劇団アンパサンド「遠巻きに見てる」│安藤奎 インタビュー

表面に怖さが出る作品ではなく、内に内に入っていくような作品にできたら

『地上の骨』で2024年度の第68回岸田國士戯曲賞候補にも挙がった、劇団アンパサンド主宰で作・演出担当の安藤奎。平穏な日常が些細なきっかけで不穏な非日常へ突入していく彼女の作品は、松尾スズキや城山羊の会の山内ケンジにも絶賛されている。五反田団の前田司郎、ナカゴーの鎌田順也、山内ケンジに影響を受けたという安藤の脚本は、笑いを誘う要素がふんだんにあるが、彼女はそれだけではないと言う。

「笑わせたいというよりも、つまらないものをやりたくないな、つまらない台詞を書きたくないな、という気持ちでやっています。それが笑いとつながっているのかもしれないですね。ただ、笑いがあるほうが、上演している最中に伝わっているという安心感があるなとは思いました。シーンとしていたら、不安になるかなと(笑)。脚本にメッセージがないと言われることもありますが、私はそれについては否定的です。感じ方は人それぞれでいいですけど、自分的にはメッセージはすごくあるんです」

パニックホラー的な展開が多く見られるアンパサンドの作風だが、4月に上演される次作の構想についてはどうか。

「次はどちらかというと、表面に怖さが出る作品ではなくて、内に内に入っていくような作品にできたらなと思っています。内面や心理の怖さ?そうかもしれないです。今までニワトリが卵を産むところと、卵を産んで、さらに産んだ卵について周りのニワトリがどう感じているかをやっていたとしたら、次は卵が出てくるまでのニワトリの中身を書きたいなって。結果ではなくて過程みたいなことかもしれないです」

前作『歩かなくても棒に当たる』以降、安藤はドラマの脚本や漫画の原作などを手掛けている。

「最近は映像の脚本の仕事をしていて、今は、演劇のことにまだ頭が回せてない状態です。それが次作にどう作用を及ぼすかはまだ分からない」

と安藤は話すが、それらの仕事が演劇にフィードバックし、その筆致が研ぎ澄まされる可能性は大いにあるだろう。なお、仕事で脚本を書きだしてからは――

「自分が集団創作に向いているか分からなくなってきてしまった」という安藤だが、
「でも、演劇はやっぱり俳優さんがすごいなと感動する。その感動は自分ひとりだけで作った物では味わえない、演劇ならではのものだと思います」という。

新作には岩本えり、永井若葉、重岡漠、西出結、奥田洋平の出演が決まっている。小劇場界きっての実力派ばかりなので、期待も膨らむ。

「常に自分が夢中になれることに忠実に活動していきたい」

という安藤の今後が楽しみだ。

インタビュー&文/土佐有明
Photo/江森康之

※構成/月刊ローチケ編集部 2月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】

安藤奎
■アンドウ ケイ
劇作家、演出家、俳優。2016年に「劇団アンパサンド」を旗揚げ。舞台のみならずドラマなどの脚本も手掛ける。