2024年3月東京オペラシティ・コンサートホールにて開催された『佐藤隆紀オーケストラコンサート 〜310 Sugar’s Sweet Time〜』のアンコール公演が10月5日(土)に決定した。佐藤はクラシック音楽をベースに独自の世界観を表現し続け、昨年、結成15周年を迎えた男性4人組ボーカルグループ「LE VELVETS」のメンバーで、抜群の歌声を持ち、『レ・ミゼラブル』『エリザベート』などミュージカルでも活躍中だ。ミュージカルからの楽曲はもちろん、クラシック、ディズニーからJ-POPまで、佐藤だからこそ実現できるジャンルレスのプログラム。再びの開催を前にした今の思いを聴いた。
「甘党」の皆さんと再び幸せな時間を過ごせるのが楽しみ
――アンコール公演が決まって、いかがでしょうか
本当に嬉しかったです。前回のコンサートのアンコールでも、ずっと「幸せです!」と言っていたくらい、本当に幸せなひと時で、またあの時間が過ごせると思うと、楽しみでしょうがないです。
――前回のコンサートの手応えや印象などお聞かせください
いつもはグループ活動をしているので、メンバーがやりたい曲を出して、みんなで構成を考えながら作っていくのですが、今回はソロなので、本当に自分が歌いたい曲だけを並べて作れたコンサートでしたので、それだけでも幸せでした。僕(の愛称)が「シュガー」なので、ファンの方を「甘党」と名づけさせていただいたんですが、甘党の皆さんが最後はスタンディングで見送ってくれて、本当にひとつになれて幸せでした。
――ファンネームがあるんですね
この日のために初めて作りました。ソロコンサート自体が初めてだったので、「佐藤隆紀の歌を好きだと言ってくださる皆さんを、甘党と呼ばせてもらってもよろしいでしょうか!?」って。
――甘党が集う場なのですね。歌いたい曲だけを集めた時に、いわゆるメインディッシュばかりになるかと思うのですが
まさにです(笑)事務所で初めて通した時に、マネージャーと「これはやばいね!だいぶお腹いっぱいになるね!」と。お腹いっぱいで満足して帰ってもらえるようなものになったかと思います。
――それを歌いこなすというのは、快感でしたか?
快感でした。ただ、このコンサートで学んだのが、力の抜き方ですね。自分だけのリハーサル、オーケストラさんとのリハーサル、当日もリハーサル、本番と、フルで全部歌いましたが、いかに力を抜いてやれるかということを意識してできれば、こんなに楽に歌えるんだという発見もすることができました。
――『Sugar’s Sweet Time』と、甘党の皆さんにぴったりのタイトルですが、ご自身で考えられたのですか?
はい、恥ずかしながら。皆さんに、歌からパワーを受け取ってもらえるような、甘い癒しの時間になればいいなと思っています。
――ちなみに甘いものはお好きなんですか?
結構好きなので必死で抑えています。好きでぱくぱく食べると、すぐ(体が)大きくなってしまいます。
――甘党の皆さんにおすすめしたいような、イチオシのスイーツはありますか?
いろいろありますが、福島出身なので、福島で好きなエキソンパイという、くるみ入の餡が入ったパイで包んであるお菓子をお勧めしたいです。地元に帰ると必ず買って帰ります。本当に何でも好きで、アイスも大好きです。『エリザベート』の期間中に食べすぎてお腹を壊して、それ以降、舞台中は「佐藤はアイス禁止令」が出るほどの甘党です(笑)。
小さい頃からディズニーが大好き、自分の発声が乗りやすい
――コンサートの構成についてお聞かせください
アンコール公演なので、曲目は基本的には変わらないんですが、ゲストの方が変わるので、その辺の曲目は少し変わります。ミュージカル曲、ディズニー曲、J-POP、オペラと、4つのジャンルが入っています。自分がずっと歩んできて学んできたものを全部入れました。音楽はジャンルレスにいいものはいいですし、楽しんでもらえる、聴いたことがある曲がたくさんあるようなコンサートにしたいなと思っています。
――2023年の『フレンズ・オブ・ディズニー』に伺い、佐藤さんが大活躍されていて、ディズニー楽曲の歌も素晴らしいと思って拝見したのですが、いつかお伝えできたらと思っていたエピソードがあるんです。隣で若者4人組が観ていたのですが、普段ミュージカルは観ていなくて、ディズニーコンサートだから来場していたようでした。その中のひとりの男性が聴きながら「あの人がすごい!」と、佐藤さんが歌う度にすごく盛り上がって、休憩時間にプロフィールを読んで、「『レ・ミゼラブル』とかやっているんだって!俺、ファンになった!」と興奮していたんです
男の人が?嬉しい!泣けてくる、やばい!最近涙腺が弱いんです。歌を聞いて言ってくれるなんて嬉しいですね。
――休憩時間に2部のセットリストを見ながら、「これは歌うのかな?これ歌ってほしいな!」と言っていました
嬉しい!あ~、やばいやばいやばい。そんなの聞いていたら……危ない危ない危ない!
