
写真左から)門山葉子、泰江和明、今牧輝琉、安井一真
浅井さやかが作・演出・音楽を全て手がけ、オリジナルミュージカルを上演するOne on One。36th noteは、2006年に上演した『呼吸する島』を大幅にリメイクした再演を行う。稽古がスタートして約1週間のタイミングで、今牧輝琉、安井一真、泰江和明、門山葉子にインタビューを行った。
――まずは出演が決まった時の思い、意気込みを教えてください。
今牧 4年前くらいに初めてOne on One作品を見たんですが、すごく面白くて、いつか自分もこんな素敵な舞台に出たいと思っていました。大先輩がたくさんいらっしゃるのでプレッシャーが大きいですが、気合を入れて頑張ろうと思っています。すでにカンパニーも仲良くて、毎日楽しく稽古しています!
安井 僕は今回初めての参加で、ミュージカルということ、たくさんの技術が求められるということを聞いていました。蓋を開けてみると、本当に!全てのスキルが求められました!(笑)
泰江 もう終わったみたいに(笑)。
安井 やることも多いし充実しすぎて、長い時間稽古をしていてもそれを感じさせないほどあっという間に終わっています。集まった皆さんもとても素敵で、関わることができて嬉しいです。
門山 お話をいただいてからOne on One作品を見て、楽曲の多さ、浅井さんが作る世界と音楽にワクワクしました。緻密に作られている作品という印象で、自分がここに入れるのが楽しみでした。いざ稽古場に入ってみると、私の想像を超えた素敵な世界が広がっていました。最初から自分を解放し、いい意味でリラックスしてのびのびとお稽古を楽しめています。
泰江 やる気に満ち溢れています。僕自身One on Oneは2回目ですが、前回は僕が怪我をしていた中での出演だったので、全部車椅子での出演でした。今回は動ける状態で出られるのがありがたいです。
――台本を読んだ印象、お稽古で見えてきた物語の魅力はいかがでしょう。
泰江 19年前の初演から大幅にリメイクして、多くの経験を積んだ今の浅井さんだからこそ作れる「呼吸する島」になっていると思います。ということは、必ず初演を越えなければならない! One on Oneとしてもずっとやりたかったという大事な作品をこのメンバーでできるのが嬉しいなと思います。

今牧 絵本を読んでいるような気分で台本を読みました。主人公と言われるのは僕が演じるソウマだけど、もはや全員が主人公と言えるほど一人ひとりに大きな物語がある。あと、初演を知っている皆さんが「再演が本当に楽しみ」と言っていたのが印象的です。あらすじを読んでくださった方が多いと思いますが、その期待を大きく上回ってくる作品です!
安井 最初に脚本を見た時は、ちょっと難しいなと思いました。というのも、ファンタジーなので、その世界ならではの単語などがあるんです。でも、実際にセリフとして喋ってみると、キャラに馴染んでスッと入ってくる。ファンタジーだけど人間ドラマが濃厚で、この作品を通して両方の要素を好きになってもらえるんじゃないかと感じました。
門山 相手を思うことがこの作品の軸。自分のためにも頑張るけど、誰かのためだと思うとその何倍も力が出るということを思い出させてくれました。心が温かくなるラスト、人を思う気持ちが物語の魅力だと思います。
――演じる役の印象や魅力、役作りに活かせそうなご自身との共通点を教えてください。
今牧 ソウマは人のために動いていて、エマを笑顔にしたい・大切なものを守りたいという思いを持つ素直な少年。不器用なりに頑張っている姿が周りの人を動かすんだろうなと思えるのが、僕がソウマを大好きなところです。
安井 カンパニーの皆さんはわかると思うんですが、多分僕が一番(役と)かけ離れています。
一同 (笑)。
安井 強いて共通点をあげるとしたらお母さんっ子なところ。普段の話し方も性格も、全部違うんです。ここまで自分と違う役をやるのは初めてかも。役者としての楽しさとやりがいを感じています。
泰江 イベルと魔物は実は…同一人物。素朴な青年が魔物になる過程を描くのは僕にとっても初めての挑戦です。魔物という、現実では経験したことがない役を演じられるのは役者の醍醐味だと思います。イベルには浅井さんが僕自身のパーソナルなところを盛り込んでくださっている気がします。泰江和明が言ってこそ!みたいなセリフも散りばめられているので、大事に拾って伝えていけたらいいなと思います。
門山 エヴァは考古学者の卵。好奇心旺盛で天真爛漫で、自分の好きなことにまっすぐです。まっすぐさだからこその危うさもあるけど、彼女の熱意や思いが周囲に影響を与えていくこともあって、魅力的なキャラクターだと思います。私も何かに興味を持つとそこに集中してしまうので似ているかも。今回の物語が生まれるきっかけとなる一人ではあるので、彼女の心の動きをキャッチして演じていきたいです。

