、今回の作品の中でもすごくキーのシーンになってくると思うので。(島に)すごい緊張したね。

:まだ抜けてない……。

吉高:二人の世界観を大事にできて、すごく楽しかったです。本番も楽しみにしていてください。

井澤:稽古場にこんなにたくさん記者の方が来ていただく経験が初めてで、しかもトップバッターで、「Reaching Out」はウィルから歌が始まるので、緊張はしたんですが、マイク役の瑠生と一緒に練習してきたものを、お互いを信頼して乗り切ることができました。どの曲もすごく素敵ですし、ペアによっても全然色が違って、声も違います。何回来ても楽しんでいただける舞台になっていると思います。

木原:いわゆる未来のスターたちがここに並んでいらっしゃるので、僕はそこに混ぜていただいて、すごく嬉しいなと思っております。巧麻君と一緒に、『GIRLFRIEND』を作り上げていけたらいいなと思っております。

ーー作品への出演が決まったときの感想と、本作への意気込みを聞かせください。

高橋:東宝さんやシアタークリエさんは、割とベテランの方が出演されているイメージがあったので、全員が初出演というすごいチャレンジです。しっかり成功させて、次に繋げたいというのが一番の印象です。

萩谷:ミュージカル自体にすごく興味があって、役者人生の中でやりたいなと思っていたタイミングでお話をいただいたので、すごくありがたいと思いました。なおかつ、二人芝居でトリプルキャストと初めての要素があり、挑戦できることがすごく嬉しいです。シアタークリエは自分の中で特別な会場で、自分のルーツの中でもすごく大切なところだったので、そこでできるというのもすごく感動しています。

:まず、東宝さんからお話をいただいて、僕は今北海道に在住していますが、まさか東宝さんから、本当に電波が通っていたんだって。

全員:ハハハハハ!

:皆さんのような素晴らしいキャストと演出の小山さんと作品を作れるという、本当に夢のような体験をさせていただいているなと思います。同時に同性愛がテーマで、僕はまだそこの世界には感じることもできなかった人間だったので、新しい発見だったり、いろんな恋について深みをいっぱい知れて、まだまだ人生にはいろんな楽しいことがあるんだなと希望が持てました。これからすごく楽しみです。

吉高:シアタークリエさんは以前から観劇していた劇場で、そんな劇場に立てることもすごく嬉しかったですし、実際に今稽古を重ねていく中で、濃い時間が二人の中で流れています。二人ミュージカルということで、本当に挑戦的なことが多いですが、お客様に甘酸っぱい青春の中にも、その中で生きている高校生二人の、生っぽい空気感を劇場でぜひ体験してほしいなと思いました。

井澤:お知らせをいただいたときは、本当に信じられなくて。東宝さんで、しかもシアタークリエで二人芝居ということで、舞い上がって嬉しく、ここは勝負だぞとプレッシャーを感じました。元々バンドをやっていたり、音楽が好きだったこともあり、ロックな曲、ポップな曲がたくさんあって、挑戦するのにいい舞台だなと思いました。毎日頭パンクしそうな感じで、いろいろ考えたり、家でも台本読んだりしていますが、今後の人生や、俳優としての人生に、財産になる時間だなと思っているので、この舞台をみんなで必ずいい形で成し遂げたいと思っております。

木原:この作品が決まる直前ぐらいに、ちょうどシアタークリエに舞台を見に行かせていただいてたので、そこでやれるのかという嬉しさと、逆に不安になる気持ちもありましたが、多分今後の人生を左右する作品になるんじゃないかなと思っておりますので、頑張りたいと思っております。

ーー小山さんは、この作品のオファーが来たときに、どんなことを考えましたか?

小山:プロデューサーさんが企画から全部作られた作品で、最初の企画書の段階で、作品のカラーや、どう見せたいかが、はっきりしている作品だったので、そこに今のスタッフもキャストも乗っかっている状態なので、どこに向かえばいいかがとてもはっきりしている作品だなという印象を覚えました。シアタークリエで、何か新しいことをやりたいというプロデューサーの思いが、キャスティングにも表れているのかなと思います。

ーー小山さんからみた、6人それぞれの個性や魅力をどう感じていますか?

小山:本当にそれぞれ全然違うんですよ。得意なこともみんな違って、それがある種ライバルでもあると思うんですが、シャットアウトするのではなく、お互いに渡し合うみたいな相乗効果で、どんどん良くなるところがすごいところです。

巧麻君はすごく真面目で、ウィルの誠実な部分とキャラクターがかなり合っていて、着実に積み上げてくれる安心感があります。島君は熱心で、みんなから愛される、それがお芝居にも表れていて、ちょっとしたユーモアだったりすごくキラキラしています。高橋さんはお芝居を実際にやってみることでの提案が本当に優れていて、引き出しがたくさんあるから、要望に対してどんどん出してくれます。マイクは学校で人気者とはいえ、二人は田舎町の疎外された子たちなんですが、みんなキラキラしていて、そのキラキラをちょっと抑えてという稽古です。

萩谷さんはギターもダンスもめちゃめちゃ上手で、いろんなアイディアが本当に素晴らしくて、おかげで稽古が早いです。最初に吉高さんにお会いした時は、ウィルのイメージがあって、多分どちらもできると思うんですが、稽古着からアメリカンな雰囲気で、最初に稽古に来たときから90年代のアメリカ風の稽古着でした。そういうことにもこだわって作っています。木原さんは、うちの息子がキラメイイエローのファンで、観ていた時から本当に器用で、そのセンスから意外な表現がふっと出てきて、このセリフでこの表現するんだという瞬間がたくさんあり、はっとするアイディアが出てきます。