――お伝えできて良かったです!ぜひディズニーとの出会いをお聞かせください
小さい頃から大好きです。母親がディズニーのVHS(ビデオテープ)をたくさん買ってくれて、よく見ていました。特に『アラジン』『ライオンキング』『リトルマーメイド』『美女と野獣』などはめちゃくちゃ見てきたんです。だから『フレンズ・オブ・ディズニー』に出られたことがものすごく嬉しくて。特に何の声(優)をやっているわけでもないのに、声をかけていただいて嬉しかったです。
――いつか声をされるかもしれませんね
ぜひチャンスがあればやりたいですね!
――ディズニー楽曲の魅力はどう感じていらっしゃいますか?
盛り上がりの作り方がうまかったり、聴いていてわくわくしますよね。
――歌う面ではいかがですか?
素直な自分の発声が乗りやすいです。そして、ヴィランズなどを歌う時は、ミュージカルで培った、役に入る感じを存分に生かして歌うと、よりその感じが出たりします。ディズニー楽曲には色々なジャンルの曲があるので、その歌い分けができてすごく楽しいですね。王子様から、カジモドみたいな役があったり、ヴィランズがいたり。どうやって歌い分けたらお客さんがぐっと来るのかなどを考えながら練習している時が、めちゃくちゃ楽しいです。
――特にフロローの『罪の炎』が素晴らしかったです
嬉しいです。あの曲は結構難しいんですよ。リズムの取り方と声の入れ方が結構難しくて苦戦しましたが、曲が体に入ってきたらすごく気持ちがよくなってきて楽しかったです。またどこかで歌いたいですね。
ミュージカルからは歌ってみたかった曲を選曲
――ミュージカル楽曲の選曲についてお聞かせください
『レ・ミゼラブル』はもちろん出演したので選びましたが、他にも歌ってみたかった曲を選曲しています。自分は若い役をすっ飛ばしてきちゃったんです。『エリザベート』はフランツ、『レ・ミゼラブル』ジャン・バルジャンですから、ルドルフとマリウスはどこ行っちゃったの?僕のルドルフ時代を返して、みたいな(笑)。
――確かにですね(笑)
『モーツァルト!』の「僕こそミュージック」を歌うといっても、ヴォルフガング役でオファーが来ることはもうないだろうなと考えた時に、ソロコンサートで歌うんだったら、誰にも文句は言わせないぞと。『ミス・サイゴン』の「神よ何故?」のクリスも若手がやる役ですよね。まだいけるぞという気持ちはあるんですが、世間とのギャップはあると思います。どちらも大好きな曲です。『モーツァルト!』は僕がミュージカルを目指し始めた頃の2作品目くらいに観たミュージカルで、初めてマチソワで観たミュージカルなんですよ。お世話になっている先生が、『すごく勉強になるから観てきなさい』と勧めてくださって、本当にとても勉強になって感動しました。CDを買って帰り、毎日寝る前に聴いて、『モーツァルト!』漬けでした。そんな思いも込めて選曲させていただきました。『ミス・サイゴン』のクリスも大好きで、作品もメッセージ性があって大好きなんです。クリスもやってみたかった役です。まだ諦めてませんけどね!
