「稲川淳二の怪談ナイト」ただいま全国縦断中!!稲川淳二にリモート直撃インタビュー!

29年連続公演開催☆“稲川怪談“が今年も全国に!!

 

1993年から今年で29年連続公演を果たす『稲川淳二の怪談ナイト』が、7月から10月にかけて全国各地で開催中。今年もローチケ演劇部ではリモートで稲川氏への取材を行い、今回の公演のことから昨年一年間のコロナ禍での生活の変化などを語ってもらった。

今年の8月21日に74歳の誕生日を迎える稲川だが、受話器の向こうからはいつもの元気な声で「どうも~!」という第一声を聴け、変わらぬ声に嬉しさを感じながら取材を進めることに。まずはこの一年間の生活がどうだったのかを聞いてみると――

「昨年もそうでしたが、仕事や定期健診の時以外には外に出てないですねぇ。出てもすぐに車に乗りますから、一年半以上、街歩きをしてないです。だから肌の色が変わりましたよ?真っ白!あとは髪の毛が減った(笑)。でも、体調的には変わらなかったですよ。ただ、同じ日課で過ごしていますから、今日が何日だろう?って分からないくらい(笑)。たまにテレビをつけて『あ、今日は何日なんだ…』と認識する感じですね」

と、感染対策も十分に、外出を控えた一年を過ごしてきているのも、29年目の公演で全国のファンに会うため。ただ、公演に向けての怪談話の取材で支障はなかったのかが気になるところだったが、そこは問題なかったという。

「取材の為に外には出れなかったですけど、ずっと貯め続けている膨大な話の破片があるので、逆にそれらを整理するのが大変でした。『稲川怪談』という、私の普及の名作40選が載った本が今度発売されますが(現在販売中)、とても出来がいいようで!でも、40作品も載るから、そこからも使いたい話があったけど使えない(笑)。でもね、貯め続けた作品以外に私の怪談は500くらいお話があるんです。だからそこは大丈夫なんですけどね(笑)」

と、29年という歴史を感じさせられる500という数字に驚きを隠せない。そんな話をまとめる作業は大変だったそうだが、取材した6月の時点ではある程度の話は決まっていたようで、あとはどう語っていこうかという語りとの兼ね合いで微調整を行っていくそうだ。

そんな話を盛り上げる要因に、稲川淳二の独特の語りがある。稲川のものまねをする芸人なども多いが、「この語り口調は!」と、すぐにわかる稲川の語り口調、その印象的な”語り”について少し話を聞いてみた。とても優しく静かなのに、目を閉じればその情景が鮮明に浮かぶようなその語りは、静かな中でも怪談の怖さを増幅させていく。一見、落語の噺のように想像してしまうのだが、ご本人いわく――

「落語のそれとはまったく違うんです。その人が年を重ねればまた若い頃とは変わってきますから、私も昔は早口だったけど、年を取ってからは次第にゆっくりとした感じに変わってきましたね。これも味の一つでしょうか。そこが落語とは語り方の大きな違いです」とのこと。29年のキャリアが構築していった稲川怪談がそこにある。

そんな語りに‟味”のある稲川怪談だが、今年披露される話はどういった傾向か話を聞くと—

「とても“味”のある話が多いです。ひとつ話を上げるなら、芸能界の先輩が十数年前に送ってきてくれた新聞に載っていた怪談についてでしょうかね。その記事を書いているのが新聞記者で、自分の体験談を書かれていたんですが、それがなんとも昭和のロマンのある怪談で、艶っぽいんですよねぇ。でも、だんだんとゾクっとしてくる・・・そんなお話があるので、これはおススメですので楽しみにしていてください」

と明かしてくれた。そして、話は昨年の公演時を振り返って、どういった状況で開催が出来たのか?また、稲川自身が不安に思うことなどはなかったのか聞いてみると次のような答えが返ってきた。

「私の舞台は一人ですからね、共演者との感染が・・・といった心配をするようなことは無かったです。もし今年出来なくても、また来年やれるさ!と思って、不安になることもなく準備を進めていましたよ。それに、会場もお客さん同士の間隔を空けて座って頂いていたり、公演後も規制退場に協力して頂いたので、前の方の方なんかは退場するまでに少しお待ち頂いたりしたんです。だからその時はモニター越しに皆さんを少し見守らせて頂いたりする日もありました。毎回は出来ないですけどね(笑)」

と、冗談交じりに語ってくれたが、知らないところで気にかけてくれている稲川のファン想いの姿勢から、29年間に築き上げられたファンと稲川との間にある“絆”のようなものさえ感じずにはいられない、ほっこりさせられるエピソードだった。

そんな稲川から最後に――

「今年も元気で、皆さんと楽しい時間を過ごせることを楽しみにしていますので、会場でお待ちしています」

というメッセージも届いた。混沌とした状況が続く中だが、なんとか無事に各地でファンが楽しめる稲川怪談が開催されることを願わずにいられない。

 

取材・文=ローチケ演劇部(シ)