
俳優の金子大地、前原瑞樹、三村和敬によるユニット、惚てってるズ。昨年4月『惚てはじめ』で旗揚げした彼らによる第二回公演『惚て並み拝見』が4月25日(金)〜30日(水)、東京・ユーロライブにて行われる。ユニット結成の経緯から第二回公演の見どころ、そして今後の展望について3人に聞いた。
「3人でやれる」と自信をつけて
──まずは、惚てってるズ結成のいきさつから教えてください。
前原 2020年の『湘南純愛組!』というドラマで2人に出会いました。
金子 三村と僕は10代からの友達で。ドラマで前原さんと仲良くなって、3人でずっと一緒にいたんです。「いつか何かやりたいね」という話をずっとしながら、行動に起こせないままいて……。
三村 「3人で表現できる場があったらいいね、でも自分たちでは書けないからどうしよう」と言っていたところで、昨年前原さんが動き出してくれて、第1回公演に繋がりました。

──「何か」が舞台という形になった理由は?
前原 僕はずっと目の前のお客さんの反応を感じられるような小劇場の舞台に出てきました。それを二人が観に来て「いいね」と言ってくれていたし、僕自身もこの3人で観客の笑い声をダイレクトに浴びたいなと思っていたので、やっぱり舞台かなと。
──昨年の第1回公演『惚てはじめ』はそれぞれ異なる脚本・演出を迎えて3本の短編を上演されました。この形をとったのはなぜでしょう?
前原 みんなそれぞれ忙しいこともあって、まずラフにはじめたいと思ったんです。長編はやっぱり身構えてしまうから、それよりは短編を長い時間かけて少しずつ作っていきたい、ゆるやかに創作の時間を持ちたいと。あと、僕個人の話なんですが、鎌田順也さんの……。
──ナカゴーの。
前原 はい。鎌田さんのお葬式に行ったとき、ユーロライブの小西(朝子)さん、画餅の神谷圭介さん、桃尻犬の野田慈伸さんと一緒に帰ったんですよ。その時に「こういうことをやりたいんです」という話をしたら小西さんが「ユーロライブでやりましょう」と言ってくれて、じゃあもう目の前にいる二人に作・演出をお願いしようと(※第1回は二人に加え映画監督の近藤啓介が作・演出に参加)。
三村 このとき、前原さんからすごく熱意のあるLINEが来たのを覚えています。ずっと「やりたい」で止まっていた中で、「3人で動き出そう!」というスタートの号令を前原さんがかけてくれました。

──初めての公演の時点で「第1回」と銘打っていましたね。最初からユニットの活動を続けていこうという意志があったんでしょうか。
前原 そうですね。でも、第2回を本格的に考えはじめたのは、実は第1回公演の初日が終わったときでした。
三村 たしかに。
金子 正直、本番までは「もう当分いいかな」と思うくらい大変だったし、お客さんの反応がどうなるかも不安だったんです。でもいざ本番を迎えてみたらすごく楽しんでもらえて、面白かったという声もたくさんいただけて、「あ、やれるんだ。俺ら」と自信が生まれました。
2人の作家が「哀れみ」をテーマに描く、なのに笑える作品
──第2回公演『惚てなみ拝見』は短編3本という形はそのままに、今回は水素74%の田川啓介さんと劇団普通の石黒麻衣さんが脚本を担当。演出は石黒さんが手掛けられますね。
前原 もう一度短編をやろうということだけは決めていて。第1回とは違うものを作ろうとしたとき、短編3本をよりまとまった形にしたいと考えて、作家さんを前回から一人減らし、演出家さんも一人にまとめようと。
金子 「これで行くから!」と前原リーダーが決めてくれました。
三村 公演タイトルは大地くんが。毎回めっちゃいいタイトルを決めてくれます。
──もうお稽古は始まっているんですか?
前原 少しずつ始めています。脚本はいま2本あって、田川さんの1本を待っている状態です。
三村 金子くんが稽古場で一番いろんなパターンを試してくれるんですよ。だからすごく楽しい。第1回のときにはなかった余裕が持てているかもしれない。
金子 前回は短編ごとに演出家さんが3人いたけれど、今回は石黒さん1人というところが大きいかも。脚本、めちゃくちゃ面白いですよ。絶対楽しんでもらえると思います。
三村 この素晴らしい本の面白さをひとつもこぼさず、笑って楽しんでもらえるようにと稽古をしています。

