舞台『海辺のカフカ』柿澤勇人 インタビュー

村上春樹×蜷川幸雄。奇跡のコラボが待望の再演

 

村上春樹と蜷川幸雄という世界を魅了するふたつの才能がコラボレーションした舞台『海辺のカフカ』が誕生したのは’12年のこと。それから’14年に再演、翌年にはロンドンやニューヨークなど5都市を巡る世界ツアーが開催され、世界で絶賛を受けた。そんな作品がこの2月、日仏友好160年を記念した「ジャポニスム2018」を締めくくる演目としてパリで上演され、5月には東京で凱旋公演がおこなわれる。演出はもちろん蜷川幸雄。初演からカラス役で出演する柿澤勇人は、蜷川不在であれど「核は変わらない」と断言した。

柿澤「寺島しのぶさんや岡本健一さんという新キャストが入ることで当然芝居も変わりますし、新しい作品になると思います。だけど核の部分は変わらないので、蜷川さんが伝えようとしたことは必ず伝わります」


本作で特に印象的なのは、透明なアクリルケースを使った演出。そのなかに俳優や舞台装置が入り、縦横無尽に動き回るというものだ。

柿澤「蜷川さんがニューヨークの自然史博物館をイメージしたというアクリルケースの演出は、世界でも『こんな芝居観たことない! クレイジーすぎて僕たちには絶対できない!』と言われました。ちょっとのズレが大事故につながるような、この繊細な演出ができたのは、蜷川さんだからこそ。そういう、世界で誰も見たことがないような、蜷川さんが導いたセット、照明、演出を、今回も見せられると思います」


実はこの『海辺のカフカ』は、柿澤にとって思い入れの深い作品。

柿澤「初演のとき、半年くらい毎日蜷川さんの稽古場に通って、この作品をやらせてくれって直談判しました。初対面でしたし、蜷川さんは渋っていたのですが、お前に決めるよと言ってくれました。稽古が始まるとボコボコで、どん底に突き落とされましたね。だから2年後の再演のときは、もし稽古場で蜷川さんに『成長してない』と言われたら役者をやめようと思っていたんです。だけど『お前、ほんといい役者になったな。この数年で何があったんだ』と言ってくれて。まだ続けられるんだって思いました。甘えた部分があった僕を変えてくれたのは蜷川さんです。今回の出演は、蜷川さんへの想いがすべて。こういう作品があったんだということを残したいと思っています」

 

インタビュー・文/中川實穗
Photo/植田真紗美

 

※構成/月刊ローチケ編集部 2月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります

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【プロフィール】
柿澤勇人

■カキザワ ハヤト ’87年、神奈川県出身。’07年に劇団四季公演『ジーザス・クライスト=スーパースター』でデビュー。以後、ミュージカル、舞台、映画、テレビなど数多くの作品に出演。