終戦80年記念公演 朗読劇『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』|平川結月&安井謙太郎(7ORDER) インタビュー

時空を超えた切ない恋物語が大きな話題となった小説『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が、終戦80年記念公演 朗読劇として上演される。

現代から戦時中の日本にタイムスリップしてしまう女子高生・百合役を演じるのは平川結月、久保田未夢、小泉萌香、前田佳織里の4人。彼女が出会う青年・彰役を安井謙太郎、立花裕大、安藤夢叶、佐藤永典が、それぞれ日替わりキャストとして演じる。

今回は初稽古を終えたばかりの平川結月&安井謙太郎にインタビュー。稽古での手応えと本作への思いを語ってもらった。

――初の稽古を終えて、手応えはいかがでしょうか。現在の心境をお聞かせください。

平川 こういった少人数での朗読劇は今回が初めてなのですが、実際に稽古をやってみたことで、自分1人で読んでいたときよりもこんなにも想像が広がるんだなと驚きました。また、今回、私はモノローグとセリフの両方を担当するのでセリフ量がすごく多いんです。なので、改めてもっと気合いを入れて頑張らないといけないなと思いました。

安井 そうですよね。台本を読んでいても、百合は1回で読むセリフの量が多くて、稽古中も「頑張れ」と心のなかでエールを送っていました(笑)。今作はギターの生演奏があって、今日の稽古でも(音楽制作の)森大造さんが演奏で入ってくださっていたのですが、すごく臨場感があって、生モノだなと実感できる稽古になりました。

――役作りとしては、稽古前にどんな演技プランを用意されていましたか。また、稽古を通して、役の捉え方や演じ方について変化した部分があれば教えてください。

平川 百合はタイムスリップして戦時下にやってくるので、慣れない環境に振り回されて困惑する姿は大事に演じたいなと思っていました。実際に稽古をしてみると、自分が用意してきたものじゃ全然伝わらないかもしれないと感じたので、そこは本番に向けて研究していきたいなと思っています。

――「伝わらないかもしれない」という感覚は、演出・脚本を手掛ける岡本貴也さんとのやりとりで見えてきたのでしょうか。

平川 そうですね。とくにモノローグは説明口調になってしまっていたんですが、稽古を通して、モノローグであっても文章先行で考えるんじゃなくて気持ちありきとなるように読み方を変えてみたんです。そうしたら、これまでちょっと難しいなと感じていたモノローグのセリフが、すごく自分にハマった感覚があって。そこは今日の稽古で新たに発見した部分ですね。

――安井さんはいかがですか。

安井 稽古に入る前は当時の映像などを観て、淡々とした喋り方をしようというのは意識して稽古に臨みました。そのうえで今日、実際に演じてみて思ったのは、国が決めた自分の責務を果たそうとはするものの、そうはいっても20歳という若さで死に直面しなくてはならないことへの恐怖や弱さは、当然彼だって持っていて。そういったギャップや彼が持つ恐怖の見せ方に関して、稽古で新たに見えた部分がありました。

――本作はお二人での芝居となります。一緒に芝居をしてみて、どういった感想を抱きましたか。

安井 正直、今日は自分のことでいっぱいいっぱいでした(苦笑)。

平川 私もです。

安井 今回初めてご一緒するので、写真でしかお見かけしたことがなくって。でも、今日横で聞いていて、すごく素敵な声だなと思いましたし、こんな感じの声の方なんだといい意味で少し驚きました。

平川 よく言われます。この顔からこの声出てくると思わなかったって(笑)。

安井 そうなんですね(笑)。あとは岡本さんの言葉を受けた際の、変わる速度がすごく速いんですよ。吸収力というか、言われたことをすぐ実践できるスピード感がすごくて、これは運動神経がいい人の反応速度だなって思いました。スポーツ得意ですか?

平川 スポーツは得意です!