ーー稽古中に印象的だった出来事や名言みたいなものがあれば教えてください。

高橋:メインペアがいるんですが、稽古スケジュールや各々の仕事のタイミングで他の人とも練習することは可能なんです。昨日、瑠生が来れないとなったときに巧麻くんが志音に声をかけて、やろうとなったんですが、萩ちゃんには声をかけづらいと。僕らの空気感が“お互いのもの”という感じが強くてと言われました。そんなことは意識してなかったのですが、周りから見たら二人の空気感があるんだなと。

萩谷:最初の頃は、マイクが僕ひとりしかいないときもあって、結構皆さんと稽古していて。唯一みんなとやれてる。

高橋:目の前でめちゃくちゃ浮気してたもんね。

井澤:ペア感が確かに一番できてる感じはある。

ーー翻訳や演出する上でのこだわりをお聞かせください

小山:元々の英語はポップスなので、同じ歌詞の繰り返しが多いですが、ある程度繰り返しの要素を生かそうと、訳詞の上田一豪さんが判断してくださいました。翻訳の際も、この子たちはシンプルな言葉しか持たず、流暢に喋れないから間もできちゃう、その中でも一生懸命に相手に伝えたい、そういうシンプルな言葉というのは意識しました。だから今、みんなで言葉の裏の本当の意味は何だろうと考える作業をやっています。

ーー音楽で繋がっている二人の物語ですが、皆さんにとって音楽はどんなものですか?

高橋:音楽もそうですが、今まで小山さんと稽古していて、僕とマイクと音楽でこういうふうにやっていこうよといろいろ見せていたんですが、今日初めてお客様に見ていただいて、「見んなよ!」っていう気持ちになりました。俺たち二人で楽しんでるんだからって。音楽は人と楽しむものもあるけれど、この限られた空間で、お互いを楽しむものでもあるんだなと今日経験しました。

萩谷:本当に2人の物語だよね。

高橋:そうそう。だから誰かに伝えるということもあるんですが、「観に来てください」というよりは、「覗き見しに来てください」という感覚になりました。日常覗き見てもらうような。「GIRLFRIEND」を歌っているときに、なんでコイツらめっちゃ見てんだろうっていう気持ちが……。

口々に:コイツら!!!

高橋:いや、そうだよ! ウィルとマイクからしたら! なんかそう思ったんだよ、一瞬マジで。そうやって、音楽で人の気持ちや感情って伝えられるもんだなと思いました。

萩谷:音楽にはいろんなジャンルやルーツがあるので、その人の趣味趣向がそのまま音楽だと思いますね。音楽のパワーというのはやっぱりあるなと。生きていて、音楽があるからちょっと頼れるじゃないけど、ウィルとマイクの出会いも一つのカセットテープです。カセットテープをいちから録音する作業が特別なことなんだと、小山さんから最初に大前提として教えてもらったときに、音楽を通して二人が一緒に繋がれることがあるから、いろんなものを繋ぐ媒体というか、そこを介してコミュニケーション取れるいいものだなと思いますね。

:僕は見てわかる通り、会話が超苦手なんです。だけど、歌が唯一自分が安心できるホームみたいな。僕のコミュニケーションの一つとして、歌を歌うことによって、伝えたいことが喋るよりも伝えやすくて、歌っていて気持ちも込めやすくて。だから、ウィルになったときに、逆に歌だからって安心して自信満々になりすぎちゃったら、ウィルとかけ離れすぎてしまって、いろんな難しい点は出てきます。歌は、本当に僕にとっての大きなもう一人の島太星であるような支えとなっております。

吉高:先程の話にもありましたが、音楽は人と人が繋がる一個のツールでもあって、僕の中ではすごく大切なものです。音楽が大好き、歌が大好きという力だけで、今ここまで来ていて、そういう不思議な力を持っているなと感じてます。言葉にできない、音楽でしか伝わらないようなものを、ずっと探し続けていくことが、これからの人生の1個の目標というか課題なのかなと思っています。

井澤:高校進学や上京などに、音楽が関わっていたことが多く、将来音楽をやりたいなと思いました。路上ライブをしていた時期もあります。自分の人生の大事なターニングポイントにいつも音楽やいろんな出会いがあり、音楽を通していろんな人と繋がって、コミュニケーションをとってきました。この作品の中で、「We’re the Same」などは二人で即興的に生まれた曲だと思いますが、音楽が生まれていく感覚が自分の中でリアルに残っていて一番気持ちが動く瞬間です。音楽に乗せることで気持ちが言えるとか、気持ちがすごく動くと感じるので、音楽は自分にとってかけがえのないものかなと思います。

木原:僕にとっての音楽は命なんじゃないかと思っています。その理由は、命と引き換えにできるものが、僕の中で音楽ともう1個、自分の中で大切なものがあるので、それが今まで生きてきた中で、どこかしら大事なタイミングで絶対にあったこと。そして、どれだけ歳をとっても音楽をやっていたいですし、ずっとこれからも自分の身についてくるものなのかなと思うので、命ぐらいの大切なものかなと思います。

取材・文・撮影:岩村美佳

ミュージカル『GIRLFRIEND』プロモーション映像