――『ジキル&ハイド』の「時が来た」も名曲ですね
『ジキル&ハイド』も大好きな作品で、石丸幹二さんも、柿澤勇人さんも観に行ったんですが、ひとりが二面性を持って、役をがらっと変えてやるのは、役者としての醍醐味みたいなものも感じますし、狂気性のあるストーリーも面白くて、大好きな作品です。「時が来た」は、この1曲だけを取り出して歌詞を聴いた時に、すごく前向きに自分が大学進学で上京してくる時を思い出しました。音楽をやりたかったけれどできなかったところから、やっと時が来た、今からずっと音楽の勉強をできるんだという、未来に向かって解き放たれていくぞ、という思いを乗せて歌える曲です。皆さんにエールというか、ただ歌詞を届けたいと、すごく晴れやかな気持ちでお届けできる曲だなと思って、歌わせてもらっています。
J-POPは台詞というよりト書き、自分の言葉で届ける
――J-POPは、森山直太朗さん、谷村新司さんの曲などが並んでいますが、曲との出会いなどお聞かせください
直太朗さんの「さくら(独唱)」は、僕が音大を目指し始めた頃に、母が「すごくいい曲がテレビで流れて、ひと聴き惚れして、感動したから聞いてほしい」と言ったんです。『世界ウルルン滞在記』のテーマソングで、CDショップに行って予約してきたと言っていました。普段はそんなことしないので、「なぜこんなに熱く言っているんだろう」と思っていましたが、そのくらいに思う曲なんだと。(自分は)反抗期でしたから、すぐ聴かないよみたいな感じだったんですが、買ってきたCDを聴いたらすごくぐっときて。ファルセットの切り替えみたいなところが難しいと言われていますが、僕は意外と得意で、結構歌えたんです。そこからカラオケに行くと十八番になりました。ある日音楽祭で、全校生徒の前で歌うということで、この曲を歌ったら、ものすごい拍手をもらいました。歌う快感やお客さんから拍手をもらう快感を初めて感じたのが、この曲です。
谷村新司さんは僕も昔から好きだったんですけど、父が昔、親戚達が集まるとカラオケで歌っていて、あまり上手じゃなかったですが(笑)父の十八番でした。今回ソロコンサートということで、両親に関する曲をとJ-POPコーナーとして作り、「父がよく歌っていた『昴』を、今日は父親より上手に歌います」なんて言って歌ったんですが、観に来てくれていた父に終演後に聞いたら、「俺、そんなに『昴』を歌っていたか……?」と。どうやら1、2回くらいしか歌ったことがなく、その1、2回を僕はたまたま小さい頃に聞いて、記憶に残っていたみたいですね。
――そこから出会えた名曲なんですね
曲は本当に大宇宙を感じるようなパワーのある曲です。でも、J-POPを歌う時はなるべくモノマネにならないように、佐藤隆紀としてこの曲を届けられるように、すごく気を付けています。
――ミュージカルやディズニーの楽曲などには役がありますが、J-POPは違いますよね。そのあたり、歌うときにどんなことを意識されていますか?
役になるのは、お客さんがその役として観てくれているので、なり切って歌えばいいんですよね。それを感動して聴いてくれます。J-POPだと、どうしても元の曲が頭に流れるので、寄せてしまうとモノマネになってしまいます。そうではなく、自分がこの曲を歌う意味というか、佐藤隆紀がちゃんとカバーしていて、ちゃんと聴いてもらうために、役に入るのとはまた別次元で、言葉を佐藤隆紀としてちゃんと届けるというところに意識を持っています。
2年前くらいにすごく悩んだのですが、とあるリハーサルでポップスを歌った時に、自分では結構歌えているなと思いました。楽屋に戻って、マネージャーに「どうでしたか?」と聞いたら、良かったという曲の中にポップスは入っていなかったんです。「ポップスはどうでしたか?」と聞いたら、「上手かった」と言われ、「ぐっと来ました?」と聞くと、「すごく大きい声で、歌いすぎているから、あまりぐっと来ない」と言われて悔しくて。それで、すごく抑えて歌ったんですね。本当にMAXまで抑えた時に、今まで黙っていたメイクさんとマネージャーが「それいい!」と言い始めて。その時に、全然違うんだなと感じてすごく悩みました。
スターダスト☆レビューの根本要さんに知り合う機会があって、「どういう意識でポップスを歌っているんですか?」と聞いた時に、「よっしゃ、カラオケ行こう!」と誘ってくださり、いろいろと教えてくださいました。ミュージカルは役に入って歌を届ける、いかに役になり切れるかが大事なんですけど、ポップスは、お客さん自身が主人公にならなきゃいけない、その中で、歌詞が生きなきゃいけないんです。ご自身の過去の何かと歌詞を照らし合わせて、お客さんの中でストーリーが生まれてぐっと来る。そういうものを出すには、根本さんが「ト書きみたいなものなんだよ、ポップスは」と。それは面白いな!と思いました。
