演劇と子どもたちとを繋ぐネルケプランニングの「WELCOME KIDS PROJECT」。本プロジェクトは、観劇体験の機会を提供するだけでなく、ワークショップを通して子どもたちが演劇に触れる機会も創出している。「WELCOME KIDS PROJECT 冬休み!オン・ワークショップ2025」はその取り組みの一環。12月27日(土)・28日(日)の2日間に渡り実施されたワークショップ2日目の様子をお届けする。
2日目のテーマは「歌おう!踊ろう!身体で表現!演劇ワークショップ」。歌唱指導として数多くの作品に携わるカサノボー晃と、身体表現で生み出す独創的な世界観が高く評価されている振付師・演出家の美木マサオによる、歌と身体表現のワークショップが実施された。約4時間のワークショップを通じて、歌と身体表現を軸にひとつの作品世界を完成させ、“表現すること”の奥深さを体感する時間となった。


旧知の仲であり、これまでも何度かタッグを組んだことがあるという2人が用意したのは、「君をのせて」。楽曲の世界観を、歌と風船を使っての身体表現、さらに芝居的要素を組み合わせて、ひとつの作品として仕上げていく。
まず最初に取り組んだのは、自分に3文字の名前をつけること。あだ名でもいいし、架空の名前でもいい。その名前をつけて表現に挑むことで、自分ではない誰かを纏うという感覚を持つことが狙いだと、美木は語る。子どもたちは思い思いの3文字ネームを身につけ、本格的にワークショップがスタートした。
歌と振付の指導が進み、次第に全体像が浮かび上がってくる。その中で、講師の2人が熱心に繰り返し伝えていたのは、「その表現を通じて誰に何を伝えたいのか?」ということ。歌を担当するカサノボーは、歌詞に度々出てくる「君」の存在を意識させると同時に、歌を身近なところに落とすのではなく、稽古場の壁の向こう側へ届けるよう身体全体を使って伝える。子どもたちは新しい振付が増えるとダンスに意識が向いてしまい、歌に気が回らなくなってしまうことも。すると、すかさずカサノボーが「壁の先、もっと遠くを見てみよう!」と声をかける。序盤の発声練習や歌唱練習を通して、子どもたちはすでに声を前に届ける感覚を身につけていた。カサノボーのひと声をきっかけに、少し前に学んだその感覚が呼び起こされたのか、歌声と表現が見違えるように変化していく。

美木は風船を用いた振付を考案。今回の参加者は小学1年生から中学3年生までと年齢にバラツキがあり、ダンス経験者もいれば未経験者も参加している。「幅広い世代の子どもたちがいるからこそ、難しい振付を覚えるよりも、アイテムと共に動く中で表現を学ぶ方が、このワークショップには適していると考えた」と、美木は語る。この狙いは見事にハマっていたように思う。「風船を大切なものだと思って動かしてね」。美木の声掛けで、すでに表現力が培われている年上組の参加者はもちろん、小学校低学年の子たちの動きにも、はっきりとした変化が表れていった。また、小道具を大切に扱うという舞台人として欠かせない意識も、自然と共有されていったように感じられた。

約3分半の楽曲。歌詞を汲み取った表現や、3文字ネームをもとにした創作ダンス、芝居的要素を組み込んだ導入まで盛り込まれ、短時間のワークショップとは思えない完成度の作品が出来上がった。この日のラストには、保護者に向けての成果発表も実施。子どもたちは数時間の積み重ねを堂々と表現し、やりきったという充足感に満ちた表情を見せていた。
ワークショップ終了後、小学校低学年の女の子2人は難しかったと語るも、お披露目での出来は「99%」だったと、はにかみながら答えてくれた。

「先生から教わったキレやトメの動きを意識するというのは、日頃やっているダンスにも活かしていきたい」と語ってくれたのは、前日のワークショップにも参加していた男の子。「1日目は演劇、今日は歌とダンスのワークショップを経験して、僕なりに今後もいろいろなことに挑戦していきたいと思いました。2日間を通して、すごく楽しかったですし、自信が湧いてきました!」と、この2日間を振り返ってくれた。

子どもたちの中にある表現の芽を、確かに形にしたカサノボーと美木。カサノボーは「かなり詰め込んだ内容でしたが、よく乗り越えてくれたなと。少し背伸びして、無理かもって思ったところからもう一歩頑張るというのは、エンターテインメントに限らず大事なこと。みんな『うまくできた!』と思ってくれたようで良かったです」と語った。子どもたちのエネルギーを浴びて「へとへとです」と笑う美木は、「すべての言葉がそのまま伝わったかは分からないですが、子どもたちはそれぞれの感覚で場の空気や周囲の表現を受け取り、自分なりに持ち帰ってくれたのでは」と振り返る。年齢や経験の差を超え、同じ空間で表現を共有する時間そのものに手応えを感じていた様子だった。


真剣な眼差しで約3分半の作品を作り上げた子どもたちの姿は、この日のワークショップの成果を何より雄弁に物語っていた。カサノボーは、「世代を越えて、表現は共通言語になると改めて感じました。誠心誠意向き合えば、子どもたちはちゃんと受け取って返してくれる」と語る。また美木も、「生の人間のエネルギーに触れ、想像力が動く瞬間こそが演劇の魅力。そんな体験が子どもたちに届いていたら嬉しい」と思いを明かした。
こうして、「WELCOME KIDS PROJECT 冬休み!オン・ワークショップ2025」2日目が終了。歌と身体表現を通じて立ち上がったひとつの作品は、子どもたちにとって“演劇に出会う時間”として、確かな手応えを残したように思える。

取材・文・撮影/双海しお
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