――お互いの印象、それぞれが演じる役や楽曲のここが合っていると思う部分を教えてください。
安井 みんなで歌う曲も素敵ですが、それぞれがフィーチャーされる曲がもれなく全部いい。全員に対して「ここが良い」と思うところがたくさんありすぎます。良いところばっかり見えているので、悪いところを見せてください。
一同 (笑)。
泰江 稽古場、楽しすぎておかしくなりそうです。
安井 この人オフだったのに(稽古場に)来たんですよ。びっくりしました。
泰江 それくらい仲良しですね。それがOneの良さだと思うし、家族みたいになっています。今回は23曲あって、びっくりするくらい歌うんです。その稽古中も、もちろんやる時はやるけど、楽しすぎてふわふわしている時がある。
今牧 みんな初めてお会いした時は怖いかも……と思っていたんですけど、大先輩が稽古場を柔らかくしてくださって、肩の力が抜けました。役としては一真くんといることが多いんですが、一真くんもフラットに接してくださる。本当に……(安井に向けて両手でハートを作る)。
一同 わ~(笑)!
今牧 稽古1週間でここまで人を好きになれると思いませんでした。みんなで世界を表現するシーン多く、自分がその場面のメインではないシーンでもみんなで歌うので、距離が縮まるのが早いんだと思います。
安井 ほぼずっと、舞台上にいるんですよ。
泰江 でもどの瞬間も誰も手を抜かない。みんなが全力なのが楽しいし、真ん中にいる人たちはそれで気合が入る。
安井 普通の舞台だと自分のターンがあって、見せ場が終わったら一旦静かにする。でも今回はメインを輝かせるために頑張ろうと思う。本来演劇ってそうあるべきだと改めて思ったし、今は浅井さんの演出がそういう作り方になっているけど、他の舞台でももっとやらなきゃと実感しましたね。
門山 私はあまり同い年のキャストさんと共演したことなくて。今回泰江さん、安井さんのお二人が94年生まれで同い年。すごく心強いです。あと、舞台上で言葉を一切交わさないけど深い繋がりのあるキャラクターがいるんですが、多くを語らずともお互いに通じているような感覚があります。イベルとの関係性においても、泰江さんがすごくコミュニケーションをとりやすくしてくれているのでありがたいです。
泰江 Oneの空気感がいいよね。

門山 先輩方の受け入れ態勢もすごかったです。
安井 さっき輝琉が僕に対して言ってくれたけど、僕からするとみんなフラット。年齢やキャリアを気にせずに、良いと思ったことを言い合う空気がある。馴れ合いじゃなく、純粋に言い合えるのがいいなと思います。
――One on One作品や浅井さんの演出に感じる魅力、稽古の中で印象的だった言葉はありますか?
安井 (浅井の)「違います」がすごく好きです。
一同 (爆笑)。
安井 作品と僕らのことをずっと考えてくれているから、違ったら即座に違うと言える。否定じゃなくて、愛のある修正をしてくれます。今まで会ったことのないタイプの演出家さんで、刺激を受けられますし学びを得ています。
今牧 一真くんの話を聞いていて思ったのが、浅井さん自身が作品の一番のファンだということです。初めての歌稽古の時、始まる前から「本当に楽しみ! 最高!」と言ってくださっていて。僕らをすごく信頼してくれているのが伝わりましたし、すごく愛のある演出をしてくれます。
門山 私は元来、ネガティブなところがありまして……。
一同 見えない(笑)!
門山 反省しながら帰ることが多いです。でも、浅井さんはすごく信頼してくれているのが伝わってくる。どうしてこんなに信じてくれるんだろうって思うし、応えたいと思わされます。人って信頼されると力を出せますよね。
今牧 出せる!
門山 自分でも気づいていなかったネガティブな思考がなくなりました。こんなにも素敵な人たちに信頼されてここにいて、楽しいことができているという充足感が心地良くて、もう大好き! っていう感じです(笑)。
一同 (笑)。

泰江 ちょっと違う観点から話すと、浅井さんって作品におけるクオリティを諦めないんですよ。本当に些細なことでも、気になったことは全部きちんと言う。お芝居一つとっても、「その芝居が違う」じゃなくて「根本的にこう」という指摘をする。
安井 判断がすごいんだよね。
泰江 作品に命をかけているのが伝わってくる。まだ全然形にはなっていないけど、絶対に応えたいし、すごいものが作れるだろうなと思えます。初日にお会いした瞬間に、「この人たちなら面白いものを作れる」と無条件に思えるのがOne on Oneの魅力だと思います。
――最後に、お客様へのメッセージをお願いします。
泰江 ありがたいことにチケットが残り少ないそうです。早く買ったほうがいいですよ!
安井 この記事が出た時には遅いかもしれない(笑)。 でも配信もあるらしいから!
泰江 まだ稽古がスタートして1週間。やるべきことが山のようにあると思いますが、絶対に面白い作品になります。楽しみにしていただきたいですし、ぜひこの熱量を体感していただきたいです。Oneミュの良さを存分に味わえる作品を、ぜひ劇場で、ご覧ください。
門山 私はこの作品やお稽古を通して、「誰かから思われていること」を感じとれるようになりました。見てくださった方が、自分を思ってくれる大事な方を思い出してくれるような作品になるんじゃないかと思います。ぜひ劇場に来ていただき、私たちが作る島の世界を体感していただけたら嬉しいです。
安井 これから稽古を重ねていきますが、作品を通して100%感動と刺激を与える確信があります。絶対見に来てほしいし、見てくださった方に影響を与える作品になると思うので楽しみにしていてください。
今牧 稽古が進んで壁にぶつかることもあると思うけど、このカンパニーだから乗り越えられる自信があります。公演では皆さんが見たものの記憶を大切に持って帰ってほしいし、僕らが感じたものをお客様にも味わってほしいです。必ず何かしらのメッセージをお贈りできると思うので、ぜひ受け取りに来てください。配信もあるので、劇場に来られない方はそちらでチェックしていただけたら嬉しいです。とにかく一人でも多くの方に届けたいです。楽しみにしていてください。
取材・文・撮影:吉田沙奈