台詞というよりト書き。政治家がテレビで「まことに遺憾です」と言う時に、まったく何も感情を入れないで言うことはないじゃないですか。でも、役になり切って言っている感じではなく、「本当にちょっと気持ちが入った感じで言う、あの感じがいいんじゃない?」と言われて、感心しました。それは確かに、お客さんの中で世界を作ってあげるのには一番いいなと。今はそれをどうやったら作ってあげられるか、みたいなものを意識するようにはしています。
――確かに余白がないと、どこか距離を感じるかもしれませんね
ポップスは特にそうですね。すごく難しかったです。たとえば、鈴木雅之さんは格好いいですし、自分の世界で歌っていますが、決して役に入って、落とし込んで歌っているようには聴こえない。あのスタイルで歌っているのが、ある意味ト書きのような感じなのかなと感じています。ポップスとミュージカルの歌い分けというのは、そういうところもすごくあるなと。シンプルに、自分の中でその歌詞の世界観をちゃんと浮かべて、自分の言葉で届けるという作業を、今回のアンコール公演でさらにしっかりやりたいと思っています。
野口五郎さんとはゆかりのある曲をお届けする
――前回のゲストは阿佐ヶ谷姉妹さんでしたよね
はい。「クラシックTV」(NHK)で共演したとき、忙しいのに一生懸命に音楽に向き合われる人柄が本当に素敵で、またご一緒したいなと。お声がけさせていただきました。番組で披露した「行進曲メドレー」と「ホールニューワールド」の2曲と、トークでも本当に盛り上げてくださって楽しい時間になったこと感謝しています。
――ゲストの野口五郎さんについてお聞かせください
以前、五郎さんとご一緒させていただく機会がありました。本当に大先輩ですし、僕も積極的に行くタイプではなく、気難しい方だったらと思ったりして、ちょっと距離を置いていたんです。でも、『アンチェインド・メロディ』という曲で、ものすごい高音をロングトーンでずっと歌われていて、それがすごい技術なんです。楽屋で聴いていたんですが、感動して舞台袖まで行って、「五郎さんすごいですね!何ですか、あのロングトーンは!」とお話ししたら、「分かってくれる!?あの技術を分かってくれる人は、なかなか少ないんだよ!実は力を抜いて歌うんだよ」と。僕も前回のコンサートで、力を抜いて歌う感覚を、すごく大事だなと感じていた矢先でしたから、「最近力を抜くのは本当に大事だと感じていて」と、発声のことで盛り上がりました。
そして、五郎さんは初代マリウス(『レ・ミゼラブル』)ですから、「佐藤くん、『レ・ミゼラブル』も決まった時から見ていたよ。『徹子の部屋』も見たよ。あのGの音のロングトーン、すごかったね」と言ってくださって驚きました。『オー・ソレ・ミオ』でロングトーンをやるんですが、それを覚えていてくださって、しかも「Gの音」ととっさにお話ししてくださるんです。五郎さんの高音はそれよりも全然高い音で本当にすごいんですよ。
初代マリウスをされた時のマル秘話や、当時の稽古の様子など色々と聞かせていただきました。本当にお優しくて、偉ぶったところのない素敵な方で、一気にファンになってしまいました。それで、「もしお時間が合えば……」とオファーさせていただいたんですが、次の日がコンサートでお忙しい時で、本当はお断りしようと相談されていたそうなのですが、「佐藤くんなら出てあげたい」とご本人が言ってくださったそうです。そこまでしてくださるのが、本当にありがたいです。曲目は言えないのですが、ゆかりのある曲をお届けするのではないかと思います。
――フルオーケストラと歌う時に意識されていることや魅力はありますか?
前回めちゃくちゃ緊張しました。リハーサル室に入ったら、オーケストラがすごくて圧倒されそうになりました。その時に「負けないように!」と思って頑張ってしまい、リハーサルで声が裏返ったりしてしまって。その時に、いつも通り力を抜いて、楽に歌うと、ちゃんとマッチしてくるというか、気張っちゃいけないなと痛感しました。オーケストラは豪華な音を奏でてくださって、僕はそこに乗っていくだけです。戦おうとしてはだめなんです。
フルオーケストラの壮大な音楽を楽しみに、甘党大集合!