安井 ですよね。そんな感じがしました(笑)。

平川 百合のセリフの中に、彰のことを清潔感があって顔も整っていると形容するシーンがあるのですが、安井さんが演じる彰はまさにこのセリフ通りでした。爽やかな青年感が声から伝わってきて、これは百合ちゃんも彰に恋をしちゃうよねと。

安井 そう言っていただけてありがたいですね。爽やかな友達を思い浮かべて役作りしたかいがありました(笑)。普段のままセリフを発してしまうと、彰の真っ直ぐさが出ないと思ったので、そこはすごく意識して頑張っている部分です。

――ご自身が演じる役について、共感できるところはありますか。

平川 私は嘘がつけないタイプで、全部顔に出るんですよ。言葉を濁すみたいなことも苦手で顔に出ちゃうので、そういうところは百合と似ているなと感じました。

安井 僕が彰の状況に置かれたら逃げちゃうと思うので、逃げずに立ち向かう彰に対しては、共感というよりも本当にすごいなと、尊敬する気持ちが強いですね。セリフにもあるのですが、彰はある種の責任感を持って生きていて。責任の質や重さは違うのですが、僕も誰かのために、ある場面では責任を持ってその役目を全うする、役割にあった顔をする、という経験をしているので、そこは少し共感できるような気がします。

――すでに映画化もされている作品です。今回、朗読劇として上演するにあたり、朗読劇ならではの魅力や醍醐味はどんなところに感じていますか。注目ポイントがあれば教えてください。

安井 映画には映画の魅力がありますが、やっぱり生モノというところが大きな魅力だと思います。映画はどちらかというと一方通行なコンテンツだと思いますが、朗読劇はお客様が劇場で僕らの声を聞いて想像することで、初めて完成する。生演奏である点も含め、生だからこそのテンポ感や緊張感が楽しめるのが、映画とはまた違う面白さだと思います。

平川 同じ台本で同じ人がやっても、毎回違うものになるっていうのが舞台の魅力ですよね。作品に没入できる空気感の中で、朗読劇ならではの百合と彰を想像してもらえたら嬉しいです。

安井 今回、無音の中で喋るシーンが多いんですよね。それがめっちゃ緊張するんです。

平川 わかります!

安井 もうずっとギター弾いていてほしいくらいです。演奏が終わると内心「やめないで!」と思いながらセリフを読んでいました(苦笑)。それくらい、無音の中でセリフを言うのって、僕らもすごく緊張するし怖さもあるので、そのドキドキはきっとお客様にも伝わると思います。そこもまた朗読劇ならではの醍醐味になるんじゃないのかなと、今日稽古をしてみて感じました。

――本作では手紙が一つのキーアイテムとなります。手紙にまつわる思い出やエピソードを教えてください。

安井 去年、自分たちのグループ・7ORDER主催のフェスを開催したんですが、氣志團さんへのオファーを出す際に、手紙を書いたんです。そうしたらその返事が、手紙で返ってきたんですよ。この手紙でのやりとりがめちゃくちゃ嬉しくて、すごく思い出に残っています。嬉しすぎて、手紙の画像を読み込んでTシャツを作りました!

平川 私はもともと文房具が好きで、レターセットも集めていたので、普段からよく手紙を書いています。友達や家族の誕生日プレゼントに添えたり、母の日とかに手紙を送ったり。その中でもとくに思い出深いのは、おばあちゃんとの文通ですね。高2で上京して一人暮らしを始めたのですが、遠くに住むおばあちゃんが気にかけて手紙を送ってくれて。当時やりとりした手紙は今でも大事にしていて、ときどき読み返してパワーをもらっています。

――素敵なエピソードをありがとうございます。では最後に、公演を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。

平川 稽古での発見や学びもたくさんあったので、ここから本番に向けて作品への理解をしっかり深めていきたいと思います。知らない時代に飛び込む百合の戸惑いや、その時代で受ける刺激を私の中に落とし込んで、百合として想像を膨らませていきたいです。実はすごく緊張するタイプなんですよ。本番もすごく緊張すると思うのですが、緊張にも勝てるくらいの自信をつけて頑張りたいと思います。

安井 終戦80年記念公演として、このタイミングでこの作品をやれることにすごく意味があると感じています。タイムスリップというファンタジー要素もありますが、その時代を彰のように生きた人たちがいて、それが当たり前に生きられる今に繋がっている。忘れてはいけない過去を振り返るきっかけの一つに、この作品がなったらいいなと思います。過去を今に伝えられるのは、今を生きている僕らだけなので、僕自身も改めて戦争について考える機会にできたらと思いますし、本作は「文化庁 劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業」の対象公演となっていると聞きました。18歳以下の方は無料で観劇できるとのことなので、若い人にも劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。

インタビュー・文/双海しお

©朗読劇『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』