「WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025」レポート

2025.08.29

「たくさんの子どもたちに演劇に触れて、一生の思い出となるようなモノに出会ってもらいたい!」という思いからスタートしたネルケプランニングのWELCOME KIDS PROJECT。プロジェクト開始から3年目を迎えたこの夏、プロジェクト初となる演劇ワークショップ&体験会「WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025」が実施された。参加したのは、小学1年生~中学3年生の総勢26名の子どもたち。子どもたちは1週間のワークショップを通して、出演者として、裏方として、一つの舞台作品完成までを経験するという試みだ。

今回はワークショップ6日目を迎えた稽古場に潜入。翌日の成果発表会に向けて、楽しみながらも全力で演劇と向き合う子どもたちの様子をお届けする。

ワークショップ開始時間の少し前、続々と子どもたちが稽古場に到着する。6日目とあって、みんな慣れた様子で稽古場に用意された着到板(出欠を確認するための名前が書かれた札)をひっくり返していく。このワークショップで初めて会ったという26人、しかも小学1年生から中学3年生までと幅広い年齢の子どもたちが集まっているが、ここまでの活動を通してすっかり打ち解けていることが、待ち時間の賑やかなおしゃべりを通して感じられた。

子どもたちが成果発表会で上演するのは、講師を担当する末原拓馬が作・演出を手掛ける戯曲『野良の方舟』。本作はこれまでも末原が主宰を務める劇団おぼんろにて、子どもたちと上演したり小学校で披露したりと、子どもたちと親和性の高い物語だ。

この日は稽古最終日。通し稽古の前に、まずは歌とダンスの確認からスタート。年上組の中学生メンバーたちが小学校低学年のメンバーをフォローしながら、稽古で積み重ねたものを表現していく。驚くのは、その吸収力。末原が「歌うときは口の形に気をつけよう」と声をかけると、次の歌唱では見違えるほどいいパフォーマンスを見せてくれる。末原が子どもたちの輪に入り、「ここはもっと自由に力強く」と身体を使って表現すれば、それもすぐに子どもたちは自分の表現に取り入れる。“打てば響く”とは、まさにこのことだろう。

確認が終わると、休憩を挟んで通し稽古へ。子どもたちは野良犬や野良猫など、野良の動物となって、海へと漕ぎ出す。約30分の冒険の物語だ。講師である末原やわかばやしめぐみ(おぼんろ)もキャストとして参加し、講師と生徒としてではなく、役者同士という対等な関係性の中で一つの物語を作り上げていく。末原とわかばやしの熱を帯びた芝居と歌声に引き出されるように、子どもたちの可能性が芽吹いていった。半数以上が演技未経験のカンパニー、しかも彼らは出会ってわずか6日目。そんなことは感じさせないほどに、彼らの冒険譚は演劇として見応えのある作品に仕上がっていた。

様々な角度から演劇に触れてほしいという思いが込められた本プロジェクト。子どもたちは演じるだけではなく、「制作ワークショップ」や「仕込み・バラシ体験」として裏方の仕事にもチャレンジしていたのが印象的だ。初日には稽古場づくりに挑戦したそう。壁には手作りの稽古進行表や、稽古場を使う際の注意書きがあちこちに貼られていた。観客からは見えない部分に携わることで、舞台は多くの人の力で成り立つことを体感する貴重なきっかけとなったはずだ。

また、ステージを彩る舞台美術や衣裳も子どもたちの手作り。自分たちで創意工夫した衣裳や舞台美術を背負って舞台に立つ子どもたちの表情からは、全員が“自分ごと”としてこの作品作りに没頭していることが伝わってくる。

稽古は長丁場。子どもたちの集中が切れる瞬間もあるが、そんなときは講師陣が時に厳しく、時に温かく、子どもたちに大切なルールを伝えていく。演技経験も年齢もバラバラな初めて出会った26人の子どもたちは、いわば同じ船に乗る仲間。苦楽をともにしながら、一つの舞台を形にしていく姿は、まさに“カンパニー”そのものだった。

休憩中の子どもたちに話を聞いてみると、どの参加者も翌日にはワークショップが終わってしまうということに寂しさを感じている様子。「楽しいことも辛いこともあったけど、ひとつの舞台を作るために、たくさんの人が協力していることが感じられた。本当にあっという間だったから、あと1週間くらいやりたい」「短い時間だけど、すごくいい仲間ができた。僕はあと1ヶ月くらいやりたい!」と、充実した時間を過ごせたことが彼らの表情からも見て取れた。

通し稽古後、自主的に見直すシーンを話し合っていたのは、中学3年生の女の子と中学2年生の男の子。大阪から参加した彼女は「発表会はすごく楽しみだけど、やったら終わってしまうから、やりたいようなやりたくないような気持ち」と笑う。翌日の本番に向けて「(通し稽古をやってみて)自分のなかで悩みながら動いているなと感じたので、明日までに余裕を持って動けるようになりたい」と語る瞳には、役者としての情熱が宿っていた。

観るだけでなく、演じ、支え、創る。今回のワークショップは、子どもたちが演劇の魅力と可能性を全身で感じるための、かけがえのない入り口となっていた。未来を担う世代へ、舞台の楽しさと奥深さを伝え続ける本プロジェクト。その歩みは、子どもたちだけでなく、演劇に関わるすべての人にとっても大切な意味を持ち続けていくだろう。

取材・文・撮影:双海しお