――色々伺ったお話を通して、「力を抜く」というお話が印象的です
日本語って、話す時に響かせないので、響かせて歌うものとの相性が、基本的にはよくないんだろうと思うんです。本当に気持ちが高ぶってきて、そこで響きが乗ってくる分にはいいと思いますが、そうじゃないところで響かせて歌ってしまうと、『いい声ですね、上手』みたいになってしまうんです。
――お芝居でも歌でも、抜けたところに心が動く気がします。息を吸うところとか、呼吸というか
いいことをおっしゃいますね。山崎育三郎くんが「芝居は呼吸」だと言っていました。呼吸するところから芝居は始まっているんだと。
――心が持っていかれるのを分析してみると、歌っている間や、歌い終わった後の呼吸に、嘘がないというか
おっしゃっていること、分かります!「その呼吸だから次の言葉が出る」という嘘がない。本当にその通りですね。難しいですが、手に入れたいですね。
――これまでは「抜く」ということを考えてはいらっしゃらなかったんですか?
ミュージカルに出るまでは考えていなくて、めちゃくちゃ技術寄りで、技術で歌うんだと思っていました。でも、ミュージカルに出演させていただくようになって、『エリザベート』の時に、育三郎くんと城田(優)くんに、「何でそんなに大きい声で歌っているの?」と言われました。「大好きな人が目の前にいるのに、大声で歌わないじゃん、ささやくように歌わない?」と。それが最初の衝撃でした。
嘘がないとおっしゃった、本当にその通りなんですが、リアルなものにやっぱり人はぐっとくるんだなと強く感じました。でも、いい声で聴かせなきゃいけないところもありますし、響かせなきゃいけないところもありますし、すごく難しいんですよね。そこに持っていくまでの導入に嘘が見えてしまうと冷めてしまうんです。嘘がない状態の言葉や思いをちゃんと届けることができれば、いい声に持って行っても違和感なくスムーズに移行できるのかなとか。
――お芝居と歌のお話は、伊礼彼方さんもおっしゃりそうなお話ですね
伊礼くん、大好きなんですよ!ご一緒した時にいろいろ言ってくれて。彼も芸に真面目な男なので、年下の僕にも「俺もあんな風に歌いたいんだけど、どうやってるんだ?」と聞いてくれたり、逆に芝居のことだと、「何だ今日の芝居は!?何でも前を向いて歌うんじゃねえ!」と怒られたりもします。「背中で見せるんだ、背中で!」と言われて実践したら、演出家に「もうちょっと前を向いて」と。「今日、もうちょっと前を向いてと言われたんですが……」と言うと、「それは、ベクトルをこっちに飛ばせばいいんだ、それができていれば、背中でいいんだ!」とおっしゃっていて、なるほど、と。そうやっていろいろアドバイスをくれるのはありがたいです。伊礼さん、大好きです。
――読者の方に伝えておきたいことはありますか?
今回、指揮者の方が変わります。柴田真郁さんは僕の国立音楽大学の先輩でもあって、LE VELVETSでコンサートをした時にもご一緒させていただいて、本当によく合わせてくださったりとお優しい方で、ご一緒できるのをすごく楽しみにしています。フルオーケストラの壮大な音楽をぜひ楽しみにしていただきたいですし、僕も魂を込めて歌を作っていきたいと思いますので、甘党大集合!でよろしくお願いします。まだ甘党ではない皆さんも、人生に甘さが足りない方も、ぜひ来ていただきたいと思います。
インタビュー・文/岩村美佳
撮影/ローチケ演劇部
【PROFILE】
佐藤隆紀(さとう たかのり)
1986年2月5日生まれ。福島県喜多方市出身。メンバー全員が音楽大学声楽科出身、クラシックを中心に独自の世界を創り上げるヴォーカルグループLE VELVETSのメンバー。テノール担当。国立音楽大学 演奏学科 声楽専修 卒業後、音楽活動と並行して、様々なミュージカルでも活躍。主な出演作は『エリザベート』『ベートーヴェン』『マタ・ハリ』『レ・ミゼラブル』。現・帝国劇場の掉尾を飾るクロージング公演及び全国ツアー公演、2024-2025年『レ・ミゼラブル』では3度目のジャン・バルジャンを演じる。