──どんな作品になりそうですか?
前原 「哀れみ」をテーマに書いてほしいと伝えたら、お二人が要望以上に人間の哀れみや悲しさの部分が、おかしみになる、笑えるものを書いてくれて。なんか、じとっとしてるんですよ(笑)。脚本に田川さんらしさ、石黒さんらしさがあって、人間関係とか、田舎の感じとか、観る分には笑えるけど、自分がそこにいたら嫌だなという空間が描かれています。
三村 田川さんが書かれた1本目を石黒さんが読んだうえで2本目を書いてくれて、それを受けて田川さんが3本目を書いてくれているんです。だから、それぞれ独立した短編だけれど、なにか繋がったものが見えてくる。それがうまくいきそうなので、楽しんでもらえたら。
前原 演出面でも、僕らがつい楽しくてノリでやっちゃう部分を、石黒さんが尊重しつつ「ここはちゃんと作りましょう」という空気にしてくれるんです。だから、台本の面白さをきっちり拾える感じがします。
金子 人間の恥ずかしい部分とか、人にいちばん見られたくないところが出ていたり、コンプレックスをえぐられているような感覚もあったり……。僕らが自分たちの姿を正面向いてみなさんに見せるというよりも、観客の皆さんに覗かれているような面白さがあります。
前原 前回はコントと演劇の狭間でしたけど、今回はちゃんと面白くて笑えるものでありながら、より演劇に近づいている感じがします。芝居の幅が出て楽しいですね。
金子 今回は男3人に中尾有伽さんが加わるので、物語の広がり方が前回とは違って面白いよね。僕らは今回の作品で、……読売演劇大賞を目指そう。

三村 狙おう狙おう!
前原 じゃあ来年の2月、授賞式のために空けといてね。
金子 みんなでさ、スーツ揃えようね。
前原 こんなこと言っちゃって大丈夫かな(笑)。
仲がめちゃくちゃいい3人による、ストイックなチーム
──ユニットを組む前から仲がいいとのことですが、ユニット結成後も関係は変わりませんか?
三村 変わらず、仲はめちゃくちゃいいです。お互いの作品もよく観るし。今は大地くんのドラマ『晩餐ブルース』を毎週観ています。
金子 二人がふざけて、僕のセリフを毎回ボイスメッセージにして送ってくるんですよ(笑)。
前原 ふざけてないよね!
三村 ふざけてない。でもいざやってみても、やっぱり大地の真似はできないよね。
金子 勝手に役と金子大地の共通点を探しては「ダウト〜! 金子大地はこんなことしません〜」「もっと寝癖すごいよ〜」とかも放送中にリアルタイムで送ってくるんです。
三村 地元の友達みたいな感じです(笑)。
前原 2人は僕に対してはけっこう辛辣で。僕の出ている芝居を観に来ては、ダメ出しをいっぱいくれます。大地くんは「とにかく面白くあり続けろ」「面白くなかったらユニットから外す」と言ってきて。
金子 はい。かなりストイックなチームです。読売演劇大賞を目指してますから(笑)。
前原 三村くんは「もっとできる前原さんが観たいですよね」とか言ってきます。最近出演した作品の感想も「まあ、いつもの前原さんですよね、ベストアクトではないですよね」でした。
三村 そんなこと言ってないよ〜! 1を100にして言ってる(笑)。

──逆に前原さんは、三村さんに対して厳しいことは言わないんですか?
前原 三村くんは、本当に天才だと思います。芝居がすごくうまい。だから、僕が言うのもなんだけど、もっと見つけられてほしい。彼は腐りかけていた時期もあったんですけど……。
三村 実際、俳優を休んでいた時期もありました。でも、惚てってるズが動き出すのと同じタイミングでまたやり始めて。
金子 惚てってるズが本当に久しぶりの演技だったよね。
前原 戻ってきてくれてよかった。僕は本当に、輝いている三村くんと金子くんを観るのが大好きなんです。
金子 よし。やっぱり今回、俺たちがめっちゃ輝いて読売演劇大賞をとろう。
三村 そうしよう。僕が売れる時は惚てってるズが売れるときだから。
前原 三村くんはふだんこんなことを絶対言わない人なので、今すごく頑張ったと思います(笑)。
──最後に、惚てってるズの今後の展望を教えてください。
前原 この形で公演を続けつつ、いつか自分たちでも物語を作ってみたいね。
三村 そう、僕含め、書くことにも憧れがあるから。
金子 ずっと愛されるユニットでありたい。そのためには、まずもっと認知してもらいたいな。惚てってるズは仕事ではあるけど、1年のご褒美という感覚もある。3人にとってのホームになったら幸せだよね。
前原 そうだね。惚てってるズは挑戦し続けたいし、変化し続けたい。……ちょっとかっこよすぎたかな?
金子 そんなことなかったよ(笑)。
三村 自分が思うほどカッコよくはなってないよ(笑)?
前原 ほんとに? イチローが言っててもおかしくないぐらいの名言じゃなかった?

インタビュー・文/釣木文恵