KERA CROSS 第六弾『消失』東京公演│開幕レポート&藤井隆、入野自由、演出・河原雅彦からのコメントを公開!!

2025.01.22

河原の丁寧な演出でKERAの台詞がより鮮明となり
多彩なキャストのチャーミングさで笑いと恐怖が際立つ

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)の過去の戯曲を、才気溢れる演出家たちが新たに立ち上げる連続上演シリーズ《KERA CROSS》。その第六弾で、新シーズン一作目となる『消失』が、1月18日(土)に東京・新宿の紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで幕を開けた。

KERAが主宰する劇団、ナイロン100℃の本公演として2004年に初演、2015年に再演され、また現在までに国内外さまざまなカンパニーによっても上演されているKERA戯曲の中でも人気が高い本作。今回演出を担うのは河原雅彦、KERA CROSS 第三弾『カメレオンズ・リップ』(2021年)、『室温~夜の音楽~』(2022年)につづいてKERA戯曲の演出は3度目となる。

物語はクリスマスの夜、兄弟が暮らす家に集まった6人の“善意”がかけ違うことによって日常が破滅していくさまが描かれる。劇団公演では大倉孝二が演じた兄チャズを藤井隆が、みのすけが演じた弟スタンリーを入野自由、客演の八嶋智人が演じたガス修理業者ジャックを岡本圭人、三宅弘城が演じた闇医者のドーネンを我が家の坪倉由幸、犬山イヌコが演じた弟が想いを寄せるスワンレイクを佐藤仁美、松永玲子が演じた家を間借りしにきたネハムキンを大人計画の猫背椿が務める。

劇団での上演が伝説として今も語り継がれている名作だけに、どのように創られるのか想像もつかない人が多いのではないだろうか。その予想を見事に裏切るかのように、まさに本シリーズのテーマのひとつである“異なる味わい”になっている。

とにかくキャスト6名のチャーミングさを最大限に生かしたことで、KERA戯曲独自の笑いと恐怖、そして台詞の面白みが際立った。河原の演出により、極論すれば、モノクロからカラーへ、近未来から現在へ、寓話から記録へと変化を遂げた印象。それにより、兄弟のみならず、登場人物すべてに温かみや愛情を感じられ、現在の世界情勢も影響してか舞台上のディストピアが身近なものとなり、胸が締めつけられる。実に残酷な物語であるのに人間讃歌にも思えるのは、このカンパニーならではだろう。

音楽、舞台美術、照明、衣裳などのスタッフワークも大きく作用しているのは言うまでもない。クールで文学的だった『消失』が、ロマンティックなエンターテインメントへと立ち上がった。熱を帯びているぶん、消え失せていくさまが哀しい。本公演開幕直前、残念ながら映画監督デイヴィッド・リンチが旅立ってしまったが、KERAがリンチ作品からも影響を受けているのを『消失』からも見い出せるかもしれない。

東京公演は2月2日(日)まで、2月6日(木)・7日(金)には大阪・サンケイホールブリーゼにて上演予定だ。

本公演の開幕に際し、演出の河原雅彦と出演者を代表して兄弟を演じた二人から以下のようなコメントが寄せられた。

河原雅彦(演出) コメント
終演後、椅子から立ち上がりづらいかなりヘビーな芝居に無事仕上がりました!でもコメディ要素もいっぱいなので一粒で二度美味しいというか。カンパニー一同、絶対損はさせませんので是非劇場で味わってみて下さい。お待ちしております。

藤井隆(チャズ・フォルティー役) コメント
とにかく緊張しました。初演・再演を愛していらっしゃるお客様へ僕自身は絶対的な忠誠心があるのですが、上手く出来てない自分がもどかしいです。一方で「それが良い」と言ってくださる方と「もっと出来るよ」と励ましてくださる河原さんをはじめ皆さんのおかげで立ち向かえます。(当たり前ですが)大阪千秋楽まで必死で頑張りますのでご都合よろしければぜひ劇場にお越しください!

入野自由(スタンリー・フォルティー役) コメント
遂に!遂に開幕です! 稽古では毎日大きな壁が立ちはだかり、悩み戦う毎日でした。大好きなKERAさんの作品に挑戦できる幸せを噛み締めながら、キャスト・スタッフと共に大阪大千穐楽まで駆け抜けます!演劇でしか体験できない面白さが詰まったこの作品! ぜひ劇場へお越しください!

【舞台写真】撮影/桜井隆幸